「主体的に学習に取り組む態度」のABCは廃止へ──思考・判断・表現への「◯」で変わる次期学習指導要領の学習評価
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2026年10月5日、中央教育審議会の教育課程部会が「次期学習指導要領等に向けた審議まとめ」を取りまとめました。その第6章「豊かな学びに繋がる学習評価」は、現行の3観点のうち「主体的に学習に取り組む態度」を教科ごとにABCで評価する仕組みをやめ、思考・判断・表現の評価に「◯」を付記する新しい方式を打ち出しています。通知表や指導要録のつけ方だけでなく、評価課題やテストの作り方にも関わる変更です。本コラムでは、審議まとめの本文に沿って、何が変わり、何が変わらないのかを整理します。
この記事の要点
- 2026年10月5日の審議まとめは、「主体的に学習に取り組む態度」の教科ごとのABC評価をやめ、総合所見欄での個人内評価に切り替える方向を示した
- 「初発の思考や行動」「学びの主体的な調整」「対話と協働」が思考・判断・表現の過程で継続的に表れた場合、その観点に「◯」を付記する
- 「◯」は独立した観点ではなく、思考・判断・表現を介して評定に影響する。「B◯」で評定5もあり得るが、自動的に一段階上がるわけではない
- 評価規準の二重作成の解消、評定は学年末のみでも可と明示、学期中は形成的評価中心など、評価のプロセスも簡素化される
現行の学習評価と、その課題

3観点のABCを評定に総括する仕組み
現行の学習評価は、平成29・30年改訂の学習指導要領にあわせて、中央教育審議会の報告「児童生徒の学習評価の在り方について」(2019年1月)と、文部科学省の通知(2019年3月)で整理されたものです。資質・能力の3つの柱に対応させて、知識・技能/思考・判断・表現/主体的に学習に取り組む態度の3観点を設け、教科ごとに各観点をA・B・Cの3段階で評価し、それらを総括して評定を定めます。観点別評価も評定も、学習指導要領の目標・内容に照らした「目標に準拠した評価」として行い、感性や思いやりなどは、一人一人のよさや成長を見る「個人内評価」で扱う、という整理です。
「主体的に学習に取り組む態度」の形式化
審議まとめがとくに問題視したのが、「主体的に学習に取り組む態度」の評価です。この観点は「粘り強さ」と「自己調整」の2つの視点で評価することになっていますが、実際には次のような課題が出ていると指摘しています。
- 粘り強さ:ノート提出の頻度や課題の締切を守ったかなど、形式的な「勤勉さ」の評価にとどまる例が散見される
- 自己調整:振り返りで評価する場合も教師の負担が大きく、子供が教師の期待する表現を過度に意識する傾向がある
さらに、目標に準拠した評価として評定を左右するため、評価理由を説明しやすい定量的な材料に頼らざるを得ず、よさや成長を肯定的に伝えにくい場合がある、ともしています。
評定に向けた評価ばかりになっている
もう1つの課題は、評価の役割分担です。学習の途中で学習改善に生かす評価(形成的評価)と、学習の成果を記録に残す評価(総括的評価)が十分に区別されず、評価のほとんどが評定に向けて行われている。学期ごとに評定を細分化して確定し、その後は変えない扱いが多い。その結果、通知表の作成は負担が大きい一方で、うまく学べなかった教科をあとから学び直す動機づけは弱い──審議まとめは、こう現状を描いています。
「思考・判断・表現」もペーパーテストに偏りがち
思考・判断・表現の評価方法にも課題が挙げられました。小学校では、担当教科が多く評価計画を丁寧に作る余裕がないこともあり、知識・技能と思考・判断・表現の両方を業者から購入した単元テストで評価する例が多い。中学校・高等学校では、入試等で成績が使われるため、客観性を重視して両観点をペーパーテストだけで評価する意識が根強い。論述やレポート、発表、話し合い、作品制作などの多様な評価方法は、広く普及しているとは言い難い、という見立てです。
「学びに向かう力」は個人内評価へ

観点は残し、教科ごとのABCをやめる
審議まとめは、「学びに向かう力、人間性等」を評価観点としては残したうえで、各教科で目標に準拠した評価として行うことをやめる方向を示しました。代わりに、子供一人一人のよさや成長を自然な形で見取り、肯定的に評価できるよう、総合所見欄で教育課程全体を通じた個人内評価を行う、としています。
これまで「感性・思いやり」(個人内評価)と「主体的に学習に取り組む態度」(目標に準拠した評価)を分けていたのは、目標に準拠した評価ができる部分とできない部分を区別するためでした。その区別が不要になるため、観点の呼び方は単に「学びに向かう力・人間性」などとすることが考えられる、ともしています。
4つの要素のうち3つを思考・判断・表現で見取る
審議まとめは、「学びに向かう力、人間性等」を4つの要素で整理しています。
- 初発の思考や行動を起こす力・好奇心
- 学びの主体的な調整
- 他者との対話や協働
- 学びを方向付ける人間性
このうち前の3つ(「学びに向かう力の3要素」)は、問題発見・解決や考えの形成・表現といった思考・判断・表現の過程で表れやすく、一定の見取りが可能です。そこで、これらが思考・判断・表現の過程で特に表れた場合には、思考・判断・表現の観点別評価に「◯」を付記する方向が示されました。4つ目の「学びを方向付ける人間性」は学習過程で表れにくく具体的な見取りが難しいため、総合所見欄等での個人内評価で扱います。
不登校の子供の評価にも関わる
審議まとめは、この見直しが不登校の子供の評価にも関わるとしています。現在の「主体的に学習に取り組む態度」は形式的な勤勉さの評価にとどまりやすく、教室での学習活動に参加することが難しい子供は、この観点の評価が難しく、評定もつけられないという実態があります。新しい方式は、その改善にも寄与することが期待されています。
同時に、「学びに向かう力」の評価を「しなくてもよくなる」「軽視してよい」と誤解されないよう、運用の設計で配慮し、趣旨を周知徹底すべきだとも書いています。
「◯」はどう付けるのか
国が教科ごとに「見取る姿」を示す
「◯」を付ける着眼点として、国が各教科等ごとに「見取る姿」(具体的な児童生徒の姿)を示します。審議まとめには、中学校数学の例として次の3つが挙げられています。
- 事象に知的好奇心や目的意識をもって問題を見いだし、数学を活用しようとしている
- 他者と数学的論拠に基づいて協働し、問題解決を進めようとしている
- 問題発見・解決の過程を振り返って評価・改善しようとしている
「見取る姿」は学年ごととは限らず、教科の特質に応じて一定の学年のまとまりごとに示すことが考えられています。一方で、過度な評価材料集めにつながらないよう、単元ごとの「見取る姿」は示さず、単元ごとに「◯」を付ける運用も求めないとしています。国の「見取る姿」をもとに各学校に独自の着眼点を設定させることも一律には求めず、そのまま使える前提で作る方針です。
特定の場面ではなく「継続的な発揮」を見る
付け方の考え方は、ほかの観点とはっきり違います。ほかの観点のように特定の学習場面・課題で「規準」に照らして達成の有無を判断するのではなく、評価期間における思考・判断・表現の学習過程全体を通じて、「見取る姿」に示す行動の「継続的な発揮」を見取れた場合に「◯」を付けます。
理由として審議まとめが挙げるのは、評価したい資質・能力と、観察できる評価材料との「ずれ」です。分数の理解なら分数の理解を問う課題を出せますが、自己調整や粘り強さは直接観察できず、振り返りなどの間接的な材料から推定するしかありません。特定の場面だけで判断しようとすると、このずれが大きくなり、客観的に証明するための形式的な材料集めを招く、という整理です。仮に「◯」にも規準を設けて達成の有無で判断すれば、評価の付け方が「ABC」から「◯あり、◯なし」に変わるだけで、形式的で過度な評価材料集めはなくならない、とも書いています。
「全教科で◯」は目的ではない
「◯」は、評価期間内にその教科で3要素が繰り返し表れたことを意味します。そのため、その後の学習でも主体的な学びに基づく伸びが期待できる、という積極的な意味づけもできます。一方で、全て又は大多数の教科で「◯」を獲得することが目的化したり、見取る姿が見られないのに動機づけのためだけに「◯」を付けたりすることは、運用上想定しておらず、注意深く避ける必要があるとしています。
「◯」は評定にどう影響するか

独立した観点ではなく、思考・判断・表現を介して影響
「◯」を評定に反映させるかどうかについては、審議の過程で両方の意見があったことが記されています。評定に影響させると形式的で過度な評価材料集めが起きやすくなるという意見と、これからの社会でますます求められる資質・能力なので、学校現場の取組を促すために評定に影響させるべきだという意見です。
審議まとめの結論は、「◯」は独立した評価観点として評定に影響を与えるものではなく、思考・判断・表現の観点別評価を介して評定に影響する、というものです。「学びに向かう力」は思考・判断・表現と一体的に表れる以上、評定を含む学習評価では思考・判断・表現と切り離せない性質のもの、と位置づけています。
「B◯」なら評定5もあり得るが、自動的には上がらない
具体的な運用として、審議まとめは次の例を示しています。知識・技能と思考・判断・表現が「A・B」なら、評定(5段階)は4か5が想定される。思考・判断・表現が「B◯」の場合は、一体的に勘案した結果として評定を5とする総合的な判断があり得る。ただし「◯」は自動的に評定を一段階上げるものではなく、「B◯」でも評定が4になることはあり得る。それは「◯」を勘案しなかったのではなく、思考・判断・表現の育成状況と一体的に勘案した結果、一段階上げるには至らなかったということだ、という説明です。
観点別評価と「◯」の組み合わせが同じでも評定が一つに決まらないという指摘もあり得るとしたうえで、現行でも「ABB」の評定は3〜4の幅が生じうるのと同じであり、評定の決め方は所管の教育委員会の方針と教師の専門的・総合的な判断で定めるもの、としています。運用の考え方は、改訂後の整理で改めて示すべきだとされました。
評価のプロセスも簡素になる
「統合的な理解・総合的な発揮」は直接評価しない
次期学習指導要領では、各教科の目標・内容を「統合的な理解・総合的な発揮」を軸に構造化します。これを取り出して規準を設定し、達成状況を直接評価することは、当面は求めないとされました。直接評価しようとすると、学習の文脈から切り離された抽象的な概念の暗記を問う課題になるおそれや、同じ内容に二重の評価負担がかかるおそれがあるためです。審議まとめは、望ましくない評価課題の例として「化学反応の前後で原子の数はどうなるか(答:変わらない)」を挙げています。代わりに、単元を構想するときの方向目標とし、たとえば単元の成果を「A(十分満足)」と判断するときに踏まえる視点として機能させる、という位置づけです。
作成の意義が乏しい作業をやめる
評価の手順そのものも見直されます。審議まとめが「スリム化」として挙げたのは、次の点です。
- 評価規準の二重設定の解消:各学校が作っている「内容のまとまりごとの評価規準」は、実質的に学習指導要領の文末を変えて作るもので作成の意義に乏しい。国が例を示し、各学校での作成は不要とする
- 目標と評価規準の一本化:単元の目標と評価規準を別々に作るのをやめ、単元の目標をそのまま評価規準として用いる
- 「計画の作成」から「構想」へ:全単元で「指導と評価の計画」という文書を作ることを求めるのでなく、教師が何を意識して授業を構想するかというプロセスとして示す
国の「内容のまとまりごとの評価規準(例)」は、デジタル学習指導要領で各教科の内容や解説と一体的に参照できる方向で検討されています(参考:学習指導要領が「デジタル」になる)。
評定は学年末だけでもよいと明示
形成的評価の時間を生み出すため、評定への総括は学年末のみに行うことが可能であることを明確に示し、その場合は学期中は形成的評価を中心に行うよう促すなど、評価の役割分担を明確にすべきだとしています。学習指導要領の解説でも、総括的な評価の頻度の見直しと、形成的評価の計画的な位置づけを明確にするとされました。
6つのステップで描き直す評価のプロセス
そのうえで、学習評価のプロセスを次のように描き直すことが示されています。
1. 何を身に付けさせたいかを明確にする(目標と評価規準の設定)
2. 資質・能力の発揮を見取り、その水準を判断できる課題を考える(評価課題のデザイン)
3. 評価課題に向けて資質・能力を身に付け、発揮しやすい学習活動を組み立てる(学習過程のデザイン)
4. 目指したい姿と現状の差分を学習途中で見取り、フィードバックの方法を考える(形成的評価の計画的な実施)
5. 学習活動を展開する(授業の実施)
6. 学習成果を観点別評価・評定へ総括する(総括的評価)
画一化を避けるため、学習指導要領本体には基本的な考え方だけを書き、具体は解説や国立教育政策研究所の評価参考資料に記載する方針です。
テスト・教材づくりへの影響
思考・判断・表現の評価課題の比重が上がる
審議まとめは、「◯」の仕組みによって、ペーパーテストに偏った思考・判断・表現の評価が改善され、論述・レポート・口頭試問・プレゼンテーション・作品制作など、学びの主体的な調整が求められる評価課題が重視されることを期待しています。実生活や社会と結びついた問いから、論述やレポート、作品制作に至るまでの間に、学びの主体的な調整が必要になる学習課題を核にした指導・評価へ、という方向です。
小学校で多く使われている単元テストも、知識・技能と思考・判断・表現をペーパーで測る道具としてだけでなく、単元を通じた思考・判断・表現の過程とどう組み合わせるかが問われることになりそうです。
「評価課題のデザイン」を支える教材
6つのステップのうち、2の「評価課題のデザイン」と3の「学習過程のデザイン」は、教師の専門性が最も問われる部分であり、同時に教材が支えられる部分でもあります。審議まとめは、こうした基本的な考え方を評価参考資料を待たずに告示とともに国が示すことが、教科書の編纂や民間教材の開発を促し、多くの教師にとって実現可能な環境づくりにつながる、と明記しました。単元の目標と評価規準を一本化し、評価課題と学習過程を一体で設計する、という考え方に沿った教材が求められていくはずです。
形成的評価を回すための材料
評定を学年末にまとめ、学期中は形成的評価を中心にする運用が広がれば、学習の途中で「目標と現在地の差分」を確かめるための小さな課題や確認問題、フィードバックの手がかりの需要が高まります。審議まとめは、効果的な形成的評価の例を評価参考資料で示していく必要があるとしています。
今後のスケジュール
「見取る姿」と運用方法の整理は、学習指導要領の改訂後速やかに文部科学省で検討を始め、国立教育政策研究所の参考資料も含めて、小中学校については令和10年度(2028年度)末までに学校や教育委員会に周知するとしています。令和12年度(2030年度)からの小学校の全面実施までに、十分な準備期間を設けるためです。
審議まとめは2026年11月5日までパブリック・コメント(意見公募)にかけられ、2026年度冬頃の答申、2026年度末の改訂告示(小・中学校)へと進む予定です。全面実施は小学校が2030年度、中学校が2031年度からです。改訂全体の日程は次期学習指導要領・教科書改訂スケジュールにまとめています。
よくある質問(FAQ)
「主体的に学習に取り組む態度」の評価はなくなるのですか?
教科ごとにA・B・Cで評価する仕組みはなくなる方向です。ただし「学びに向かう力、人間性等」は評価観点として残り、総合所見欄での個人内評価と、思考・判断・表現への「◯」の付記を組み合わせて評価します。審議まとめは、「評価しなくてもよくなる」という誤解が生じないよう周知を徹底すべきだとしています。
「◯」はどんなときに付きますか?
「初発の思考や行動」「学びの主体的な調整」「対話と協働」の3要素が、思考・判断・表現の学習過程で継続的に表れた場合です。国が教科ごとに示す「見取る姿」を着眼点にし、特定の場面ではなく評価期間全体を通じて判断します。単元ごとに付ける運用は求められていません。
「◯」が付くと評定が上がるのですか?
自動的には上がりません。「◯」は独立した観点ではなく、思考・判断・表現の評価の中で一体的に勘案されます。審議まとめの例では、思考・判断・表現が「B◯」の場合に評定を5とする判断はあり得るものの、4となることもあり得るとされています。
通知表の評定は学期ごとでなくなりますか?
評定への総括を学年末のみに行うことが可能であると明確に示す方針です。必ず学年末だけにするという意味ではなく、評定の決め方は引き続き教育委員会の方針と学校の判断によります。学年末のみとする場合は、学期中は形成的評価を中心に行うことが促されます。
いつから変わりますか?
次期学習指導要領の全面実施にあわせ、小学校は2030年度、中学校は2031年度からの見込みです。「見取る姿」と運用方法は、小中学校について2028年度末までに周知される予定です。
まとめ
今回の見直しの軸は、評価のための評価をやめ、学びを深めるための評価に戻すことです。「主体的に学習に取り組む態度」は、ABCで形式的に測る対象から、思考・判断・表現の過程で継続的に見取り、よさを肯定的に伝える対象へ。評価規準の二重作成や文書としての計画づくりは減らし、その分の余白を、評価課題と学習過程のデザイン、学習途中のフィードバックに振り向ける──審議まとめが描いているのは、そうした転換です。
評価課題の質が問われるほど、テストやワーク、パフォーマンス課題の設計は重要になります。エデュコンは、教材・テキスト制作で単元の目標と評価課題をそろえた教材の企画・執筆を、模擬試験・テスト制作で思考・判断・表現を問う問題づくりを承っています。次期学習指導要領に向けた教材・テストの見直しについて、お気軽にご相談ください。
この記事を書いた人 / 監修
エデュコン教材制作チーム
創業以来、500社以上の教育機関様の教材制作を支援。
教育・IT・編集のプロフェッショナルが集まる専門チームが記事を監修しています。
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