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サキドリ研究校とは——全国316校で始まっている、次期学習指導要領の「先行実践」

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ICT教育・GIGA
教育DX・データ活用

次期学習指導要領の大きな柱の1つが、各教科の標準授業時数の一部を学校の裁量に振り向けられる 「調整授業時数」 の仕組みです。以前のコラムでは「授業時数を最大15%削減できる方向」という検討の第一報をお伝えしましたが、実はこの仕組み、答申を待たずに 全国の学校がすでに「先取り」で実践を始めています。その担い手が、文部科学省の指定する 「サキドリ研究校」 です。令和8年7月22日の中央教育審議会 総則・評価特別部会「取りまとめ(案)」とあわせて公表された指定校一覧(令和8年7月現在)をもとに、この取り組みの実像を整理します。

サキドリ研究校とは——次期改訂を「先取り」する指定校

まず、サキドリ研究校がどのような位置づけの学校なのかを確認します。

制度に先立って実践事例をつくる学校

サキドリ研究校は、次期学習指導要領で創設が検討されている調整授業時数制度を見据えて、現行の学習指導要領のもとで先行的に柔軟な教育課程を実践し、事例と知見をつくっていく指定校です。取りまとめ案では、文部科学省が先行研究開発学校やサキドリ研究校を通じて「参照可能な実践事例を幅広く創出し、各教育委員会等に情報提供」する役割が明記されています。制度が始まってから慌てて手探りするのではなく、始まる前に全国で実践を積み上げておく——そのための仕組みです。

指定規模は316校、研究開発学校と合わせ約400校

公表された一覧によると、サキドリ研究校の指定は令和8年7月現在で 計316校。内訳は公立303校・国立の附属学校13校で、北海道から九州まで全国の小学校・中学校・義務教育学校に広がっています。取りまとめ案は、以前からある先行研究開発学校(68校)と合わせて「400校もの指定を既に行っており、現行の標準授業時数・教科書の下でも実践したいというニーズが高まっている」と述べています。

なぜ答申前から動いているのか

次期学習指導要領の全面実施は、小学校が令和12年度から、中学校が令和13年度からという想定が示されています。それでも今から実践が始まっているのは、調整授業時数制度の適切な運用には「徐々に効果的な取組や知見の蓄積を行っていくこと」が必要だからです。1人1台端末などデジタル学習基盤の活用で授業の効率化がしやすくなり、現行制度のままでも時間を生み出す工夫が現実的になったことも、背景として挙げられています。

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指定校は何をしている?——4つの活用方法

指定校一覧には、各校が「調整授業時数をどう活用するか」が4つの分類で示されています。

活用方法は大きく4分類

1つ目と2つ目は 「裁量的な時間」 です。児童生徒の実態に応じた学習支援などを行う「学習枠」と、授業や指導の改善に直結する組織的な研究・研修を行う「研究・研修等枠」に分かれます。3つ目は 既存の各教科等への上乗せ(特定の教科の時数を厚くする)、4つ目は 教科の新設(学校独自の新しい教科をつくる)です。一覧を見ると、多くの学校が学習枠と研究・研修等枠を軸に取り組み、教科の新設まで踏み込む学校は一部という分布が見て取れます。

実態調査が示す「本気度」

取りまとめ案には、サキドリ研究校の実態に関するデータも引用されています。研究・研修等枠と学習枠の 双方に取り組む学校は全体の72%を超え、そのうち 55%の学校が週1回以上 学習枠の取り組みを実施しています。また、裁量的な時間と教科等の上乗せ・新教科の創設の両方に取り組む学校も59%にのぼります。「お試し」ではなく、教育課程の編成に本格的に組み込んで運用している学校が多数派だと分かります。

学習枠では何ができるのか

取りまとめ案が示す学習枠の類型は、個人探究課題の深掘りや自己調整学習、個々のニーズに応じた個別指導、下学年の内容を学び直すプログラムといった「個に応じた学習過程の充実」、体験活動や言語能力・情報活用能力の重点育成といった「学習の素地を高める取組」、ソーシャルスキル育成など「関係性の質を高める取組」の3つです。いずれも、一斉授業の枠では取り組みにくかった学びに時間を充てるイメージです。

制度の中身はどこまで固まったか

サキドリ研究校の実践と並行して、制度設計の議論も具体化しています。取りまとめ案の要点を押さえておきます(いずれも「案」の段階であり、今後の審議で変わる可能性があります)。

調整幅は「対象教科の15%程度」を想定

標準を下回ってよい上限は、最大限大きくとった場合で対象教科の15%程度(小学校で年間138コマ程度、中学校で128コマ程度、週4コマ程度)を想定しつつ、先行実践の蓄積を踏まえて具体の数字を決定するとされています。実際、先行研究開発学校68校の調整授業時数は平均で小学校124コマ(14%相当)・中学校126コマ(15%相当)と、この水準に近い実践がすでに行われています。

裁量的な時間は「週2コマ・最大70コマ」が上限案

裁量的な時間については、全体として週当たり2コマ(最大70コマ)程度を上限とする案が示されています。また、学習の継続性の観点から、標準授業時数が35コマ以下(週1コマ相当以下)の教科等は減らせない、調整後の時数が35コマ未満になるような削減もできない、という歯止めも引き続き設けられる方向です。

質を担保する仕組みもセットで設計

自由化一辺倒ではなく、学習枠には「各教科等の内容に該当しない付加的な学習活動であること」「学校教育目標や年間指導計画に基づく組織的な取組であること」など6つの要件が設定される方向です。各学校が活用状況をホームページ等で公表し、国は実践事例の把握・公表と改善を続けるという、透明性を軸にした質確保の仕組みも描かれています。

教材制作の現場への示唆

最後に、この動きを教材づくりの立場からどう受け止めるかを整理します。

「週1コマの帯」で使える教材への需要

サキドリ研究校の55%が学習枠を週1回以上実施しているという実態は、年間を通じた「週1コマの帯」で運用できる教育プログラムの需要を示しています。1回完結で積み上げられるモジュール型の教材、学び直しやフォローアップに使える段階別のドリル、個人探究を支えるワークシートなど、従来の「教科書準拠・単元順」とは違う設計の教材が求められる場面が増えていきます。

「個に応じた学習」を支える教材設計

学習枠の類型の中心は、個別指導・学び直し・自己調整学習といった「個に応じた学習過程の充実」です。一人ひとりの進度や到達度に応じて使い分けられる教材、児童生徒が自分で選んで進められる構成、学習データと組み合わせて次の一手につなげられるデジタル教材——このコラムでも繰り返し取り上げてきた「個別最適な学び」に応える教材づくりが、調整授業時数の文脈でも軸になります。

地域の指定校の実践は「次の標準」の先行例

316校の指定校一覧は都道府県・管理機関(教育委員会)・学校名まで公表されています。自社の教材が流通している地域にサキドリ研究校があれば、その実践は数年後に全国の学校へ広がる取り組みの先行例です。教育委員会や学校と仕事をする立場であれば、地域の指定校がどの活用方法(裁量的な時間・上乗せ・新設)を選んでいるかを見ておくことは、これからの教材ニーズを読む確かな手がかりになります。

まとめ——「先に始まっている未来」を見る

次期学習指導要領はまだ審議の途中で、調整授業時数制度の細部も今後の「審議まとめ」(夏)・「答申」(冬)で固まっていきます。しかし、サキドリ研究校という形で、その方向性を先取りした実践は全国316校ですでに動いています。制度を待つのではなく、先に始まっている実践から学ぶ——教材制作に関わる私たちにとっても、指定校の取り組みは「これからの教材の使われ方」を映す先行スクリーンです。エデュコンでも、個別最適な学びやモジュール型の教材設計など、新しい教育課程を見据えた教材づくりのご相談をお受けしています。

なお、本コラムの内容は中央教育審議会 初等中等教育分科会 教育課程部会 総則・評価特別部会(第11回・令和8年7月22日)の「総則・評価特別部会取りまとめ(案)」および参考資料3「サキドリ研究校指定一覧(令和8年7月現在)」に基づいています。校数などのデータは令和8年7月時点のものです。最新の審議状況は文部科学省のWebサイトをご確認ください。

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