体育・保健体育は「運動との関わり方」と健康の「概念・原則」で整理する方向へ──「スポーツ理論」への見直しで変わる次期学習指導要領
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2026年10月5日、中央教育審議会の教育課程部会が「次期学習指導要領等に向けた審議まとめ」を取りまとめました。その第2部「体育、保健体育」の節は、体育では公正・協力などの態度に関する要素を「運動との関わり方」として再整理し、保健では健康・安全に関する「概念」と「それに関わる原則」を軸に学びを深める方向を示しています。小学校第4学年までを「遊び」の要素を取り入れた学習として整理すること、「体育理論」を「スポーツ理論」に改めることなども打ち出されました。
審議まとめは2026年11月5日までパブリック・コメントにかけられている「案」の段階です。本コラムでは、小学校の体育科と中学校・高等学校の保健体育科について、体育分野・保健分野の両面から何が変わり、何が変わらないのかを節の本文に沿って整理し、教材づくりへの影響を考えます。
この記事の要点
- 2026年10月5日の審議まとめは、体育・保健体育の目標を現行と同様に教科として1つで示し、目標の柱書と見方・考え方を小・中・高で統一する方向を示した
- 体育の系統性を4年ごとの3つの時期で再整理し、小1〜4は「遊び」の要素を取り入れた学習、小5〜中2はルール等を簡易なものとした「運動」を通した学び、中3からは引き続き選択制とする方向
- 公正・協力などの態度に関する要素は「運動との関わり方」として「知・技」を中心に再整理し、「体育理論」は「スポーツ理論」、高校の専門学科「体育」は「スポーツ」に改める方向
- 保健は健康・安全に関する「概念」と「それに関わる原則」をスパイラルで深める系統性とし、体育は小4まで具体的な運動のやり方でなく「動き」を軸に示すなど内容の示し方も見直す
現行の体育・保健体育の成果と、見えてきた課題
小・中・高共通の目標と、これまでの成果
現行の学習指導要領は、「課題を見付け、その解決に向けた学習過程を通して、心と体を一体として捉え、生涯にわたって心身の健康を保持増進し豊かなスポーツライフを実現するための資質・能力」の育成を、小・中・高共通の目標としています。以下、審議まとめにならい、教科は「体育科」「保健体育科」、分野は「体育」「保健」と書き分けます。
成果としては、体育の授業を楽しみにしている児童生徒が多いこと、保健の学習が普段の生活や社会で役に立つと認識している児童生徒が多いことが挙げられました。現行では、けがの手当(小)や心肺蘇生法(中・高)などの技能に関する指導内容も新たに明示されています。
思考力・判断力と、保健の「結び付け」に課題
学習指導要領実施状況調査からは、次のような課題が示されています。
- 体育では、公正、協力、責任、参画、共生、健康・安全といった態度に関する要素は多くの児童生徒ができている一方で、運動を行う目的や、課題の解決の仕方を工夫することに関する思考力や判断力に課題がある
- 保健では、身近な生活における基礎的な内容の理解のスコアは高い一方で、日常生活で認識しにくい内容(小学校の例:保健所の取組等)の理解や、健康の概念やそれに関する原則と具体的な行動等を結び付けることに課題がある
全国体力・運動能力、運動習慣等調査では、学校卒業後も運動やスポーツを行いたいと考える児童生徒の二極化や、運動やスポーツの実施に肯定的な回答の男女差が見られ、体力調査のスコアも全体としてコロナ禍前の水準には戻っていないとされました。
社会と学校をめぐる変化
気候変動の影響もある中で計画的な授業実施の困難さなどが生じていること、適切な活動場所等の確保が必要な中で水泳授業をはじめとして授業実施上の課題が生じているケースもあることが挙げられました。令和7年にはスポーツ基本法が改正され、部活動の地域展開も全国的に進められています。こうした状況を踏まえ、学校における運動やスポーツに関する学びの本質的な意義や価値を明確化し、多様性の包摂の観点から、指導内容が過度に高度なものとなっていないか、評価は適切かを整理する必要があるとしています。
健康・安全の面では、メンタルヘルスに関する課題の顕在化、様々な自然災害の発生、SNSの普及や犯罪に伴う児童生徒等の被害、性犯罪・性暴力等の課題が挙げられました。
目標と見方・考え方──教科として1つ、小・中・高で統一
学校で体育や保健を学ぶ本質的な意義
審議まとめは、体育の授業を、全ての児童生徒が運動やスポーツの多様な楽しみ方を味わう機会を保障し、人と関わりながら自分らしく健康で生き生きとした人生を送る基盤づくりに貢献する、知・徳・体のバランスを支える不可欠な学びの場だとしました。保健については、単に知識を集積するのではなく、健康等に関する概念やそれに関わる原則を習得することで、未知の健康課題等にも対応できる柔軟で持続的な資質・能力を身に付けることが期待されるとしています。
目標は教科として1つ、柱書は小・中・高で統一
心と体を一体として捉え、体育・保健の関連を図りながら指導することが重要であるため、目標は体育・保健で分けず、現行と同様に学校段階ごとに教科として1つで示す方向です。教科として目指す方向性は学校種によって異なるものではないとして、目標の「柱書」は小学校・中学校・高校で統一するとしました。「学びに向かう力」は箇条書きで示すとしています。
見方・考え方も、学校卒業後の人生や社会との関わりを見据えて全学校種で統一して1つで示し、経験の浅い教師にも理解しやすい表現にする方向です。
「多様な楽しみ方」と「運動との関わり方」
目標などに用いる表現も整理されました。運動やスポーツには「する」以外にも「みる」「支える」「知る」などの要素があり、改正スポーツ基本法では「集う」「つながる」といった要素も示されています。そこで、「する」「みる」「支える」「知る」「集う」「つながる」等によりその楽しさ等を享受することまでを含めて、運動やスポーツの「多様な楽しみ方」と表現する方向です。公正・協力などの態度に関する要素は、「運動とどう関わるのか」を理解・経験する学びを目指すことを踏まえ、「運動との関わり方」と整理するとしています。
保健の鍵になる2つの用語は、次のように整理されました。
- 概念:ある事柄について、どのような要素が関連して当該事象が発生等しているのかを表すもの
- それに関わる原則:ある事柄について、どのような働きかけ等を行うことで望ましい結果を導くことができるのかを表すもの
体育の系統性を「4年ごと」の3つの時期で再整理する

発達の段階に沿った3つの時期
体育科・保健体育科は、「知・技」の系統性が明確で、それと一体的に育成する「思・判・表」を具体的に示すことが授業改善につながるとして、「並列パターン」で構造化する方向です(学習指導要領の示し方の変化は学習指導要領が「デジタル」になるでも紹介しています)。体育の系統性は、大きく4年ごとのまとまりで捉え、次の3つの時期として再整理するとしています。
- 小1〜4「各種の運動の基礎を培う時期」:神経系の発達が完成に近づいていく段階。幼児教育段階との接続を踏まえる
- 小5〜中2「多くの領域の運動を経験しスポーツの基礎に触れる時期」:筋骨格系や呼吸循環器系が発達する段階
- 中3以降「卒業後も運動やスポーツに多様な楽しみ方で豊かに関わることができるようにする時期」:運動機能に係る発達が完成に近づき、理論を踏まえて一層スポーツ等を楽しむことができる段階
現行の学習指導要領でも12年間は4年ごとに区切って整理されており(小5〜中2は「多くの領域の学習を経験する時期」、中3〜高3は「卒業後も運動やスポーツに多様な形で関わることができるようにする時期」)、審議まとめは、この区切りも含めて、幼児期からの接続を含む発達の段階を踏まえて系統性を改めて整理する方向です。
あわせて、体育科・保健体育科は体力の向上を直接の目的とするものではないことを踏まえ、バランスの良い資質・能力の育成に十分留意が必要だとしています。
小1〜4は「遊び」の要素を取り入れた学習に
小1〜4の時期は、児童が夢中になって試行錯誤したり他者と関わったりしながら体を動かす機会を一層確保し、多様な動きを身に付けたり磨いたりできるよう、「遊び」の要素を取り入れた学習として再整理する方向です。審議まとめは「運動遊び」について、いわゆるやらされではなく、教師による指導の意図性を持ちつつ「遊び」の要素を取り入れた活動を計画し、児童が内発的に動機づけられて運動に取り組む活動を想定しています。ねらいとする動きの習得や洗練化の過程等は、解説や指導参考資料も用いて分かりやすく示すとしています。
小5〜中2は簡易なルールの「運動」、中3からは選択制
小5〜中2は、全ての児童生徒が安心して運動に取り組めるよう、ルール等を簡易なものとした「運動」を通した学びを基本に整理する方向です。審議まとめは、これは単に技能の水準を下げるということではなく、「好き」「楽しい」を丁寧に育みながら運動の楽しみ方を少しずつ広げていく趣旨だと説明しています。
中3からの時期は、引き続き生徒の興味・関心等を踏まえた選択制とし、「自己選択」「社会との接続」「豊かなスポーツライフの設計・実現との関わり」を基本的な考え方として整理するとしています。
運動に関する領域の内容のまとまりは、「体つくり運動」「器械運動」「陸上運動」「水泳運動」「表現運動」「ボール運動」「武道」(小4〜中2段階の中学校をイメージした例示)を基本とします。学校段階が変わったときに求める技能の水準が急に高くなることのない、なめらかな系統性にする方向です。
態度は「運動との関わり方」へ、「体育理論」は「スポーツ理論」へ

公正・協力などの指導事項を「知・技」中心に再整理
これまで「学びに向かう力」に位置付けていた公正、協力、責任、参画、共生、健康・安全の態度に関する要素は、重要な資質・能力である一方で、指導と評価が、行動の意義等について児童生徒の十分な理解を伴わない形式的なものになってしまう可能性などの課題があるとされました。
そこで、「なぜそうするのか」に関わる概念的な知識や「何であるか」に関わる事実・内容の「知識」、実際の行い方に関わる「技能」の面に着目し、「運動との関わり方」として「知・技」を中心に再整理する方向です。
「愛好的な態度」は「多様な楽しみ方を目指す態度(仮称)」に
「愛好的な態度」は、「する」「みる」「支える」といった「多様な楽しみ方」を目指す姿を一層積極的に価値づける観点から、「運動やスポーツの多様な楽しみ方を目指す態度(仮称)」と示し、「学びに向かう力」に引き続き位置付けるとしています。
「体育理論」を「スポーツ理論」に
「体育理論」を学ぶ意義は、運動やスポーツの多様な楽しみ方の視点を理解し、文化・経済・教育面等から捉えられるようになることや、安全な行い方について理解を深めることにあるとされています。改正スポーツ基本法の趣旨に留意して指導内容の改善を図り、目標との整合性を高める観点から領域の名称を「スポーツ理論」に改める方向です。
高校の専門学科「体育」は「スポーツ」に
高等学校の専門学科「体育」も、スポーツの推進及び発展に向けた資質・能力を養うという性格をより的確に表す趣旨から、教科名を「スポーツ」に改める方向です。「スポーツを通じた社会課題の解決」の観点を踏まえ、スポーツの推進及び発展の担い手の育成を軸にするとしています。単により高度な運動技能等を習得するような指導に陥らないことへの留意も求められています。
保健は「概念」と「それに関わる原則」をスパイラルで深める
小・中・高の系統性を再整理
保健は、健康・安全等に関する「概念」や「それに関わる原則」について、学校段階をまたぎながらスパイラルで学びを深めていく系統性を用いる方向です。内容が広範になり過ぎていたまとまりなどは、必要に応じて細分化するとしています。
- 小学校:「身近な生活を中心とした健康・安全に関する基礎的な内容」を実践的に学ぶ
- 中学校:抽象的な概念も理解できるようになることから、「個人生活を中心とした健康・安全に関する内容」を科学的に学ぶ
- 高校:更に広いライフステージや社会との関わりを意識しながら、「個人及び社会生活における健康・安全に関する内容」について総合的に学びを深める
内容のまとまりは、「健康な生活」「身体の機能の発達」「心の健康」「傷害の防止」「疾病の予防」「健康と環境」(中学校段階をイメージした例示)を基本とします。保健の「統合的な理解・総合的な発揮」は、学習の中核をなす「概念」や「それに関わる原則」を「統合的な理解」で分かりやすく示し、実生活の課題等への対処にどうつなげるかを「総合的な発揮」で端的に示す方向です。
演習的な学習活動とデータの活用
健康・安全に関する指導では、学習内容を自身の生活経験等と往還させながら学びを深められるよう、より演習的な学習活動等を通して「概念」や「それに関わる原則」の理解を深める指導の改善を図るとしています。演習的な学習活動の例として、生活習慣や地域の事故情報等のデータを活用することも挙げられました。
性犯罪・性暴力に関する様々な課題が指摘される中、「生命(いのち)の安全教育」は、国による教材やそれを用いた実践の成果を踏まえ、教材の内容と学習指導要領との関連性を分かりやすく示すとしています。一人一人の発達の状況に応じた指導が必要な事項は、保護者の理解を得つつ個別の指導等で扱うこととしています。
体育と保健の連携
体育と保健で関連を図り、心身を一体として捉えて指導することも重要とされ、高校の体育「実生活に生かす運動の計画」と保健「健康に関する環境づくりと社会参加」のように、関連を図ることが有効な指導内容を整理して示すことも考えられるとしています。
内容の精選──「動き」を軸に示し、2年間のまとまりで計画する

競技力を育てることが目的ではない
審議まとめは、運動やスポーツを通した学習は特定の種目等に係る力(競技力)を育てることを目的とするものではなく、試行錯誤したり目標を達成したりしながら、発達の段階に応じた「動き」「運動の行い方」「運動との関わり方」等を学び、運動等の楽しさや喜びを味わうことがその趣旨だとしています。
小4までは「動き」を軸に示す
そのうえで、小4までの段階は、具体的な運動のやり方等を示すことを改め、どのような「動き」等の習得を意図しているのかを軸に、身に付ける資質・能力を分かりやすく示すとしています。小5以降も、活動のバリエーションがかえって狭まることのないよう留意したうえで、運動や種目の示し方を柔軟にする方向で検討するとしました。具体的な運動等を欠かさず実施することが児童生徒・教師双方の課題となり得る状況の解消が期待されています。
2年間のまとまりで計画し、余白を生む
体育の分野の学習は2年間のまとまりごとに計画的に学ぶことを基本とし、2年間で学ぶ内容を分かりやすく示すとしています。毎年同じ時期に位置付けがちな運動やスポーツ等も一層意図的・計画的に指導することを促し、そこで創出された余白を活用して、学びの質を更に高めるための活動を豊かに行えるようにするねらいです。
指導内容が過度に積み上がりすぎないよう、高2以上(最終段階)で示す技能は、現行の中3〜高1程度で示している程度を位置付けることを基本に、全体の系統性を整理する方向も示されました。そのうえで、児童生徒の状況等に応じた発展的な学習活動等に取り組むことも考えられるなど、指導の工夫の余地を分かりやすく示すことにも留意するとしています。
教科書で繰り返し示されている内容の扱い
体育と保健で共通性が高い指導内容や、学習指導要領や解説で示す以上に教科書等で繰り返し丁寧に示されている内容は、「統合的な理解・総合的な発揮」を踏まえて慎重に整理し、適切な取扱いとなるよう改善を促すとしています。前者の例は、中1保健「心の健康」と中2体育理論「運動やスポーツの効果」でともにストレスと運動の関係が扱われていること、後者の例は、健康には運動・食事・休養及び睡眠が関係していることです。
授業づくり・ICT・活動環境・評価の方向
多様性の包摂と、ICTの活用
多様性の包摂については、全ての児童生徒を視野に入れた1次的支援(「分かりやすい授業」「多様なニーズに応じた指導」「子供の主体的活動・選択」等)を基本に基礎的環境整備に取り組むことが重要で、個別の状況等に応じた2次的支援は、その土台があるからこそ円滑に行えるとしています。皆で楽しめるルールを工夫するなど、共生の視点を踏まえた活動の一層の充実も期待されています。
ICT(生成AIを含む)の活用には、学習状況・思考過程・感覚等を可視化し、学習活動の充実を支える強みがあるとしています。一方で、自他の身体や健康・安全に関する情報等を適切に扱うことや、実際に体を動かしたり仲間と関わったりする学習活動を支えるものだという視点を損なわないことに十分留意が必要だとしています(各教科とAIの関係は全教科の学習指導要領に「AI」が入るを参照)。
暑さへの対応と活動環境
昨今の暑さへの対応については、暑熱順化を取り入れることも含めた実効的かつ現実的な安全管理、指導計画(実施内容・場所・時期)の工夫、体育館等における計画的な空調整備を基本に対応を進める必要があるとしています。
調整授業時数制度等の活用例
義務教育段階で創設が示された調整授業時数制度(概要は授業時数「最大15%削減」へ)などを活用し、体育や保健の学びの質を更に充実させる観点から、次のような取組が例示されています。
- 体育と保健のより密接な関連をもたせた取組
- 運動やスポーツの多様な楽しみ方や多様性の包摂の観点を踏まえた学習を一層深められる取組
- 外部の専門家や機関等と連携し、専門的知見等を踏まえて一層多角的に理解を深める取組
- 実社会等との接続を意識しつつ、体育・保健の学習をより探究的に深め交流し合う取組
- 地域の特色や地域の人材等を活かした取組
学習評価
体育の授業は単に技能に優れていることを評価するのではなく、各自の状況等に応じて課題を発見し、その解決に向けて取り組む中で見取ることのできる「知・技」「思・判・表」「学びに向かう力」をバランスよく評価することが重要だとされました。「運動との関わり方」については、態度主義的な評価とならないよう留意しつつ、指導と評価のイメージを更に検討する必要があるとしています。保健の授業は、単なる知識の暗記ではなく、「概念」と「それに関わる原則」に照らした評価を更に充実させることが重要だとしています。審議まとめ全体では、「主体的に学習に取り組む態度」を教科ごとにABCで評価する仕組みを改め、総合所見欄での個人内評価と、思考・判断・表現の評価への「◯」の付記を組み合わせる方向が示されています。
水泳授業の在り方
水泳授業の教育的意義
審議まとめは、水泳授業について独立した項を設け、大きく次の教育的意義があると整理しています。
- 水に親しむ楽しさや喜びを味わうことができる
- 身体的負荷が軽減されることも含め、陸上とは異なる特殊な環境で多様な動きや動きを組み合わせた運動に取り組むことができる
- 水難事故から身を守るための力を身に付けることにつながる
そのうえで、美しい海・河川・湖等に恵まれる我が国において、こうした教育的意義を踏まえつつ、引き続き全ての児童生徒の適切な学習機会が確保されることが必要だとしています。指導内容については、安全確保につながる運動や心得は実際の対応力につなげる観点から水に触れる機会を通して学ぶことが重要で、中学校段階以降の取組の整理も期待されること、生涯スポーツにつなげる観点から、必ずしも泳法等の学習に限らない更に幅広い活動の可能性を整理することも期待されることに留意して検討するとしています。
持続可能な水泳授業のために
持続可能な水泳授業を実現する観点からは、次の点に留意が必要とされ、学習指導要領の解説等でこれらを踏まえた記載の整理も必要だとしています。
- 活動場所の確保・整備は、各学校のプールのみならず、社会体育施設と集約化・複合化して整備する地域のプールを活用すること等も含め、地域の状況に応じた中長期的な視野を持った対応が必要
- 民間事業者等と連携して指導する際には、安全面や学校の授業における指導の趣旨を踏まえた対応が必要
- プールの管理は、教師の負担軽減等の観点から、指定管理者制度の活用や管理業務の民間業者への委託等も考えられる
教材づくりへの影響
「どの運動をやるか」から「どんな動きを身に付けるか」へ
小4までの段階は、具体的な運動のやり方等でなく、どのような「動き」の習得を意図しているのかを軸に示す方向です。運動の種類ごとに手順やポイントを並べてきた指導資料や学習カードは、ねらいとする「動き」と、それが洗練化されていく過程が分かる構成へと見直しが求められそうです。「遊び」の要素を取り入れた学習では、児童が夢中になって試行錯誤できる活動例と、教師の指導の意図をあわせて示す資料が役立つと考えられます。
「運動との関わり方」と「スポーツ理論」を扱う教材
態度に関する要素が「知・技」を中心に再整理されると、「なぜそうするのか」という知識と実際の行い方を扱う教材の比重が高まると考えられます。皆で楽しめるルールを考える活動を支えるワークシートなども考えられます。「スポーツ理論」に改められる方向の領域では、文化・経済・教育面等からの多面的な理解を扱う副教材や問題の見直しが必要になりそうです。
保健は「覚える」から「概念・原則で考える」へ
保健では、単なる知識の暗記ではなく「概念」と「それに関わる原則」に照らした評価を充実させる方向です。用語を確認する問題だけでなく、生活習慣や地域の事故情報等のデータを読み取り、原則に照らして行動を考える問題や演習の比重が高まっていくと考えられます。ICTによる可視化を取り入れる場合も、体を動かす時間を削らずに使えるデジタル教材の設計が問われそうです。
改訂までのスケジュール
審議まとめは2026年11月5日までパブリック・コメント(意見公募)にかけられ、2026年度冬頃の答申、2026年度末の小・中学校の改訂告示へと進む予定です。全面実施は小学校が2030年度、中学校が2031年度から、高等学校は2032年度入学生からの見込みです。「統合的な理解・総合的な発揮」の具体的な示し方は、告示に向けて文部科学省で検討するとされています。改訂全体の日程は次期学習指導要領・教科書改訂スケジュールにまとめています。
よくある質問(FAQ)
体育の技能の水準は下がるのですか?
審議まとめは、小5〜中2をルール等を簡易なものとした「運動」を通した学びを基本に整理することについて、単に技能の水準を下げるということではないと説明しています。そのうえで、指導内容が過度に積み上がりすぎないよう、高2以上で示す技能は現行の中3〜高1程度を位置付けることを基本に、全体の系統性を整理する方向です。
小学校低学年の体育は「遊び」だけになるのですか?
小1〜4は「遊び」の要素を取り入れた学習として再整理する方向ですが、教師による指導の意図性を持って活動を計画することが前提です。ねらいとする動きの習得や洗練化の過程は、解説や指導参考資料で分かりやすく示すとされています。
「運動との関わり方」とは何ですか?
これまで「学びに向かう力」に位置付けていた公正、協力、責任、参画、共生、健康・安全の態度に関する要素を、「なぜそうするのか」などの知識や実際の行い方に着目して「知・技」を中心に再整理したものです。評価では、態度主義的な評価とならないよう留意しつつ、更に検討するとされています。
水泳授業はどうなるのですか?
審議まとめは、水に親しむ楽しさや喜び、陸上とは異なる環境での多様な動き、水難事故から身を守る力という教育的意義を整理し、引き続き全ての児童生徒の適切な学習機会が確保されることが必要だとしています。持続可能な水泳授業に向けて、地域のプールの活用や民間事業者等との連携、プールの管理の委託等についての留意点も示されています。
いつから変わりますか?
次期学習指導要領の全面実施にあわせ、小学校は2030年度、中学校は2031年度から、高等学校は2032年度入学生からの見込みです。現在は審議まとめの段階で、答申は2026年度冬頃、小・中学校の改訂告示は2026年度末の予定です。
まとめ
次期学習指導要領の体育・保健体育で示されたのは、全ての児童生徒が運動やスポーツの楽しさを味わい、未知の健康課題等にも対応できる力を育てるための整理です。体育は4年ごとの3つの時期で系統性を見直し、小4までは「遊び」の要素を取り入れて「動き」を軸に示す。態度に関する要素は「運動との関わり方」として「知・技」を中心に再整理し、「体育理論」は「スポーツ理論」に改める。保健は「概念」と「それに関わる原則」をスパイラルで深める──審議まとめが描いているのは、特定の種目の競技力や知識の暗記に偏らず、生涯にわたって運動やスポーツ、健康と関わり続ける力を育てる体育・保健体育です。
示し方が「どんな力を身に付けるか」へ移るほど、教材にはねらいと活動のつながりが見える設計が求められます。エデュコンは、教材・テキスト制作で単元構成から執筆までを、模擬試験・テスト制作で概念や原則に照らして考える問題づくりを承っています。小学校向け教材制作・中学校向け教材制作・高校向け教材制作のご相談も含め、次期学習指導要領に向けた体育・保健体育の教材の見直しについて、お気軽にご相談ください。
この記事を書いた人 / 監修
エデュコン教材制作チーム
創業以来、500社以上の教育機関様の教材制作を支援。
教育・IT・編集のプロフェッショナルが集まる専門チームが記事を監修しています。
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