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デジタル教科書の動画は「1本3分程度」まで──検定の論点整理(案)が示した教科別の上限と制作の要件

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ICT教育・GIGA
デジタル教材制作

2026年10月13日、教科用図書検定調査審議会の総会(第2回)・総括部会(第3回)合同会議に「教科書検定の改善について(第一次論点整理)(案)」が示されました。デジタルな形態を含む教科書に載せる動画は1本あたり3分程度までとし、教科書1点あたりの動画の総量にも上限を設けて、その時間数を学年・種目ごとに表で示す、という内容です。9月の骨子案では「総量に上限を定める」という方向だけで、1本あたりの長さも、具体的な時間数もまだ出ていませんでした。本コラムでは、配付資料(資料1=概要、資料2=論点整理(案)の本体)の記述をたどりながら、数字の中身と、動画をつくる側に効いてくる要件を整理します。

この記事の要点

  • 2026年10月13日の教科書検定「第一次論点整理(案)」で、デジタル教科書に載せる動画は1本3分程度までとする方向が示された
  • 教科書1点あたりの動画の総量にも上限(教科別に20〜90分)を設ける案で、スライドショーやアニメーションも動画に数える
  • 操作型のコンテンツは動画とは別に扱い、すべての動画・音声にスクリプト(台本)を付けることが要件になりつつある
  • 本数を絞り、1本ごとのねらいを説明でき、台本で内容を確定させる進め方が、デジタル教科書の動画制作にも求められる

10月13日に示された「第一次論点整理(案)」

9月の骨子案の続き

教科書検定のルールは、教科用図書検定調査審議会で検討されています。2026年4月14日に文部科学省から審議要請があり、9月2日の総括部会には「骨子案」が示されました。骨子案で示された線引き──載せてよいコンテンツと載せられないコンテンツ、外部リンクの扱い、AI搭載の保留など──はデジタル教科書に載せてよいもの、いけないもので解説しています。

今回の資料2「第一次論点整理(案)」は、その骨子案に追記・整理を加えたものです。もっとも大きな追加が、動画の長さと総量を数字で示したことです。

まだ「案」であり、春頃に最終報告

資料7「当面の検討の進め方について(案)」によると、今後は10〜11月に教科ごとの部会で検討し、12月〜翌1月に総括部会で各部会の意見を踏まえて検討、2027年春頃に総会で最終報告という流れです。その後、文部科学省が検定規則・検定基準等を改正する予定です。

時間数の表についても、資料2自身が「今後、学習指導要領改訂の動きや(中略)検討会議の検討状況に合わせて、見直すこともあり得る」と書いています。現時点の数字は確定値ではなく、審議会の案の段階です。

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動画は「1本3分程度」、総量にも上限

なぜ上限を設けるのか

資料2は理由を3つの方向から説明しています。

1つ目は、動画の性質です。動画は再生に要する時間が決まっており、再生する間、児童生徒は受動的に視聴することになります。2つ目は、現状です。現行の紙の教科書の二次元コード先には多種多様な動画が置かれており、なかには1点の教科書で合計5時間を超える動画を掲載している例もある、と指摘しています。3つ目は、次期学習指導要領の議論で求められている教科書の内容・分量の精選です。

そのうえで、「教師による授業づくりを阻害しないようにする観点や、児童生徒の集中力の観点」から、1本あたりの長さは3分程度までとすることが適当だとしました。

教科の特性で時間数を変える

総量の上限は一律ではありません。資料1(概要)では、教科を次のように分けて時間数を示しています。

- 技能の習得に動画が特に有効な教科(音楽、図工・美術、家庭、技術、書写):1学年で1冊なら30分、2学年で1冊なら60分、3学年で1冊なら90分を基本とする
- 観察や実験を通して学ぶことが重要な教科(理科):小学4年以下は1冊40分、小学5年以上(中学校を含む)は1冊60分
- 活動や体験を通して学ぶことが重要な教科(生活):2学年で1冊60分
- 言語活動の充実に動画が効果的な教科(外国語):1冊80分
- それ以外の教科(国語、社会、算数・数学、保健体育、道徳):1冊20分。ただし中学校社会は1冊40分、中学校保健体育は3学年で1冊60分

1学年1冊で比べると、国語・算数・道徳の20分に対して、外国語は80分と4倍です。資料2は、教科の特性に加えて、年間の授業時数や発達段階も踏まえて定める必要があるとしています。

学年・種目ごとの上限時間

資料2には、小・中学校の受理種目・受理単位(検定申請を受け付ける教科書の種類と、何学年分を1冊とするかのまとまり)ごとの表が載っています。この表は、次期学習指導要領の「審議まとめ(案)」(10月5日の取りまとめ前の案)と、現行の教科書の受理種目に沿って整理されたものです。種目別に抜き出します(単位:分)。

国語・社会・算数/数学・道徳・保健体育

- 国語:小1〜中3の各学年20
- 算数・数学:小1〜中3の各学年20
- 道徳:小1〜中3の各学年20
- 社会:小3〜小6の各学年20、中学校は地理・歴史・公民がそれぞれ40
- 地図:小3〜小6で1冊20、中学校は3学年で1冊20
- 保健体育:小3・小4で1冊20、小5・小6で1冊20、中学校は3学年で1冊60

理科・生活・外国語

- 理科:小3・小4は各40、小5〜中3は各60
- 生活:小1・小2で1冊60
- 外国語:小5〜中3の各学年80

技能系の教科

- 書写:小1〜小6の各学年30、中学校は3学年で1冊90
- 音楽:小1〜小6の各学年30。中学校の「音楽(一般)」は中1が20、中2・中3で1冊40。「音楽(器楽合奏)」は3学年で1冊60
- 図工・美術:小学校は2学年ごとに1冊60、中学校美術は中1が30、中2・中3で1冊60
- 家庭:小5・小6で1冊60、中学校は3学年で1冊60
- 情報・技術:中学校は3学年で1冊90

技能系の教科は「1学年で1冊なら30分、2学年なら60分、3学年なら90分」が基本とされていますが、表では中学校の音楽(一般)や家庭のように、その基本を下回る値になっている種目もあります。

中学校の「情報・技術」は、次期学習指導要領で技術・家庭科から再編される新しい教科を見越した欄です(新教科の中身は小学校「情報の領域」・中学校「情報・技術科」で何を学ぶのかで解説しています)。

高等学校の上限はこれから

高等学校は、次期学習指導要領で科目構成や単位の計算方法の見直しが検討されているため、表に入っていません。資料2は「小・中学校の教科ごとの上限の設定の考え方に準じつつ、各科目の標準単位数も踏まえて定めることが適当」としています。

何が「動画」に数えられるのか

スライドショーもアニメーションも動画

総量の上限を考えるうえで欠かせないのが、動画の定義です。資料2は、教科書における「動画」を「再生操作を行うことによって、静止画を連続して自動で表示することにより示される内容」とし、実写映像に限らず、スライドショーやアニメーションも含むとしました。静止画が一定時間で自動的に切り替わるもの(音声を付すなどしたもの)も、動画として扱われます。

操作で動くものは「動画とは別」

反対に、次のものは「連続して自動で表示するもの」に当たらず、動画とは別のコンテンツと整理されています。

- 再生操作以外の操作(画像を回転させる、移動させるなど)で動作するもの
- 児童生徒が入力する回答や数値によって、表示される結果が変わるもの

つまり、図形やグラフを操作して試行錯誤するシミュレーションは、動画の総量の上限の外にあります。ただし上限の外にあるからといって、何でも載せられるわけではありません。デジタルコンテンツ全般には、次の3つの要件がかかります。

- 教科の本質的理解の獲得に資すること
- 学習における活用目的・活用方法が明確であること
- 原則として授業時数の中で、そのコンテンツを使う学習活動が想定されていること

加えて、入力や操作に対して出力される結果の適切さ・正確さを、教科書発行者が確実に説明できるものに限る、という条件もあります。

外部への二次元コード・リンクは認めない方向

動画の置き場所についても方向性が示されています。デジタルを含む教科書では、紙から二次元コードで移るコンテンツも、デジタル部分からクリックで移るコンテンツも、いずれも教科書の一部となり検定の対象になります。そのうえで、外部ウェブサイトや教科書外の教材へ移る二次元コードやリンクは認めない方向です。今は二次元コード先に置いている補助動画も、教科書に取り込んで検定を受けるのか、教科書の外の教材として扱うのかを整理する必要が出てきます。なお、教科書の一部としてのデジタル部分と教材を明確に識別できることを前提に、教科書以外のデジタル教材との連携の在り方は、標準仕様に関する調査事業で検討されています。

動画に求められる品質

「客観的に明白な誤りがないこと」

動画の正確性について、資料2は興味深い判断をしています。実演・再現・インタビューなど動画の表現は多様で、文字や図画より多くの情報が入ります。映像や音声の細部まで、文章や静止図画と同じ水準の厳密さを求めると、編修と審査の双方に過大な負担が生じ、発行者が動画を取り入れること自体を控えかねない、というのです。そこで要件は、発達段階や教科の特性を踏まえて学習のねらいの達成に支障がなく、客観的に明白な誤りがないこととする方向です。

音声の正確性も、同じ考え方で扱われます。そのうえで外国語の音声については、申請時に「外国語音声に関する方針」の提出を求める方向です。記載内容としては、例えば、どの英語の変種(アメリカ英語かイギリス英語か等)を基本に用いるか、異なる変種の話者や英語を母語としない話者が含まれるか、どんな活動で使う想定か、といったことが考えられるとされています。

体験の代わりにしない

動画は実感を伴った理解に役立ちますが、実際の体験を完全に代替するものではありません。資料2は、動画の視聴をもって実践や体験を行ったことにする扱いは避け、実践や体験を通した学習がなされるよう配慮されていることを要件とする方向です。理科には固有の基準として、動画は実際の実験・観察を通して学習がなされるよう配慮されていること、が置かれる方向です。

心身への配慮と「通常知覚できない技法」

災害や戦争の様子などを発達段階への配慮なく見せる映像、短時間に連続する点滅を含む映像など、心身への影響にも十分な配慮が求められます。さらに、ごく短い時間だけ映像を差し込む、聞き取れないほど小さな音を入れるといった、視聴者が通常知覚できない技法で潜在意識に働きかける表現を行わないことが要件となり、申請時にそうした技法を用いていないことの誓約を求めることも検討するとしています。

申請の実務──台本と一覧が要る

すべての動画・音声にスクリプト

制作側にとって実務的に大きいのが、提出物の整理です。資料2は、現行の外国語の音声と同じように、外国語に限らずすべての動画・音声について、ファイルとともにスクリプトの提出を求める方向です。目視や聞き取りだけでは正確性の確認が難しい場合があるためです。

シミュレーションやプログラミングなど、指定のファイル形式で全体を提出できないコンテンツは、そのコンテンツで学べる内容をできる限り詳しく説明する資料を、文字・画像・動画で作成して提出します。あわせて、搭載するコンテンツや機能の一覧も申請書類に加わります。

提出の猶予期間

デジタルコンテンツに関する資料の提出には、申請書の提出から5週間程度の猶予を設ける方向です。検定意見が付いて動画や音声を直す場合は、修正表にスクリプトの原文と変更文(または静止画と説明文による原案と変更案)を記入し、変更後のファイルは修正表の提出から6〜7週間程度の猶予で提出します。撮り直しや収録にかかる期間を見込んだ設計ですが、裏を返せば、台本の段階で内容を確定できる体制がないと、この期間内に収めるのは難しいと考えられます。

審査料と審査体制

検定審査料は、文字・図画で構成するページ部分については現在のページ単価(小学校270円、中学校440円、高等学校540円)を維持する方向です。動画・音声・シミュレーションなどページで数えられないコンテンツは、コンテンツ数に応じた審査料を加算する方向で、コンテンツの総数に応じて段階的に設定することも考えられるとしています。審査する側も、各部会にデジタルコンテンツ専門の委員を追加で委嘱するなど、体制を強化するとしています。

「3分」で何を見せるか──制作の視点から

総量で考えると、本数はかなり絞られる

数字を制作の感覚に置き換えてみます。国語や算数の1冊20分は、すべて上限の3分でつくれば約6本です。理科の1冊60分でも20本ほど。もちろん、短い動画にすれば本数は増やせますが、1点の教科書の二次元コード先に合計5時間を超える動画が置かれている現状と比べると、総量は大きく絞られます。1本ごとに「なぜこの動画が要るのか」を説明できることが、これまで以上に問われます。

1本に1つのねらい

3分程度という長さは、複数の論点を詰め込むには短く、1つの手順や現象を見せるには十分です。古文に出てくる調度品を見せる、実験器具の扱い方を示す、楽器の奏法を見せる──骨子案以来の例示は、どれもねらいが1つに絞られた動画です。授業そのものを代替する講義動画は9月の骨子案から、教師に代わって問題の解き方を解説する動画(算数・数学、理科の例)は今回の論点整理で、掲載を認めない例に挙がっています。動画教材の設計の基本は「学べる」動画教材のつくり方でも扱いました。

紙のページと結びつける

学習指導要領の内容は文字と静止図画で不足なく取り上げることを基本とし(外国語の「聞くこと」のための音声など、教科特性上必要な場合は例外)、動画はその記述と密接な関連を有するものであることを要件とする方向です。紙とデジタルを組み合わせる形態では、どのページ・項目に関連する内容かを相互に示すことも求められます。動画は単独の作品としてではなく、ページの記述のどこを補うのかから設計することになります。

「動画にしない」選択肢

操作によって結果が変わるシミュレーションは、動画の総量には数えられません。動きを見せたい内容のうち、児童生徒が自分で操作して確かめるほうが学びになるものは、動画ではなく操作型のコンテンツとして設計する選択肢があります。ただしその場合も、出力の正確さを発行者が説明できること、学べる内容を説明資料で示せることが条件になります。

よくある質問(FAQ)

動画の上限は決まったルールですか?

いいえ。10月13日に示されたのは「第一次論点整理(案)」です。今後、各部会と総括部会での検討を経て、2027年春頃に最終報告が取りまとめられ、その後に検定規則・検定基準等が改正される予定です。時間数の表も、学習指導要領改訂の動きなどに合わせて見直すこともあり得る、とされています。

3分を少しでも超えたら載せられないのですか?

資料2では「3分程度まで」という表現です。「程度」の幅がどう運用されるかは、今後の基準づくりで具体化されるとみられます。

シミュレーションは総量に含まれますか?

資料2の定義では、再生操作以外の操作で動くものや、入力によって表示が変わるものは「動画とは別のコンテンツ」です。動画の総量の上限には含まれませんが、デジタルコンテンツとしての要件や、出力の正確さを説明できることといった条件はかかります。

音声にも総量の上限はありますか?

今回の資料で総量の上限が示されたのは動画です。音声については、正確性・表現の要件や、外国語音声に関する方針の提出が示されています。

教科書にAIは載りますか?

今回も可否は示されていません。応答や提案などの生成、評価、音声・画像認識などを行うAIの搭載の可能性については、今後の技術の進展を踏まえつつ、必要性、対象となるAI、出力の正確さを担保する方法などを当面整理する必要がある、とされています。9月の骨子案での扱いはデジタル教科書に載せてよいもの、いけないもので解説しています。

いつの教科書から適用されますか?

改正法により、動画や音声も含めたデジタルコンテンツを教科書の内容にできるのは、小学校で次期学習指導要領が全面実施される令和12年度(2030年度)からです。9月2日の総括部会に示された工程(参考資料1)では、令和9年度(2027年度)に著作・編集、令和10年度(2028年度)に小学校用(令和12年度使用)、令和11年度(2029年度)に中学校用(令和13年度使用)の検定が予定されています。

まとめ

10月13日の論点整理(案)で、デジタル教科書の動画について、1本3分程度、1点あたり20〜90分という具体的な数字が示されました。骨子案以来の、授業自体を代替するようなコンテンツは載せないという考え方が、時間という測れる形になったといえます。

同時に、スライドショーやアニメーションも動画に数えること、操作型のコンテンツは動画とは別に扱うこと、すべての動画・音声にスクリプトを付けることなど、つくり方そのものに関わる要件も具体化しつつあります。本数を絞り、1本ごとのねらいを説明でき、台本で内容を確定させる──紙の教科書づくりで当たり前だった進め方を、動画にも持ち込むことになります。

エデュコンは、デジタル教材制作でシミュレーションや演習アプリを、授業動画の制作で台本から撮影・編集までを、企画から一貫して承っています。デジタル教科書時代の動画・コンテンツ設計について、お気軽にご相談ください。

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