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コラム

学習指導要領が「デジタル」になる——指導要領コードで教材とつながる時代へ

カテゴリ

ICT教育・GIGA
教育DX・データ活用

令和8年7月22日、中央教育審議会の教育課程部会 総則・評価特別部会が、次期学習指導要領に向けた「取りまとめ(案)」を公表しました。授業時数の柔軟化や学習評価の改善など論点は多岐にわたりますが、教材制作の現場にとって見逃せないのが 「デジタル学習指導要領」 の構想です。学習指導要領そのものがWebベースのデジタル基盤になり、学習指導要領コード を介して教材や問題とつながる——そんな方向性が具体的に示されました。まだ「案」の段階であり細部は今後の審議で変わりえますが、大枠の流れは教材づくりの前提を変えるものです。現時点で分かっていることを、制作会社の視点で整理します。

学習指導要領が「紙とPDF」であることの限界

はじめに、なぜ「デジタル化」が課題になっているのかを確認します。

検索できない・つながらない・分冊されている

現行の学習指導要領は、紙の冊子とそのPDF版で提供されています。取りまとめ案は、この提供形式そのものが使いにくさの原因になっていると指摘しています。PDFは検索性が低く、改行で切れた単語は検索にかからない。本体と解説が別冊で、対応関係が分かりにくい。小学校と中学校で冊子が分かれているため、校種をまたいだ学びのつながりが把握しにくい——いずれも、日々の授業づくりで指導要領を「引く」ことを難しくしています。

現場ヒアリングが示す実態

取りまとめ案には、教育委員会や学校へのヒアリングで集まった声も収録されています。「担当学年の範囲しか指導要領を読めていない教師が多い」「小中連絡会議で、小学校では何を教えているのかという議論になる」「研究授業の指導で『何ページの何行目を見て』と言いながら確認していて、時間と手間がかかる」——構造化された情報にすぐアクセスできないことが、属人的な運用を生んでいる実態が見て取れます。

教材制作者にとっても他人事ではない

この課題は、教材をつくる側にも共通します。教材が指導要領のどの内容に対応しているかの確認やタグ付けは、現状では制作者が冊子とPDFを行き来しながら人手で行う作業です。「準拠」の根拠づけに手間がかかる構造は、教師も制作者も同じ土俵にあります。

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「デジタル学習指導要領」構想——取りまとめ案が示す機能

では、デジタル学習指導要領とはどのようなものか。取りまとめ案が挙げる主な機能を見てみます。

Webベースで、教科書の指導書からもリンクで飛べる

まず提供形式が、紙とPDFからWebサイトベースに変わります。日々使用する教科書の指導書などから、該当する学習指導要領・解説の記載をリンクで一体的・即時的に確認できるようにする方向が示されています。キーワード検索やレイアウト変更で「見たい情報を見たい形で」閲覧でき、教科内・教科間・校種間の系統性をつかみやすくすることも狙いです。

指導案づくりに使えるデータとして提供される

閲覧だけではありません。学習指導要領データを多様なレイアウト・ファイル形式で出力でき、指導案の作成や学習進度管理に使えるようにすること、そして 生成AIが読みやすい形式でデータを提供し、AIを活用して指導案・評価計画案・教材を練ることが容易にできる ようにすることが明記されています。現行のPDFはヘッダーやフッターの文字までAIが読み込んでしまうという現場の指摘もあり、「AIに渡せる公式データ」の整備は現実的なニーズに応えるものです。

あくまで「案」——夏の審議まとめ、冬の答申へ

これらの機能はいずれも取りまとめ案の段階のもので、この後、夏の「審議まとめ」、冬の「答申」を経て具体化されていきます。細部の仕様は変わる可能性がありますが、学習指導要領の構造化・表形式化とデジタル提供という方向性は、令和7年9月の論点整理から一貫して示されてきた流れです。

鍵になる「学習指導要領コード」——実はもう存在している

デジタル学習指導要領と教材をつなぐ鍵として登場するのが、学習指導要領コードです。

教育データ標準の一部として2020年に公表済み

学習指導要領コードは、これから新しくつくられるものではありません。文部科学省が令和2年(2020年)10月に「教育データ標準」の一部として公表した、学習指導要領の内容項目一つひとつを一意に識別するコード体系で、システム間でデータを相互に交換・蓄積・分析できるようにすることを目的としています。すでに存在するこの仕組みを、次期指導要領で「より使いやすい形で実装する」というのが取りまとめ案の方向です。

コードを介して教材・問題が「探せる」ようになる

取りまとめ案は、学習指導要領コードをデジタル学習指導要領に実装し、コードを介して、対応する多様な教材や全国学力・学習状況調査の問題などを探すことができる ようにする、と述べています。教師が指導要領のある項目を見ているときに、その項目に対応する教材や過去問がすぐ見つかる——指導要領が「教材への入口」になるイメージです。

「教材を探す」から「教材が見つけてもらえる」へ

これは教材の流通構造の変化でもあります。これまで教材は、カタログや検索サイトで「商品として」探されるものでした。指導要領コードによるひも付けが標準になれば、教材は 指導要領の側から見つけてもらえる ようになります。逆に言えば、コードが付与されていない教材は、この導線に乗れないことになります。

教材制作の現場は何を準備すべきか

こうした流れを踏まえて、教材をつくる側の準備を考えます。

メタデータ設計を「あとまわし」にしない

問題や教材のデータに、学年・教科・単元だけでなく学習指導要領コードに対応づくメタデータを付与しておくことは、今後の配信・流通の実務要件になっていく可能性が高い部分です。すでにCBTやデジタル教材の世界では、単元コード・難易度・観点などの属性情報を正確にタグ付けする作業が品質の一部になっています。制作の最終工程でまとめて付けるのではなく、作問・編集の段階からメタデータを設計に組み込むことが、手戻りの少ない進め方です。

「AIに読まれる」ことを前提にデータを整える

生成AIが指導要領データを読んで指導案や教材案を練る世界では、教材の側のデータも構造化されていることが価値になります。見出し・問題・解答・解説が機械的に区別できる形式か、図版と本文の対応が明示されているか——人が読むための見た目だけでなく、機械が扱えるデータ構造になっているかが、教材の「つながりやすさ」を左右します。

つながる先としての品質を高める

デジタル学習指導要領からリンクされる先は、デジタル教科書や外部の教材です。リンクで飛んできた教師がそのまま使えるか、端末で崩れず表示されるか、アクセシビリティに配慮されているか。「つながる先」としての品質が、これまで以上に教材の評価に直結します。エデュコンでも、学習指導要領に準拠した作問から、単元コードなどのタグ付け・メタデータ付与、システムに直結するデータ納品までを一貫して行っており、こうした流れを見据えた教材データづくりをお手伝いしています。

今後のスケジュールと、この記事の読み方

最後に、今後の見通しを整理します。取りまとめ案は、この後の教育課程企画特別部会での検討と各教科等ワーキンググループの議論と合流し、夏の「審議まとめ」、冬の「答申」へと進みます。答申を受けて学習指導要領が改訂され、周知期間を経て順次実施という流れです。本コラムで紹介した機能はいずれも令和8年7月時点の「案」であり、細部は今後変わる可能性があります。一方で、紙とPDFの限界という現状の課題、そして学習指導要領コードがすでに整備されているという事実は変わりません。教材制作に関わる立場としては、答申を待ってから動くのではなく、いまの教材データづくりの段階からメタデータと構造化を意識しておくことが、確実な備えになると考えています。

なお、本コラムの内容は中央教育審議会 初等中等教育分科会 教育課程部会 総則・評価特別部会(第11回・令和8年7月22日)「総則・評価特別部会取りまとめ(案)」および文部科学省「教育データ標準」の公表資料に基づいています。最新の審議状況は文部科学省のWebサイトをご確認ください。

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この記事を書いた人 / 監修

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