理科は小・中・高で目標と「4分野」をそろえる方向へ──「理科と日常生活」「科学ガイダンス」の新設で変わる次期学習指導要領の理科
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2026年10月5日、中央教育審議会の教育課程部会が「次期学習指導要領等に向けた審議まとめ」を取りまとめました。その第2部「理科」の節は、小・中・高等学校で教科の目標の文言を統一し、学習内容を物理・化学・生物・地学の4つの「分野」で整理する方向を示しています。小学校には分野横断的な課題を学ぶ「理科と日常生活」、中学校・高等学校には科学とは何かを学ぶ「科学ガイダンス」を新たに設けることも打ち出されました。審議まとめは2026年11月5日までパブリック・コメントにかけられている「案」の段階です。本コラムでは、理科の節の本文に沿って、何が変わり、何が変わらないのかを整理し、教材づくりへの影響を考えます。
この記事の要点
- 2026年10月5日の審議まとめは、理科の目標と見方・考え方の文言を小・中・高で統一し、学習内容を物理・化学・生物・地学の4分野で整理する方向を示した
- 小学校に分野横断的な課題を学ぶ「理科と日常生活」、中・高に科学とは何かや研究倫理などを学ぶ「科学ガイダンス」を新設することが適当とされた
- 高校は「○○基礎」→「○○」の枠組みを維持しつつ、「科学と人間生活(8新単位)」だけで必履修を満たす3つ目の選択肢を設ける方向
- 観察・実験の時間を確保するため、学年・校種間の重複などを整理して内容を精選し、教科書を網羅的に教える授業からの転換を図る
現行の理科の成果と、見えてきた課題
科学的に探究する学習と、世界トップクラスの科学コンピテンシー
現行の学習指導要領は、科学的に探究する学習の充実と、日常生活や社会との関連の重視を改訂の基本的な考え方にしていました。審議まとめは、その成果として、自然の事物・現象から問題を見いださせる指導や、予想や仮説を発想させる指導の充実が進められていること、国際的な学力調査で日本の児童生徒の科学コンピテンシーが世界トップクラスを維持していることを挙げています。
学年が上がるほど「理科が楽しい」が減る
一方で、課題として挙げられたのは次のような点です。
- 学校段階・学年が進むにつれ、理科を楽しいと好意的に捉える児童生徒が減少する傾向がある
- 科学コンピテンシーの高さに比べて、理科への興味・関心や有用感が低く、将来理科を使う職業に就きたいと回答する生徒の割合も低い
- 令和7年度の全国学力・学習状況調査では、小・中学校の理科で基本的概念の理解・定着が不十分な児童生徒が見られ、授業の内容が「よく分かる」と回答した割合も減少した
- 今学んでいる内容と、既習内容や今後学ぶ内容とのつながりを意識して学習できていない
- 理科のスコアに男女間で大きな差がないのに、理科に関する自信や科学分野を志向する割合には男女差があり、女子の機会損失を生んでいる可能性がある
学校種間の接続と、学習環境
学校種間の接続については、下の学校種で学んだことが上の学校種に円滑に引き継がれていないという指摘があり、分野・領域の区分や、探究の過程を表す用語なども学校種ごとに異なっていて、教科として整理・統一されていないとされました。小学校では、エネルギー問題や環境問題のように特定の分野に限定できない社会課題が増えているのに分野横断的な学習内容が規定されていないこと、高等学校では、科目によって開講・履修に偏りがあることも指摘されています。さらに、観察・実験の器具や機器の整備が十分でない学校があり、1人1台端末との接続を前提としたセンサーや機器のデジタル化もあまり進んでいないことも挙げられています。
理数系人材をめぐる社会からの要請
背景には、理数系人材をめぐる状況もあります。審議まとめによれば、大学入学者のうち理工系は19%(OECD諸国ワースト2位)にとどまり、学士で理工系を専攻する割合は男性29%に対して女性8%です。その一方で、2040年に大学・院卒の理系人材が約120万人不足するとの推計もあるとしています。
目標と見方・考え方は、小・中・高で文言をそろえる
目標の基本的な方向は変えない
審議まとめは、理科教育の役割を「科学的な素養を全国民に修得させること」と「理系の専門人材の育成」の両面だと整理し、「自然の事物・現象を科学的に探究するために必要な資質・能力」という現在の目標の基本的方向性は、引き続き適切だとしました。
変わるのは文言のそろえ方です。資質・能力の柱ごとの書きぶりは現在も小・中・高でおおむね同じですが、学校段階ごとに若干の差異があります。そこで、一貫性・系統性・連続性を確保する観点から、小・中・高で目標の文言を統一することが適当とされました。目標の到達状況や指導のあり方が発達段階で異なることは、各学校段階の解説で丁寧に説明するとしています。
見方・考え方は「自然や社会の事象・言説」へ
見方・考え方についても、従来の「自然の事物・現象を、科学的な視点で捉え、科学的に探究する方法を用いて考える」は学びの本質的意義として引き続き適切とし、基本的に維持しつつ文言を統一する方向です。その際、生成AIの発展とも相まって非科学的なデマ・フェイクニュースがSNSなどで急速に拡散する現状を踏まえ、クリティカル・シンキング(批判的思考)やメディアリテラシーの重要性の高まりを反映させるとしています。具体的には次の2点です。
- 働かせる対象:現行の「(身近な)自然の事物・現象」から、社会との接続を意識した「自然や社会の事象・言説」へ
- 教科固有の視点:人文科学や社会科学と区別するため、「科学的な視点」から「自然科学的な視点」へ
改善の方向性の項では、新たな見方・考え方として「自然や社会の事象・言説を、自然科学的な視点から捉え、観察、実験の結果や科学的知見などに基づいて、客観的、論理的、批判的に考察すること」との規定が考えられる、とも書かれています。
「自然を愛する心情」を中・高にも
「学びに向かう力」については、育みたい態度を科学的な探究の過程と関連付けて整理し、育みたい情意・感性を「生命を尊重する心情や人と自然環境の調和に寄与しようとする心情」と規定することが適当とされました。これまで小学校理科にだけあった「自然に親しむ」「自然を愛する心情」を、中・高にも当てはまる形に広げるものです。小学校では引き続き、自然と関わる体験を通じて学習を進めることが考えられるとしています。
学習内容を「4分野」と「区分」で整理する

小・中・高共通の4分野、各分野は3つ程度の区分に
学習内容は、学校段階間のつながりや学問的な系統性をより明確にするため、小・中・高共通で物理・化学・生物・地学の4つの「分野」に分けて整理する方向です。分野を横断する学習内容があることも前提とされています。
さらに、教師が資質・能力を理解しやすいよう、各分野を3つ程度の「区分」に分け、区分ごと・学校種等ごとに「統合的な理解・総合的な発揮」を整理することが適当とされました。「学校種等ごと」とは、小学校は第3〜第6学年の4年間、中学校は第1〜第3学年の3年間、高等学校は「○○基礎」「○○」という科目ごとを指します。高等学校だけ科目単位なのは、学校や生徒によって履修する科目や学年が大きく異なるためです。分野単位ではなく区分単位にすることで、教師が単元を構想するときに参考にしやすい抽象度になると期待されています。
では、現行の「エネルギー」「粒子」「生命」「地球」の4領域はどうなるのか。審議まとめは、4領域で育もうとしていた中核的な概念は「統合的な理解・総合的な発揮」で表現し、学問分野の横断性は区分と学習内容で確保する、としています。
「統合的な理解」は平易かつシンプルに
「統合的な理解・総合的な発揮」は、次期学習指導要領で内容のまとまりごとに資質・能力の獲得や発揮の方向性を示す目標です。理科では、教師が「最終的にどのような大きな理解を核に、個別の知識及び技能を結びつけていけばよいのか」をイメージできるように示し、高等学校を含めて可能な限り平易かつシンプルにするとしています。用語の理解や暗記・計算に偏るのでなく、科学的な探究によって導かれる一般原理・法則やその魅力を理解できる授業づくりを促すためです。
「総合的な発揮」は、どの分野でも共通して「科学的に探究する」ことができるようになることを示し、各学校段階で繰り返し育成を促します。あわせて、身の回りの事象から「特徴を見いだして表現する」ことをどの区分でも共通して示し、自然事象から再現可能な原理を見いだすという自然科学の本質的な思考方法を、日々の授業で実践させることがねらいです。
表形式は「並列パターン」、小学校の難化ではない
学習指導要領の表形式化では、理科は「知識及び技能」の系統性が明確で、それと一体的に育成する「思考力、判断力、表現力等」を示すことが授業改善につながるとして、「並列パターン」(知識及び技能のまとまりに対応する思考力、判断力、表現力等を並べて示す形式)で構造化する方向です。学習指導要領の示し方そのものの変化は、学習指導要領が「デジタル」になるでも紹介しています。
なお、学習内容の区分方法を小・中・高で統一しても、学校種や学年による指導方法の差異を否定するものではなく、特に小学校の学習内容の難化を招くものではないことを、国が丁寧に周知する必要があると明記されています。
新設される「理科と日常生活」と「科学ガイダンス」

小学校:分野横断的な課題を学ぶ「理科と日常生活」
小学校はこれまでも日常生活や社会とのつながりを重視した指導をしてきたため、社会・職業との関係に特化した独立の学習内容は設けず、各単元での指導の充実が期待されています。そのうえで、エネルギー問題や環境問題など、特定の分野・領域に限定できない社会課題が増えていることから、個別の分野・領域の既習事項をもとに分野横断的な課題を学ぶ学習内容「理科と日常生活」を新たに設定するとしました。分野横断的な学習は「統合的な理解・総合的な発揮」を身に付けるうえでも重要だ、という位置付けです。
中・高:科学とは何かから始める「科学ガイダンス」
中学校・高等学校には、「科学ガイダンス」を新設することが適当とされました。審議まとめは、理工系が選ばれず、学年が上がるほど興味・関心が下がる一因として、理科と社会・職業との関係が十分理解されていないことを挙げ、個々の分野の学習に入る前に科学に共通する事項を学べるようにする必要があるとしています。示された学習内容の要素は次のとおりです。
- 主に科目の冒頭で学ぶ事項:科学とは何か、科学的とは何か/理科の全体像、各分野間の関係/研究倫理
- 冒頭でも扱いつつ、科目の内容と関連付けて学ぶ事項:検証の方法/理科の学習内容と、研究・社会とのつながり
関連する内容は各単元でも往還的に指導します。市民教養と専門教養の内容をバランスよく含めつつ、教科の学びの導入として知的好奇心を誘発するものとし、知識の暗記を求める指導につながらないようにする必要があるとしています。高等学校では各基礎科目に位置付け、理科で最初に学ぶ基礎科目の冒頭である程度まとめて学習し、それ以外の基礎科目では内容を重点化して扱う運用が想定されています。
内容の充実は総授業時数を増やさないことが前提
こうした内容の充実は、総授業時数を増加させないことが前提です。あわせて、小・中・高の学習内容の接続について、さらに改善すべき点がないかを点検し、必要な見直しを行うべきだとしています。
高校理科は枠組みを維持し、必履修の選択肢を広げる
「○○基礎」→「○○」の構成は維持
高等学校については、物理・化学・生物・地学の分野に応じた科目設定、選択必履修の「○○基礎」と選択科目の「○○」という構成、「○○基礎」→「○○」という履修順序は、いずれも妥当であり、基本的な枠組みは引き続き維持すべきだとしています。「市民教養としての理科」と「専門教養としての理科」がともに求められる、という整理です。
「科学と人間生活」は見直し・充実
分野横断的な科目である「科学と人間生活」は、引き続き科目として設定し、学習内容を見直し・充実させる方向です。高校で4分野すべてを履修せずに就職・進学する生徒も含め、理科(科学)を学ぶ意義や面白さを実感させ、社会で最低限必要な科学的な素養を修得させる観点から、中学校理科との接続を意識しつつ、4分野をより広くカバーし、生活や社会と結びついた身近な内容にするとしています。現在は物理・化学・生物・地学に関する学習事項をそれぞれ2つのうち1つ履修することになっていますが、両方を履修できるようにすることが適当とされ、その場合の単位数は4単位程度が適当と考えられるとしています。
必履修の選び方に3つ目の選択肢
すべての高校生が履修する選択必履修科目の組合せは、現行の方法を基本としつつ、次の③を新設することが適当とされました。
- ① 「科学と人間生活(4新単位)」と「○○基礎(4新単位)」1科目
- ② 「○○基礎(4新単位)」3科目
- ③ 「科学と人間生活(8新単位)」(新設)
「新単位」は、高等学校の単位の計算を細分化する新しい数え方で、卒業に必要な単位数は74単位から148新単位になる方向です。現行で2単位の「○○基礎」や「科学と人間生活」は、4新単位に当たります。つまり③は、現行の数え方でいえば4単位分の「科学と人間生活」だけで必履修を満たす選択肢です。
科目の組替えと、多様な学習機会
高等学校では、必履修を含む科目の一部を他の科目や学校設定科目で扱うなど、科目を柔軟に組み替えられる仕組みも検討されています。理科の例として、「物理基礎+物理」を現行6単位から5〜6単位で、「○○基礎」4科目の組合せを現行8単位から6〜8単位で開設することが挙げられています(いずれも単位計算を細分化しない場合)。ただし、時数の減によって知識及び技能の習得・定着が疎かにならないよう注意が必要だとしています。自校で開設されていない科目を遠隔授業で履修する仕組みの周知なども求められています。
内容を精選し、観察・実験の「余白」を生み出す

再実験が必要になる教科だからこそ
審議まとめは、理科を「観察、実験の進行状況により、あるいは再現性を確認するために再実験が必要になるなど、単元内の授業時間を臨機応変に組み替えることが必要となる教科」だとし、授業時間に余白を生み出すことは、豊かな学びの実現の上で必要不可欠だとしています。
精選の3つの方針
そのうえで、次の方針で学習内容の見直し・精選を図り、次期学習指導要領と解説を作成する必要があるとしました。
- 「統合的な理解」「総合的な発揮」の形成に必要不可欠な知識及び技能、思考力、判断力、表現力等を中心に配列し、必ずしも不可欠とはいえない内容は精選する
- 同じ事物・現象を発達段階に応じて繰り返し(スパイラル)で学ぶという理科の特徴を踏まえつつ、学年間や学校種間で重複が大きい部分は整理する
- 小・中・高を通貫した学習内容の系統性、一貫性、連続性の観点から内容を見直す
教科書と指導書にも「必須性」の目安を
教科書についても、精選の対象や、構造化された学習指導要領とのつながりが分かる構成上の工夫について、教科書会社の編纂の参考となる例を示すべきだとしています。全体の分量を増やさないことにも留意が必要とされました。
小学校では理科の指導経験が浅い教師や指導が苦手な教師を中心に、中・高では受験指導を意識して、教科書を網羅的に指導する傾向があるという指摘もあります。そこで、教科書の個別の内容が必ず取り扱うべき内容なのか、必要に応じて扱うべき内容なのかが分かるよう、教師用指導書での工夫を教科書会社に要請することも考えられるとしています。審議まとめの第1部では、理科の教科書について、扱いの必須性の程度の明示に加え、個別事実・用語・現象例の並列的な例示は精選することなどを教科書会社に要請するとまとめられています。また、学習指導や教科書の改善を実効性あるものにするには、高等学校入試の改善を一層進める必要があるとも書かれています。
観察・実験、ICT、評価──授業づくりの方向
教科書「を」教える授業から、教科書「で」教える授業へ
基本的な概念や原理・法則を理解し、知識及び技能を確実に習得するには、座学だけでなく、観察・実験などの探究的な学びや、実感を伴う実体験を通した授業が不可欠だとしています。帰納的な指導と演繹的な指導を、児童生徒の実態に応じてバランスよく使い分けることも求められました。また、教師が資質・能力の深まる姿を具体的にイメージできるよう、「問題発見・解決の過程」を改善し、「統合的な理解・総合的な発揮」を活かした単元構想の参考イメージを学校種ごとに示す必要があるとしており、教科書「を」教える授業から教科書「で」教える授業への転換が一層進むことが期待されています。
探究は「毎単元・毎時」を求めるものではない
観察・実験や科学的な探究活動の一層の充実が重要とされる一方で、中・高の教師からは、入試指導への保護者の期待もあって探究的な学びに取り組みづらいとの声もあります。審議まとめは、探究的な学びは基礎的・基本的な知識及び技能の習得・定着を前提に、それらとの好循環を生み出すものであることや、求められる探究の度合いを国が丁寧に説明すべきだとし、毎単元・毎時にこうした指導を求めるものではないことにも留意が必要だとしています。
器具・機器の整備・更新は、国が実態を調査・可視化したうえで計画的に進める必要があるとされました。特に実験計測用センサーは、データ取得を効率化することで分析・考察に十分な時間を割けるようになるため、整備充実が強く期待されています。
ICTはデジタルとアナログの組合せで
改訂は1人1台端末・クラウド環境・デジタル教材などのデジタル学習基盤を前提とします。理科のICT活用には教師・学校・地域・学校種による大きな差があるため、デジタルとアナログの適切な組合せを含め、効果的な活用事例を改訂を待たずに国が周知することが重要だとしています。例として挙げられたのは次のような活用です。
- 記録・データの蓄積から観察・考察を深める
- モデル化・シミュレーション・プログラミングで理解・探究を深める
- センサーでデータを取得・活用する、AR/VRなどの先端技術を活用する
- クラウド上で対話する、生成AIを適切かつ効果的に利用する
- ポートフォリオを蓄積し、形成的評価に活用する
実験計測用センサーや表計算アプリを用いたデータ分析の資質・能力は、他教科等とも連携して育成することが重要だとしています(情報活用能力の育成については小学校「情報の領域」・中学校「情報・技術科」で何を学ぶのか、各教科とAIの関係は全教科の学習指導要領に「AI」が入るを参照)。
調整授業時数の活用例
義務教育段階での創設が示された調整授業時数制度では、理科も対象教科等に整理されています(制度の概要は授業時数「最大15%削減」へ)。生み出した時間を充てる「裁量的な時間」の例として、授業の内容を発展させた観察・実験の体験プログラムや、理科の単元構想づくりに向けた校内研究、学校種をまたいだ理科教育の研究・協議などが挙げられています。
評価と、理科の担い手
学習評価について、理科の節は、課題や仮説の設定を含め、科学的な探究の過程における行動の表出を多角的に見取ることが重要だとし、新たな観点別評価の導入を通じてその一層の充実を期待しています。審議まとめ全体では、「主体的に学習に取り組む態度」を教科ごとにABCで評価する仕組みを改め、総合所見欄での個人内評価と、思考・判断・表現の評価への「◯」の付記を組み合わせる方向が示されています。
このほか、教員研修の強化や教師向け動画コンテンツの作成、理科の支援人材の配置なども盛り込まれました。
教材づくりへの影響
単元配列と用語を、小・中・高の系統で見直す
学習内容が小・中・高共通の4分野と区分で整理される方向です。探究の過程を表す用語などが学校種ごとに異なる点も課題とされています。学年ごとの単元の並びだけで作られてきた教材は、区分ごとに「どの大きな理解に向かう単元なのか」を示し、前後の学校種とのつながりが見える構成が求められそうです。用語が整理されれば、問題集や解説の表記の見直しにも直結します。
「並べて覚える」から、原理・法則に向かう教材へ
用語の理解や暗記・計算に偏らないこと、個別事実・用語・現象例の並列的な例示を精選すること、扱いの必須性を明示すること。審議まとめのこうした方向は、教科書だけでなく副教材やワーク、テストの設計にも及びます。多くの用語を網羅して確認する問題より、身の回りの事象から特徴を見いだして表現する問題や、観察・実験のデータから考察する問題の比重が高まっていくと考えられます。必須の内容と発展的な内容を区別して示す編集も、これまで以上に重要になるでしょう。
新設の学習内容を支える教材
「理科と日常生活」は、エネルギー問題や環境問題などを、複数の分野の既習事項を組み合わせて考える学習です。「科学ガイダンス」は、科学とは何か、検証の方法、研究倫理、研究・社会とのつながりを、暗記ではなく知的好奇心を誘発する形で扱うことが求められています。いずれも、教科書だけでは扱いきれない具体的な事例や素材が必要になる領域で、導入教材や事例集、探究の手順を示すワークシートなどの出番がありそうです。高校では、4分野を広くカバーする「科学と人間生活(8新単位)」や、科目の組替えに対応した教材の需要も考えられます。
実験の分析・考察を支えるデジタル教材
センサーによるデータ取得、シミュレーション、ポートフォリオの活用など、審議まとめが例示したICT活用は、観察・実験の代わりではなく、分析・考察に時間を割くための道具と捉えるのが審議まとめの趣旨に沿うでしょう。デジタルとアナログの組合せを前提に、実験データを読み解く教材や、実物では再現しにくい現象を扱うシミュレーション教材の設計が問われます。
改訂までのスケジュール
2026年度冬頃の答申、2026年度末の改訂告示(小・中学校)を経て、全面実施は小学校が2030年度、中学校が2031年度から、高等学校は2032年度入学生からの予定です。「統合的な理解・総合的な発揮」の具体的な示し方は、告示に向けて文部科学省で検討するとされています。改訂全体の日程は次期学習指導要領・教科書改訂スケジュールにまとめています。
よくある質問(FAQ)
小学校の理科は難しくなるのですか?
審議まとめは、学習内容の区分方法を小・中・高で統一することは、特に小学校の学習内容の難化を招くものではないとし、国が丁寧に周知する必要があるとしています。内容の充実も総授業時数を増やさないことが前提です。
「エネルギー」「粒子」「生命」「地球」の4領域はどうなりますか?
学習内容は物理・化学・生物・地学の4分野と、各分野3つ程度の区分で整理する方向です。4領域で育もうとしていた中核的な概念は「統合的な理解・総合的な発揮」で表現し、学問分野の横断性は区分と学習内容で確保するとされています。
「科学ガイダンス」では何を学ぶのですか?
科学とは何か、科学的とは何か、理科の全体像と各分野間の関係、研究倫理を主に科目の冒頭で学び、検証の方法や、理科の学習内容と研究・社会とのつながりを科目の内容と関連付けて学びます。中学校・高等学校で新設する方向で、高等学校では各基礎科目に位置付け、最初に学ぶ基礎科目の冒頭である程度まとめて扱う運用が想定されています。
高校理科の必履修はどう変わりますか?
現行の「科学と人間生活」と「○○基礎」1科目、または「○○基礎」3科目という組合せに加え、「科学と人間生活(8新単位)」だけで必履修を満たす選択肢を新設する方向です。
いつから変わりますか?
次期学習指導要領の全面実施にあわせ、小学校は2030年度、中学校は2031年度から、高等学校は2032年度入学生からの見込みです。現在は審議まとめの段階で、答申は2026年度冬頃、小・中学校の改訂告示は2026年度末の予定です。
まとめ
次期学習指導要領の理科で示されたのは、小・中・高の理科が「目線を合わせる」方向です。目標の基本的な方向は変えずに文言を統一し、学習内容を4分野と区分で整理し、見方・考え方の対象を「自然や社会の事象・言説」に広げる。小学校には「理科と日常生活」、中・高には「科学ガイダンス」を設け、高校では「科学と人間生活」を見直して必履修の選択肢を広げる。そして、観察・実験のための余白を生むために内容を精選する──審議まとめが描いているのは、用語や計算に偏らず、科学的に探究する力を小学校から積み重ねていく理科です。
内容が精選され、探究の過程や分野横断的な学習が重視されるほど、教材には「何を、どの大きな理解に向けて学ぶのか」を明確にした設計が求められます。エデュコンは、教材・テキスト制作で単元構成から執筆までを、模擬試験・テスト制作で考察や表現を問う問題づくりを承っています。小学校向け教材制作・中学校向け教材制作・高校向け教材制作のご相談も含め、次期学習指導要領に向けた理科教材の見直しについて、お気軽にご相談ください。
この記事を書いた人 / 監修
エデュコン教材制作チーム
創業以来、500社以上の教育機関様の教材制作を支援。
教育・IT・編集のプロフェッショナルが集まる専門チームが記事を監修しています。
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