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新学習指導要領【社会】「歴史総合」「地理探求」地歴の「総合」「探求」とは?

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高校生向け教材コラム

これまで暗記が重視された地理歴史

これまで社会は暗記科目として認識されてきました。たとえば「鳴くよ(794年)ウグイス平安京」のように、語呂合わせで歴史上の出来事と年代、人物を丸暗記した人も多いのではないでしょうか。テストも一問一答形式で出題される場合が多く、事件の原因まで深く理解していなくても教科書を丸暗記すれば高得点を目指せました。
しかし、これからの社会は暗記科目ではなくなります。文科省が定めた新学習指導要領では、「学んだことを人生や社会に生かそうとする学びに向かう力、人間性の育成」「未知の状況にも対応できる思考力、判断力、表現力の育成」「実際の社会や生活で生きて働く知識及び技能の育成」の3本柱を全体の目標にしています。これまで行われてきた「知識を詰込む学習」では社会で生きていくための実践力を十分に育成できないという課題がありました。そこで、生徒自らが課題を考えて行動できる力を養うための授業へとシフトチェンジしたのです。
地理歴史科では新たに「社会的な見方を身に付けて課題を考え、グローバル社会の中で生きるための力を育成する」という目標が設定されています。課題解決能力とグローバル社会で生き抜く力を付けることが大きなポイントです。
上記の目標を達成するための基礎を身に付ける科目が「歴史総合」「地理総合」です。これまで、世界史、日本史、地理の学習内容はそれぞれ交わることなく教えられてきました。たとえば日本史で18世紀を習っているとき、世界史で必ずしも18世紀の授業をしていたわけではありません。日本の歴史と世界の歴史を別々に教わっていたため、それぞれの結びつきや因果関係が分からないまま、テストのために単語だけを覚えるという学習になっていたのです。
現在の国際社会が形成された歴史を理解するためには、日本と各国との関係性や、文化を形成する地理などを総合的に学ぶことが重要です。そこで新学習指導要領では、日本史・世界史で「時間認識」を、地理で「空間認識」をバランスよく学び、現在社会の成り立ちや課題を深く考える授業が中心となります。歴史総合は単に日本史Aと世界史Aが合体したということではなく、日本と世界の事件の因果関係や背景を捉える授業が行われる予定です。
さらにこれまでの日本史や世界史は、はるか昔縄文時代から遡って、古代、中世、近世、近代と順番に学んでいきました。とくに戦国時代などは生徒からの人気も高い時代であり、時間を多くとることもあったようです。しかしその結果、日本と世界との交流が盛んになって今の生活に大きく影響を与える近代の学習に時間をかけられませんでした。
新たな歴史総合での学習内容は、「近代化」「国際秩序の変化や大衆化」「グローバル化」と大きく3テーマに分かれており、日本が開国してグルーバル化が進んだ近代を中心に学びます。あくまでも現代社会への結びつきが重要視されているようです。

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地理の必修化

50年以上もの間、地理は選択科目として位置付けられてきました。これは生徒一人ひとりの特性や多様化する進路に対応し、選択肢を広げられるようにするための対策です。しかしながら、地理について学ばずに高校を卒業する生徒が多く存在することが課題とされてきました。
2014年に日本地理学会が行った大学生地理認識調査では、宮崎県がどこかという問いに対する正答率は66.5%、また、フィンランド52.4%、スイス46.1%、ベトナム43.5%という結果となりました。さらに食料自給率やエルニーニョ発生海域の正答率は50%を切るなど、地理の理解が不十分であることを表しています。
地理は、歴史と並んで現代社会を構成してきた重要な要素です。その地域の食や衣服といった人間文化は地理がもたらす環境に合わせて築かれてきました。さらに、近年は世界中で地震や台風、豪雨、猛暑といった自然災害が多発しています。環境問題の解決や自然災害への備え、持続可能な社会づくりをしていくためには地図や地理情報システムの理解が不可欠です。
このように、これからの社会を生き抜くためには地理の学びが必要不可欠であることから、歴史総合と並んで地理総合が必修と位置付けられました。
具体的な学習内容はというと、「地図や地理情報システムと現代社会」「国際理解と国際協力」「持続可能な地域づくりと私たち」という3項目から構成されています。そのなかで「情報を収集する力」「情報を読み取る力」「情報 をまとめる力」の3つを身に付け、国家の結びつきや災害対策、都市計画について考えます。
特に地理情報システム「GIS」の活用が大きなポイントとなります。GISとは、土地利用情報や衛星情報、人口密度、建物情報、災害といったさまざま地理情報をコンピューター上に表示して分析するシステムのことです。GISを活用することで、災害シュミレーションやハザードマップの作成、都市計画づくりなどが可能となり、今後さらに人材育成が必要とされる技術です。これからの地理では、これからの社会づくりを担う学生に実践的な知識を身に付けてもらうことが目標とされています。
一方で地理の専門的な知識を持つ教員の不足やデータを分析するための設備不足が課題となっており、対応が急がれます。

情報や資料を活用した地理歴史

学習内容は大きく変わりましたが、具体的にはどのように学習を進めていくのでしょうか。繰り返しになりますが、これからは教科書に沿った知識の詰め込みではなく、自分で考える力や情報を扱う力が求められています。そのため、教科書に沿った指導だけでなく、歴史資料を用いたり課題についてディスカッションしたりという授業が増えていくでしょう。
特に日本史や世界史では「資料に問いかける学習」として歴史資料を比較、分析することが求められています。歴史資料といっても文献だけに限りません。絵画や写真、建造物、伝統芸能、地名、言語などあらゆる資料があります。これらの資料をそのまま受け入れるのではなく、「いつだれが書いたのか」「伝聞か直接の情報か」「どうしてこの資料が作成されたのか」などを考察し、複数の資料から歴史を分析します。
授業でも「この事件の背景には何があったのだろうか」「なぜこの時代にこのような出来事が起こったのか」「このとき世界では何が起こったのか」といった問いについて深く考えることが多くなると予想されます。
選挙権年齢も18歳へ引き下げられ、早いうちから生徒自身が社会の仕組みについて考えなければいけなくなりました。情報を収集、分析して考えるという力はあらゆる場面で求められる力となりそうです。

必修科目と関連づけた探求学習

新学習指導要領では「探求」という言葉がキーワードとなっています。「生きる力」を身に付けるために自ら学び考える授業として、「古典探求」「理数探求基礎」「理数探求」「地理探求」「日本史探求」「世界史探求」を設置。さらにこれまで「総合的な学習の時間」とされていた授業も「総合的な探求の時間」と名前を変えました。「主体的な学び」「対話的な学び」「深い学び」を目標に、課題を発見し、考える力の育成を目指しています。
高校の社会科目では、必修科目の歴史総合、地理総合に付随する選択科目として「地理探求」「日本史探求」「世界史探求」が設定されています。これらは、これまでの地理B・日本史B・世界史Bと同じ位置付けです。またそれぞれの単位は4単位から3単位となり、歴史総合、地理総合の学習内容を踏まえたうえでより深い内容を学んでいきます。
具体的に、地理探求は「現代世界の統計地理的考察」「現代世界の地誌的考察」「現代世界におけるこれからの日本の国土像」という単元で構成されます。地域の環境や国家間の結びつきから社会の事象を考察し、地図や地理情報システムを用いながら地理総合よりもさらに実践的な能力を身に付けます。
また、日本史探求では「原子・古代の日本と東アジア」「中世の日本と世界」「近世の日本と世界」「近現代の地域・日本と世界」をテーマに学習。世界史探求では「世界史へのまなざし」「諸地域の歴史的特質の形成」「諸地域の交流・再編」「諸地域の結合・変容」「地球世界の課題」をテーマに学びます。いずれも各国間の結びつきに着目した構成です。また、資料の扱いや分析に加えて「問い」が重要視されており、生徒自身が主体的に考える授業構成となります。

まとめ

新学習指導要領では社会科目の学習内容が大きく変わりました。グローバル化が急速に進む近代を中心に歴史的側面、地理的側面から日本及び世界の国について理解を深めていきます。これからは暗記ではなく、現在の社会課題解決に向けて生徒自らが考えるための教科になりそうです。生きる力を身に付ける学習としてこれからの社会科目に期待が高まります。

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