生活科は「身体性」を軸に本質的意義を再定義する方向へ──幼児教育・中学年以降との接続と教科横断で変わる次期学習指導要領の生活科
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2026年10月5日、中央教育審議会の教育課程部会が「次期学習指導要領等に向けた審議まとめ」を取りまとめました。その第2部「生活」の節は、生活科をAIで代替できない「実感を伴う知」を育み、「深い学び」を実装する人間的な学び方を体得する教科と位置付け、その本質的意義を「身体性」「対象と自分との関わり」「他者と自分との関わり」「自己認識」の4つで整理し直す方向を示しています。
あわせて、幼児教育との接続ではスタートカリキュラムと「架け橋期のカリキュラム」の関係を整理し、生活科を結節点とした年間を通じた教科横断や、中学年以降の社会科・理科・総合的な学習の時間への接続を充実させることも打ち出されました。審議まとめは2026年11月5日までパブリック・コメントにかけられている「案」の段階です。本コラムでは、生活科の節の本文に沿って、何が変わり、何が変わらないのかを整理し、教材づくりへの影響を考えます。
この記事の要点
- 2026年10月5日の審議まとめは、生活科をAIで代替できない「実感を伴う知」を育む教科と位置付け、本質的意義を身体性・対象と自分・他者と自分・自己認識の4つで整理した
- 目標の柱書は「具体的な活動や体験」を「身体性を伴う体験と多様な表現活動」に改め、体験による内化と表現による外化の往還を明確にする方向
- 架け橋期のカリキュラムを5歳児のカリキュラムと小学校1年生のカリキュラム(スタートカリキュラム)の総称とするなど概念を整理し、生活科を結節点に年間を通じた教科横断を促す
- ICTは直接体験を代替しない前提で体験・認識・表現の質を高める手段とし、評価は観点別評価を行いつつ「学びに向かう力」は個人内評価とする方向
現行の生活科の成果と、審議まとめが挙げた課題
現行の目標と3つの内容、前回の見直しの成果
現行の学習指導要領で、生活科は「具体的な活動や体験を通して、身近な生活を自分との関わりで捉え、よりよい生活に向けて思いや願いを実現することで、自立し生活を豊かにすること」を目標とし、学習内容を次の3つに整理しています。
- 児童の生活圏としての環境に関する内容
- 低学年の時期に体験させておきたい活動に関する内容
- 自分自身の生活や成長に関する内容
前回の改訂では、育成する資質・能力の具体化、「見付ける」「比べる」「例える」「試す」「見通す」「工夫する」などの多様な学習活動の重視、他教科等との関連などの見直しが図られ、幼児教育の遊びを通した学びから各教科等のより自覚的な学びへ円滑に移行できるよう、生活科を中心とした合科的・関連的な指導などによる「スタートカリキュラム」を行うことも明示されました。審議まとめは、その成果として、児童の興味・関心を生かし、内容に示された資質・能力を身に付ける授業改善に進捗が見られるとしています。
AI時代の課題:直接体験の減少と、多様な表現の重要性
課題の筆頭に置かれたのは「AI時代に求められる生活科の在り方」です。小学校低学年の児童は、具体的な活動を通して思考するという発達上の特徴があり、試行錯誤したり繰り返したりしながら、対象に何度も関わって身体全体で学びます。
ところが、デジタル技術の進展により、ともすれば仮想空間における活動ばかりが増えてしまいがちです。身近な人々、社会及び自然との関わりをリアルに認識することがこれまで以上に求められているのに、学校内外で直接体験の機会が減少していると審議まとめは指摘しています。インターネットやSNSを通じたバーチャルな情報が溢れる中で、直接体験に加えて、言葉や絵、動作など多様な方法で表現し、気付きの質を高める活動の重要性が高まっているとも述べています。
学びの質・意欲、接続と教科横断、生活科固有の課題
このほか、次のような課題が挙げられました。
- 思いや願いを生かした学習活動は多くの学校で行われているが、それらが「深い学び」につながるイメージがもちにくい
- 学びに主体的に向かえていない児童が一定数おり、「なぜ?」「やってみたい!」という好奇心や探究心を高める学習活動が重要
- 約65%の市町村で幼稚園等と小学校との連携・接続の取組が不十分で、幼児教育での学びが小学校で十分に生かされていない
- 安全面への配慮や時間的制約から地域に出かける活動が減っている
- 中学年以降の社会科や理科、総合的な学習の時間への接続が十分に実現できていない学校もある
- 合科的・関連的な指導が入学当初の時期に限定され、年間を通じた取組になっていない場合が多い
- 飼育活動や地域と関わる活動に、適切な環境確保や継続性などの配慮が必要で、経験やスキルを持つ教師の育成も課題
生活科の「本質的意義」を4つの視点で再定義する

「実感を伴う知」を育む教科として
審議まとめは、生活科を「AIで代替できない『実感を伴う知』を育み、『深い学び』を実装する人間的な学び方を体得する教科」と位置付け、その本質的意義を4つで整理して教育課程を改善するとしています。4つの視点は、目標や見方・考え方の土台にもなっています。
4つの視点の中身
- ① 身体性:見る、聞く、触れる、嗅ぐなどの諸感覚を通して対象を捉え、直接的な関わりによって実感的な認識が得られるようにする。AIを含む仮想空間における情報の受容ではない、「身体で身近な生活を捉える」体験や活動を、自分の外に広がる世界との確かな接点をもつ出発点とする
- ② 対象と自分との関わり:働きかけによって身近な物事の変化を実感し、試行錯誤する中で、「自分が動くと対象となる身近な物事が変わる」という経験が、好奇心や探究心を生み、身近な人々、社会及び自然のよさや特徴に気付くことにつながる
- ③ 他者と自分との関わり:互いの力を出し合う経験を重ねる中で、相手の思いに気付き、受け止め、尊重する態度を育み、他者とともに生活する自分の存在を明らかにする。関わる対象を身近な人から地域・社会へと広げる
- ④ 自己認識:活動を通して「やってみたい」という気持ちが生まれ、自分で考え行動する主体性や自立性を育む。場面や状況に応じて自己調整し、自らの変化や成長に目を向けることで、自分自身のよさや可能性に気付く機会を提供する
情報を受け取るだけならAIや画面越しでも代わりがききますが、自分の身体で対象に働きかけ、その変化を実感する経験は代わりがききません。4つの視点は、生活科がAI時代にこそ担う役割を言葉にしたものと読むことができます。
目標と見方・考え方──「身体性を伴う体験と多様な表現活動」へ
柱書は体験と表現の「往還」を明確に
目標の柱書については、現行の「具体的な活動や体験」を「身体性を伴う体験と多様な表現活動」と改める方向です。これにより、体験を通した内化と、言葉などの多様な表現活動による外化とが往還することを明確にするとしています。身体性を伴う実感的な理解と、表現による認識の高まりを繰り返しながら、抽象的な理解の足掛かりとしていく低学年の特性を生かした学びの充実がねらいです。
資質・能力の柱ごとの目標
「知識及び技能の基礎」については、自分自身、身近な人々、社会及び自然の特徴やよさに気付くことに加え、他者との関わりを通して新たに対象の特徴やよさに気付いたり、個別の気付きが関連付けられたりすることで「深い学び」に向かうなど、身近な生活と自分との関わりに気付くことを目標に位置付けるとしています。
審議まとめは、植物の栽培を例に挙げています。子供は植物に水をやりながらも、水をやると植物が成長するという関係には気付いていないことがあります。しかし、育てていることを言葉や絵などで表現することで、「植物の成長には水が必要である」ことを自覚します。さらに「成長には水などが必要である」という植物と自分との共通点を関連付けることで、植物の成長には必要な条件があることに気付きを深めていく、という道筋です。
「思考力、判断力、表現力等の基礎」では、気付きや実感を基に考えを巡らせる過程を明確に示し、「表現活動」を、発達に相応しい多様な方法で学びを外化・統合する重要な要素として明確にするとしています。「学びに向かう力、人間性等」では、「やってみたい」「してみたい」「不思議だな」と感じて自ら進んで関わろうとすること、他者との関わりの中で活動すること、場面や状況の違いに応じて関わり方を調整することなどの態度を明確化する方向です。
なお、生活科の「知識及び技能」「思考力、判断力、表現力等」の末尾に「の基礎」とあるのは、3つの資質・能力を明確に分けることが困難であるためで、引き続き幼児教育と同様に「の基礎」と示すとしています。
見方・考え方は3つの要素で整理
見方・考え方は、4つの視点を踏まえて次のように整理するとしています。
- 教科で扱う事象や対象:「身近な人々、社会及び自然」
- 教科固有の物事を捉える視点:「自分との関わりで捉える」
- 教科固有の考え方や判断の仕方:「よりよい生活に向けて思いや願いを実現しようとすること」
思いや願いを実現していく過程で体験と表現を往還させながら、他者の思いや願いを尊重し、自立し生活を豊かにしていくことが期待されています。
内容は「3つの階層」を維持し、資質・能力を一文で示す
9項目・3つの階層の整理は引き続き妥当
生活科は、9項目の内容を共通性のあるまとまりごとに3つの階層で表しています。審議まとめはこの整理を引き続き妥当とし、次期学習指導要領で内容のまとまりごとに示す「統合的な理解・総合的な発揮」も、3つの階層ごとに設定するとしています。
- 第1の階層(児童の生活圏としての環境に関する内容):学校、家庭及び地域に関わる中で、自分の生活が支えられていることに気付きを深め、対象に親しみや愛着をもって行動する
- 第2の階層(低学年の時期に体験させておきたい活動に関する内容):身近な人々、社会及び自然に働きかける中で、比べたり試したり工夫したりしながら自分の生活がよりよくなることに気付きを深め、生活を楽しくする
- 第3の階層(自分自身の生活や成長に関する内容):自分の成長を振り返る中で過去・現在を見つめ、未来を見通しながら、他者への感謝や自分のよさ、可能性への気付きを深め、意欲的に生活する
3つの柱に分けず「一文」で書く理由
審議まとめは、各教科では3つの資質・能力を明確に分けて示すことでその確実な育成を図るとしています(学習指導要領の表形式化については学習指導要領が「デジタル」になるを参照)。これに対して生活科の内容の示し方は、並列パターンをイメージしつつ、「知・技」「思・判・表」「学びに向かう力」を一体として一文で記載することとし、3つの柱に分けて内容を示さない現行の方針を継続するとしています。
理由として審議まとめは、内容を3つの柱ごとに分節して示すと、それぞれの育成を主眼とした学習活動が構成されやすくなり、「気付き、考え、行為することが連続して次の生活へとつながっていく」という生活科の学びの過程が位置付けられにくくなる恐れがある、と説明しています。その結果、生活科固有の学びが形骸化しかねないという懸念です。「統合的な理解・総合的な発揮」も、個別の資質・能力の集合体として一文で記載する方向で、具体的な示し方は告示に向けて文部科学省で検討するとされています。具体的な内容の改善については、本質的意義を踏まえて必要に応じて見直しを検討するとしています。
内容(1)〜(9)を固定的・均等に扱わない
教育課程の編成については、内容(1)〜(9)を固定的・均等に扱うのではなく、児童や地域、学校の実態に応じて各学校が創意工夫を生かすことが重要だとしています。義務教育段階で創設が示された調整授業時数制度(概要は授業時数「最大15%削減」へ)の活用を踏まえ、複数の内容を組み合わせた単元構想、単元と単元のつながりを意識したストーリー性、2年間を見通した学習活動などによって、必要以上に内容が重なることなく、効率よく学習を進める工夫が考えられるとしています。
幼児教育・中学年以降との接続と、教科横断

活動だけでなく「資質・能力」でつなぐ
審議まとめは、幼児教育、中学年以降との接続、各教科等との関連を図る際には、活動や対象でつながりを考えるだけでなく、資質・能力の関連で捉えることが重要だとしています。
幼児教育との接続:架け橋期のカリキュラムとスタートカリキュラムを整理
幼児教育との接続では、幼児期の遊びを通した体験を生かした小学校のカリキュラムを編成することが重要だとし、学校現場がそのまま活用できる多様なモデルを国として示すとともに、それに留まらない多様で豊かな実践を支援する方向です。具体的には次の3点が挙げられています。
- 関係性の見直し:スタートカリキュラムは各学校で作成を求める一方、架け橋期のカリキュラムは全ての学校に求めていないため、両者の関係が分かりにくい。そこで、架け橋期のカリキュラムを、幼児教育施設における5歳児のカリキュラムと、小学校における1年生のカリキュラム(スタートカリキュラム)の総称として位置付けるなど、概念を整理する
- スタートカリキュラムの理解・運用の促進:対象とする時期は学校や児童の実態に応じて柔軟に設定可能であることを明確化し、様々な実施形態を例示する。合科的・関連的な指導や弾力的な時間割の工夫の事例、編成の視点を示し、質の高い授業や生活場面を動画などで発信して研修に活用する
- 学校全体で取り組む体制づくり:校内での接続を推進する担当者を校務分掌に位置付けたり、架け橋期のコーディネーターを活用したりする。合同研修や保育・授業参観を充実し、幼児教育で育まれた資質・能力について関係者が対話するための資料(「対話のための資料」)を活用する
審議まとめの総則の項でも、スタートカリキュラムを入学当初の短期的な指導計画にとどめず、年間を見通したものとして作成する方向が示されています。生活科の節でも、調整授業時数制度を活用して、児童の実態や学校の特色を生かしたスタートカリキュラムを編成・充実していくことも考えられるとしています。
教科横断:生活科を結節点に、年間を通じて「見える化」
教科横断については、生活科を結節点として、各教科等との関連をスタートカリキュラムや年間指導計画に明確に位置付け、1年間を見通した合科的・関連的な指導を計画的に実施するよう促すとしています。入学当初に限られがちだった取組を、年間に広げる方向です。
また、生活科の活動ごとに、活用・発揮される各教科等の資質・能力を整理し、指導の意図を明確にした単元設計を促すとしています。審議まとめには、そのイメージとして国語・算数・図画工作との次のような対応が示されています。
- 見つける:国語「言葉に着目する」/算数「数・量で捉える」/図画工作「形や色で捉える」
- 話す・聞く:国語「伝え合う」/算数「比べて説明する」/図画工作「イメージを共有する」
- 作る:国語「順序立てて説明する」/算数「数や形を活用する」/図画工作「想像しながら表現する」
中学年以降との接続:社会科・理科・総合的な学習の時間へ
中学年以降との接続については、解説の記載を充実し、実践事例などで示すことを検討するとしています。示された方向は次の3つです。
- 身体性を伴う体験を通して得られた気付きや実感が、中学年以降の教科等の学びの基盤となることを意識した指導
- 多様な表現によって気付きの質を高めることを通して言葉による認識を促し、中学年以降の教科等へ発展する学びの接続を意識した指導(例:多様な表現から言葉による認識への移行を意識した指導計画の工夫)
- 社会科や理科の内容の単なる先取りではなく、生活科の学習過程の中で社会科、理科、総合的な学習の時間への接続を意識し、社会認識、自然認識、自己認識の形成につなげる指導
身体性を伴う体験活動、動物飼育、地域との連携
体験活動をより一層充実させるための6つの留意点
審議まとめは、身体性を伴う体験活動は興味・関心を広げ、新たな対象との出会いを生み出すもので、そこで生まれる驚きや感動が次の活動への思いや願いを高めるとしています。そのうえで、体験活動を一層充実する際の留意点として次の6つを示しています。
- 体験できる時間や場を十分に確保すること
- 思いや願いをもって対象へ働きかけられるようにすること
- 体験と表現の往還によって気付きの質を高めること
- 試す・比べる・工夫するなどの学習活動を位置付けること
- 一人で没頭したり、友達や大人と一緒に活動したりするよさを踏まえること
- 日常と非日常のそれぞれの体験のよさを踏まえること
動物飼育は「学校での飼育」を基本に、柔軟な運用を明確化
学校での動物飼育は、生き物への親しみと生命の尊さを実感的に理解する重要な学習活動であり、特にAI時代においては身体性を伴う体験として引き続き重要だとされました。一方で、休日等を含む管理体制、獣医師等の専門家との連携、教職員に過度な負担が生じない配慮など、様々な観点からの配慮が必要だとしています。
そこで、学校で飼育することを基本としつつ、飼育の意義を達成できると見込まれる次のような場合は、学校での飼育と同等の扱いであることを明確化する方向です。
- 他の所有者から借用して飼育を行うこと(ホスティング)
- 適切な飼育環境の確保が困難な場合に、近隣の動物関連施設や民間の団体等が保有する動物に、児童が継続的に触れ合う機会を設けること
あわせて、飼育する動物は現行と同様に魚や昆虫など、哺乳類や鳥類に限らない旨を明確化し、好事例の共有と教師用手引きの見直しを行うとしています。
外部人材・地域との連携は「繰り返し関わる関係」に
外部人材や地域との連携については、教職員の過度な負担が生じないよう配慮しつつ、次の取組を促すとしています。
- 継続的な連携体制:単発の体験ではなく、年間指導計画に同一の人材・施設との複数回の関わりを位置付け、再訪・再交流の機会を設定する
- 準備時間の確保・調整の仕組み:簡易な共有シート(ねらい/活動内容/子供の実態/留意点)で事前打合せを標準化し、連携担当を明確にする
- 組織的な連携体制:次年度への引継ぎを組織的に進め、設置者は地域人材・施設のリスト化・データベース化などで各学校を支援する
ICTは直接体験を代替せず、体験・認識・表現の質を高める

前提は「代替しない」こと
生活科におけるICT活用は、身体性を伴う体験をより一層豊かにしていくものであり、直接体験を代替するものではないことを前提としたうえで、体験・認識・表現の質を高めるための補助・促進する手段と位置付けるとしています。例として、AI要約を含む検索機能などを活用して事前に情報を調べたうえで対象に関わったり、体験をして感じたことや不思議に思ったことをICTで調べたり振り返ったりすることが挙げられています(各教科とAIの関係は全教科の学習指導要領に「AI」が入るを参照)。
3つの「質」を高める
- 体験の質:諸感覚を働かせながら撮影・記録を何度も体験し、拡大したり様々な視点で観察したりして、改めて対象との関わりを深める(特に繰り返しの体験が重要)
- 認識の質:画像や動画で対象を比較したり捉え直したりして言語化し、対話によって考えを巡らせる。自分の記録をその後の学習に活用し、自分の変容や成長を振り返る
- 表現の質:音声や画像で簡便に、もしくは精緻に表現したり、思いや願いをもって交流したりする
さらにICTを、幼児教育から総合的な学習の時間へと連なる学習の質の高まりを促進する学習基盤として位置付けるとしています。
学習評価──観点別評価を行い、「学びに向かう力」は個人内評価に
内容は一体で示し、評価は観点別に
生活科は3つの資質・能力を一体的に育成する点に特質があるため、内容は一文で示す方向です。一方で学習評価については、生活科が教科として位置付けられ、その学びが社会科及び理科の土台となる性質を有していること、一文の中にも「知・技」「思・判・表」「学びに向かう力」に関する内容が明確に規定されていることを踏まえ、他教科等と同様に観点別評価を行うとしています。その際、一人一人のよさや成長を見取ることを基本とし、幼児教育や総合的な学習の時間の学びとの継続性を踏まえることにも留意が必要です。単元ごとの評価は形成的評価を中心に行い、年度末・学期末などに総括的な評価を行うよう促すとしています。
「学びに向かう力」は総合所見欄へ、「思・判・表」に「◯」
審議まとめ全体では、「主体的に学習に取り組む態度」を教科ごとにABCで評価する仕組みを改め、総合所見欄での個人内評価と、思考・判断・表現の評価への「◯」の付記を組み合わせる方向が示されています。生活科でも、「学びに向かう力」は学習過程全体を通じた一人一人のよさ、変化や成長を丁寧に見取る個人内評価とし、単元ごとに「見取る姿」を参考にして見取り、総合所見欄等に反映する方向です。思考・判断・表現の過程で「見取る姿」に示す行動の「継続的な発揮」を見取ることができた場合には、「思・判・表」に「◯」を付すことで評価するとしています。
生活科の「見取る姿」は改訂後に具体的に検討するとしつつ、検討すべき事項として「思いや願いをもった働きかけ」「他者との伝え合いや協働」「試行錯誤や自己調整」の3つが挙げられています。
教材づくりへの影響
体験と表現の「往還」を支える教材
目標の柱書に「多様な表現活動」が入る方向であることから、体験したことを言葉や絵、動作などで表し、気付きを自覚につなげる手立てがこれまで以上に重視されると考えられます。植物の栽培の例が示すように、表現することで気付きが関連付けられていく過程を支えるワークシートや観察カード、振り返りの記録などは、体験の「おまけ」ではなく学びの中心に位置付く教材になりそうです。多様な表現から言葉による認識への移行を意識した段階的な設計も問われるでしょう。
教科横断・接続を見通せる単元設計の資料
各教科等の資質・能力を整理した単元設計、年間を見通した合科的・関連的な指導計画、スタートカリキュラムの実施形態などは、国のモデルとして示す方向や、実践事例などで示すことの検討が打ち出されています。学校現場では、それらを自校の実態に合わせて使える形にした指導計画例や事例集、教師向けの解説資料の需要が高まると考えられます。内容(1)〜(9)を固定的・均等に扱わず、複数の内容を組み合わせた単元や2年間を見通した構成を想定することも、教材の章立てに影響しそうです。
ICTは「記録と振り返り」の道具として
審議まとめが示したICT活用は、撮影・記録の繰り返しや振り返りなど、直接体験を前提にその質を高めるものです。体験を画面で置き換えるデジタル教材ではなく、子供が自分で記録を積み重ね、後から見返して気付きを深められる仕組みが求められると考えられます。評価で「見取る姿」の継続的な発揮を見取るうえでも、こうした記録は手掛かりになりそうです。
改訂までのスケジュール
審議まとめは2026年11月5日までパブリック・コメント(意見公募)にかけられ、2026年度冬頃の答申、2026年度末の小・中学校の改訂告示へと進む予定です。全面実施は、小学校が2030年度からの見込みです。改訂全体の日程は次期学習指導要領・教科書改訂スケジュールにまとめています。
よくある質問(FAQ)
生活科でいう「身体性」とは何ですか?
審議まとめは、見る、聞く、触れる、嗅ぐなどの諸感覚を通して対象を捉え、直接的な関わりによって実感的な認識が得られるようにすることと説明しています。AIを含む仮想空間における情報の受容ではない、「身体で身近な生活を捉える」体験や活動を、自分の外に広がる世界との確かな接点をもつ出発点とする、という考え方です。
スタートカリキュラムはどう変わりますか?
架け橋期のカリキュラムを、5歳児のカリキュラムと小学校1年生のカリキュラム(スタートカリキュラム)の総称として位置付けるなど、概念を整理する方向です。対象とする時期を柔軟に設定できることを明確化し、国が多様なモデルを示すとしています。
学校で動物を飼えない場合はどうなりますか?
学校での飼育を基本としつつ、他の所有者から借用して飼育するホスティングや、近隣の動物関連施設・民間の団体等が保有する動物に児童が継続的に触れ合う機会を設けることを、学校での飼育と同等の扱いとすることを明確化する方向です。飼育する動物は、魚や昆虫など哺乳類や鳥類に限らない旨も明確化するとしています。
生活科ではICTやAIを使わないのですか?
使わないわけではありません。ICTは直接体験を代替するものではないことを前提に、体験・認識・表現の質を高めるための補助・促進する手段と位置付けられています。AI要約を含む検索機能などで事前に調べてから対象に関わる活用も例示されています。
いつから変わりますか?
次期学習指導要領の全面実施にあわせ、小学校は2030年度からの見込みです。現在は審議まとめの段階で、2026年11月5日までパブリック・コメントにかけられており、答申は2026年度冬頃、小・中学校の改訂告示は2026年度末の予定です。
まとめ
次期学習指導要領の生活科で示されたのは、AI時代だからこそ「身体で対象と関わり、実感を伴って知る」学びを教科の核に据え直す方向です。本質的意義を4つの視点で整理し、目標の柱書を「身体性を伴う体験と多様な表現活動」に改める。3つの階層の整理と、資質・能力を一文で示す方針は維持する。幼児教育とはスタートカリキュラムを軸につなぎ、生活科を結節点に年間を通じた教科横断を進め、中学年以降の社会科・理科・総合的な学習の時間へ、先取りではない形で学びを手渡していく──審議まとめが描いているのは、低学年の学び全体の土台としての生活科です。
体験と表現の往還や教科横断が重視されるほど、教材には「体験の中で何に気付かせ、どう表現させ、次の学びにどうつなぐか」を見通した設計が求められます。エデュコンは、教材・テキスト制作でワークシートや指導資料の構成から執筆までを承っています。小学校向け教材制作のご相談も含め、次期学習指導要領に向けた生活科の教材づくりについて、お気軽にご相談ください。
この記事を書いた人 / 監修
エデュコン教材制作チーム
創業以来、500社以上の教育機関様の教材制作を支援。
教育・IT・編集のプロフェッショナルが集まる専門チームが記事を監修しています。
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