だれもが使えるデジタル教材のつくり方──アクセシビリティの基本と実践
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デジタル教材は、うまく設計すれば「だれもが使える」ものにできます。逆に配慮を欠くと、見えにくい・操作しにくい・情報が伝わらない、といった壁を生んでしまいます。アクセシビリティ(利用しやすさ)は、一部の人のための特別な対応ではなく、すべての学び手の使いやすさを底上げする土台です。本コラムでは、教材・問題制作の現場の視点から、その基本と実践を整理します。
アクセシビリティとは何か、なぜ大切か

まず、言葉の意味と大切さを確認します。
「特別な配慮」ではなく「土台」
アクセシビリティとは、心身の状態や環境にかかわらず、だれもが情報や機能を利用できるようにすることです。見えにくい人への配慮は、明るい屋外で画面を見るときにも役立ちます。特定の人のためだけでなく、結果としてみんなが使いやすくなる――だからこそ、教材づくりの土台なのです。
多様な学び手・多様な環境
教室には、見え方・聞こえ方・手の動かし方が異なるさまざまな学び手がいます。使われる端末や画面の明るさ、通信環境も一様ではありません。「標準的な一人」を想定するのではなく、多様さを前提に設計することが、これからの教材の前提になります。
見え方への配慮

まず、画面の「見えやすさ」を整えます。
色のコントラストを確保する
文字と背景の明るさの差(コントラスト)が小さいと、読みにくくなります。淡い色の上に淡い文字を置かない、十分な濃淡差をつける――これだけで、多くの人にとって格段に読みやすくなります。
色だけに頼らない
「赤が誤り、緑が正解」のように色だけで区別すると、色の見分けが難しい人には伝わりません。色に加えて、記号・文字・形など別の手がかりも添えることで、だれにでも伝わる表現になります。
文字サイズと拡大
小さすぎる文字は読む負担になります。十分な大きさを基本にし、必要に応じて拡大しても崩れない設計にしておくと、さまざまな見え方に対応できます。
操作への配慮
続いて、「操作のしやすさ」です。
キーボードだけでも操作できる
マウスやタッチが使いにくい人もいます。キーボードだけでも一通り操作でき、いま画面のどこを選んでいるかがはっきりわかること。これは、多様な操作手段を支える基本の配慮です。
タッチしやすい大きさと間隔
タブレットでは、ボタンが小さすぎたり近すぎたりすると、押し間違いが増えます。指で無理なく押せる大きさと、余裕のある間隔を確保することで、だれもが快適に操作できます。
情報の伝え方への配慮

最後に、「情報がきちんと伝わるか」です。
画像には代替テキストを
図やイラストには、その内容を説明する代替テキストを添えます。画面を読み上げて使う人にも情報が届き、画像が表示されないときにも意味が伝わります。
読み上げに対応する
画面の内容を音声で読み上げる仕組み(スクリーンリーダー)で、正しい順序・正しい意味で読み上げられるように作ります。見出しやボタンの役割が伝わる作りにしておくことが大切です。
動画には字幕を
動画教材では、音声が聞き取りにくい人のために字幕を添えます。字幕は、音を出しにくい環境で見るときや、内容を文字で確かめたいときにも役立ちます。
設計と検証のポイント
配慮を確実に届けるには、作り方にもコツがあります。
最初から組み込む
アクセシビリティは、完成後に付け足すと手戻りが大きくなります。設計の段階から前提として組み込むこと。これが、無理なく質の高い教材にたどり着く近道です。
実際に確かめる
チェックリストで確認するだけでなく、拡大して見る、キーボードだけで操作する、読み上げで聞く、といった形で実際に試すことが欠かせません。使う人の立場で確かめてはじめて、本当の使いやすさが見えてきます。
その配慮は、だれを助ける?
アクセシビリティへの配慮は、思っている以上に多くの人の役に立ちます。
見えにくさ・色の見分け
弱視の人や、色の見分けが難しい人にとって、コントラストや「色だけに頼らない」工夫は欠かせません。同時に、明るい屋外で画面を見るときなど、だれにとっても見やすさにつながります。
聞こえにくさ
聞こえにくい人にとって、動画の字幕は内容を受け取る手がかりになります。音を出しにくい場所で学ぶ人や、聞き取りを文字で確かめたい人にも役立ちます。
操作のしづらさ
手の動かし方に難しさがある人にとって、キーボードだけで操作できることや、押しやすい大きさ・間隔は大切です。操作に慣れていない人や、小さな画面を使う人の使いやすさも底上げします。
読み書きの困難・日本語を母語としない子
読むことに困難がある人や、日本語を母語としない子にとって、やさしい表現・読み上げ・ふりがなといった支えは、学びの入り口になります。だれもが同じ教材にアクセスできることが目標です。
制作でつまずきやすいポイント
配慮のつもりが、うっかり見落としがちな点もあります。代表的なものを押さえておきましょう。
色だけで伝えてしまう
「赤が誤り、緑が正解」のように色だけで示すと、色の見分けが難しい人に伝わりません。記号や文字など、色以外の手がかりを必ず添えます。
画像に説明を付け忘れる
図やイラストに説明(代替テキスト)がないと、読み上げで使う人に情報が届きません。画像で伝える内容は、言葉でも伝わるようにしておきます。
文字やボタンが小さすぎる
小さすぎる文字は読みづらく、近すぎる・小さすぎるボタンは押し間違いのもとです。ゆとりある大きさと間隔を、はじめから見込んでおきます。
音が自動で鳴る・操作を奪う
いきなり音が鳴ったり、勝手に画面が動いたりすると、戸惑いやつまずきの原因になります。学ぶ人が自分のペースで進められる設計を心がけます。
よくある質問(FAQ)
アクセシビリティ対応は一部の学び手のためのものですか?
いいえ。見やすい配色や大きな文字、明快な操作は、結果としてすべての学び手にとって使いやすさにつながります。特定の人のためだけでなく、全体の質を高める土台と考えるのが適切です。
既存のデジタル教材にも後から対応できますか?
部分的には可能ですが、後付けは手戻りが大きくなりがちです。可能なら設計の段階から組み込むのが理想です。既存教材は、コントラストや代替テキストなど、影響の大きい点から見直すとよいでしょう。
何から始めればよいですか?
まずは、色のコントラスト、色だけに頼らない表現、画像の代替テキストといった、効果が大きく取り組みやすい点からがおすすめです。そのうえで、キーボード操作や読み上げ対応へと広げていきましょう。
どの基準に従えばよいですか?
ウェブのアクセシビリティには、国際的なガイドラインや日本の規格といった拠りどころがあります。細かな基準を丸暗記するより、「見え方・操作・情報の伝え方」の三つを軸に、だれもが使えるかを具体的に確かめることが実践的です。
すべてに対応するのは大変ではありませんか?
一度にすべてを完璧にする必要はありません。色のコントラストや代替テキストなど、効果が大きく取り組みやすい点から始め、少しずつ広げていくのが現実的です。設計の段階から意識しておくと、後の手戻りを減らせます。
まとめ
アクセシブルなデジタル教材は、だれか一人のためではなく、すべての学び手の使いやすさを高めます。見え方・操作・情報の伝え方に配慮し、最初から設計に組み込み、実際に確かめる。この積み重ねが、信頼される教材を生みます。エデュコンは、だれもが学べる教材をめざし、設計から検証までアクセシビリティを大切にした制作に取り組んでいます。
この記事を書いた人 / 監修
エデュコン教材制作チーム
創業以来、500社以上の教育機関様の教材制作を支援。
教育・IT・編集のプロフェッショナルが集まる専門チームが記事を監修しています。





















