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コラム

音楽・図画工作・美術は思いを形にする過程を一体で示す方向へ──高校芸術科の見直しも含めて読む次期学習指導要領の芸術系教科

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「音楽・図工・美術はこう変わる」「思いを形にする過程を一体で示す方向へ」。絵筆を添えたパレットと音符をあしらったバナー

2026年10月5日、中央教育審議会の教育課程部会が「次期学習指導要領等に向けた審議まとめ」を取りまとめました。その第2部「芸術」の節は、小学校の音楽・図画工作、中学校の音楽・美術、高等学校の芸術科(音楽・美術・工芸・書道)をまとめて扱い、自分の思いや考えをもつことと、諸感覚を働かせつつ身体性を伴った技能により表現することを「一連の過程」として重視する方向を示しています。小学校音楽の「歌唱」と「器楽」を「歌唱・器楽」の区分にまとめることや、高等学校芸術科で芸術そのものについて学ぶ機会を設けることも盛り込まれました。

審議まとめは2026年11月5日までパブリック・コメントにかけられている「案」の段階です。本コラムでは、芸術の節の本文に沿って、芸術系教科・科目に共通する方向と、音楽、図画工作・美術・工芸、書道のそれぞれに書き分けられている点を区別しながら整理し、教材づくりへの影響を考えます。

この記事の要点

  • 2026年10月5日の審議まとめは、思いや考えをもつことと身体性を伴った技能で表現することを一連の過程として重視し、その過程を「思考力、判断力、表現力等」として示す方向を打ち出した
  • 見方・考え方は音楽/図画工作・美術・工芸/書道の系統ごとに小・中・高で文言を統一し、内容は「表現」「鑑賞」の2領域で整理。小学校音楽は「歌唱・器楽」と「音楽づくり」で整理する方向
  • 高等学校芸術科では、Ⅰを付した科目の導入段階で芸術の全体像を捉える機会、まとめの段階で芸術分野に関わる探究的な学習を設けるなど、芸術そのものについて学ぶ機会を設ける方向
  • 区分の統合や具体性の高い記述の精査で内容を精選し、生成AIは表現する過程を安易に委ねず、ツールとして適切に用いることが重要とされた

現行の芸術系教科の成果と、見えてきた課題

授業改善の取組は着実に進んでいる

現行の学習指導要領は、表現及び鑑賞の活動を通じて、表現及び鑑賞の基礎的な能力、芸術を愛好する心情や芸術に関する感性、豊かな情操などを育てることとし、特に身体を通して、知性と感性を融合させながら対象や事象を捉えていくことを重視してきました。審議まとめは、資質・能力の育成を意識した授業改善の取組が着実に進んでいるとし、その例を教科ごとに挙げています。

- 音楽:音楽を聴いて捉えた特徴を理解したり、音楽を形づくっている要素と関わらせて言葉で表したりする指導
- 図画工作・美術・工芸:感性や想像力を働かせ、造形的な視点を豊かにもち、表現と鑑賞の資質・能力を相互に関連させる指導
- 書道:生活や社会における書の目的や用途と表現効果や風趣との関わりを考え、書を生活や社会の中でどう生かすかを考えたり判断したりする指導

学ぶ意義が十分に実感されていない

一方で、正解のない問いに対処できる力や、人間の本来的な能力としての身体性を伴った技能の育成が一層求められているのに対し、芸術系教科・科目を学ぶ意義を児童生徒が十分に実感できている状況には至っていないと考えられる、と指摘しています。

学習指導要領実施状況調査の結果などから挙げられた課題は、教科ごとに異なります。

- 音楽:表現を工夫する場面で、思いや意図(表現意図)を言語化することにとどまり、それを音楽で表現するための技能の習得が一体的に行われていない。中・高の鑑賞では、考えたことを根拠にしながら音楽のよさや美しさを味わって聴くことに課題がある
- 図画工作・美術・工芸:発想や構想をする段階を「思考力、判断力、表現力等」、材料や用具を使い工夫して表す段階を「技能」と位置付けているが、両者は連続している場合が多く、違いが分かりにくい。作品だけでなく過程を重視した指導への改善も課題
- 書道:表現に係る資質・能力について、「知識及び技能」と「思考力、判断力、表現力等」との関係が不明瞭で、学びの深まりを捉えにくい。古典や名筆、名品を鑑賞する機会の充実と、鑑賞で身に付けた力を表現に関連付けることにも課題がある

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目標と見方・考え方──思いや考えを身体を用いて具現化する一連の過程に

改善の5つの基本的な方向性

芸術系教科・科目の改善の基本的な方向性として、次の5つが示されました。

- 捉えたり感じたりしたことを、要素や特徴(音楽を形づくっている要素、造形的な特徴、書を構成する要素など)や背景にある文化などとの関わりで理解し、思考、判断、表現できるようにする
- 自分の思いや考えをもつことと、諸感覚を働かせつつ身体性を伴った技能により表現することを、一連の過程として重視する
- 心が動く体験を大切にし、唯一の答えに導くのではなく、児童生徒一人一人のありようが尊重されるようにする
- 伝え合う言語活動や協働的な学習を通じて、感じ方や考え方を深められるようにする
- 生活や社会の中の芸術や芸術文化と関わり、意味や価値を見いだしたりつくりだしたりすることを重視する

目標の趣旨は維持、「学びに向かう力」を見直す

目標の柱書は、表現及び鑑賞の活動(義務教育段階)や芸術の幅広い活動(高等学校段階)を固有の学習過程とし、現行の目標に示されている趣旨は引き続き重要だとしました。「学びに向かう力」は、自ら進んで対象や事象と関わり、他者と協働して活動に取り組むことや、よりよい社会や幸福な人生につなげていくことを重視するとしています。

高等学校芸術科の教科目標では、社会における芸術分野との関連を重視することや、作品のメッセージ性や文化的・歴史的意義や価値、社会への影響力などを意識できるようにすることが示されています。

表現するプロセス全体を「思考力、判断力、表現力等」に

資質・能力の整理では、自分の思いや考えをもつことと、それを基に身体を用いて表現することとが一連の流れとして捉えにくい点が課題とされました。そこで、「知識及び技能」の習得と「思考力、判断力、表現力等」の育成を往還させ、技能は変化する状況などに応じて主体的に活用できる技能として習熟・熟達していくことを重視するとしています。教科ごとの示し方は次のとおりです。

- 音楽:習得した技能を生かして工夫して表現するプロセス全体を一体的に示す
- 図画工作・美術・工芸:発想や構想をし、工夫して表現するまでのつながりを重視し、その過程を示す
- 書道:構想・工夫して表現するプロセス全体を一体的に示す

いずれも「思考力、判断力、表現力等」として示すもので、前の節で見た音楽、図画工作・美術・工芸、書道の課題に対応する整理だと考えられます。

見方・考え方は系統ごとに小・中・高で文言を統一

見方・考え方は、教師と児童生徒が卒業後までを視野に入れて共通の認識をもてるよう、教科の系統(音楽/図画工作・美術・工芸/書道)ごとに、小・中・高等学校を通して文言を統一する方向です。整理に当たっては、知性と一体化して創造性の根幹をなす「感性」を共通して重視し、感性や想像力を働かせることを示すこと、物事を捉える視点に文化に関する視点を共通に含めること、考え方や判断の仕方として意味や価値を追求することを示すことが挙げられています。

「表現」「鑑賞」の2領域と区分で内容を整理する

芸術系教科の内容を表現と鑑賞の2つの領域で整理し、小学校音楽は歌唱・器楽と音楽づくり、小学校図画工作は自分と材料や場所・自分と表したいこと、中学校美術は自分と美術・生活や社会と美術を区分の例として示す

2つの領域と、教科ごとの区分

内容は活動に即して「表現」及び「鑑賞」の2つの領域に整理し、音楽、図画工作、美術、工芸では、教師が想定しやすい内容のまとまりとして「区分」を設ける方向です。

音楽は、従前の分野を踏襲しつつ、背景学問の系統を基に整理します。小学校では、歌唱と器楽で同じ曲を扱う場合に、学習のねらいを焦点化した指導や評価が行われにくいという課題があるため、表現領域を「歌唱・器楽」及び「音楽づくり」により整理するとしました。中学校・高等学校は、専門性の高まりを踏まえて整理するとしています。

図画工作・美術・工芸では、表現や鑑賞の活動自体が目的化し、育成を目指す資質・能力が必ずしも明確でない指導が見られるという課題から、学びの方向性を明確にする観点で整理します。例として示されたのは、小学校図画工作の「自分と材料や場所」「自分と表したいこと」、中学校美術の「自分と美術」「生活や社会と美術」などです。

「並行パターン」で構造化する

学習指導要領の表形式化では、芸術系教科・科目は「並行パターン」で構造化する方向です。思いや考えをもち、「知識及び技能」を活用して表現したり鑑賞したりする過程を往還しながら資質・能力が育成されるという特徴が、「知識及び技能」が全体として「思考力、判断力、表現力等」の深まりを支える構造に近いことと、活動を繰り返しながら発達の段階に応じて系統的に学ぶことが理由とされています。学習指導要領の示し方そのものの変化は、学習指導要領が「デジタル」になるでも紹介しています。

「統合的な理解・総合的な発揮」の示し方

内容のまとまりごとに資質・能力の獲得や発揮の方向性を示す「統合的な理解・総合的な発揮」は、小・中学校では学校段階ごとに、高等学校では音楽、美術、工芸、書道の各系統で、それぞれのⅠ、Ⅱ、Ⅲに共通して示す方向です。整理の考え方として、音楽では思いや意図をもって表現するために必要な身体の使い方などの技能を身に付けられるようにすること、図画工作・美術・工芸では「知識及び技能」を実感的に身に付け、場面や状況が変わっても働かせられるようにすること、書道では線質を追求したり、空間を捉えたり、呼吸を感じ取ったりするなど、身体機能や感覚を駆使して自在に活用できるようにすることなどが挙げられています。具体的な示し方は、告示に向けて文部科学省で検討するとされています。

音楽、図画工作・美術・工芸、書道の内容はどう変わるか

内容の改善では、芸術系教科・科目に共通して、表現する過程を一連のものとして捉えられるよう「思考力、判断力、表現力等」を整理し、知識は感性などを働かせて感じ取りながら考えることにつながるもの、技能は諸感覚を働かせつつ身体性を伴って表現したり鑑賞したりすることにつながるものとして整理する方向です。そのうえで、教科ごとに次の改善が示されています。

音楽

- 〔共通事項〕の資質・能力における位置付けや文言を再整理する
- 知識と技能の関係性を明確にし、統合して一文で示す
- 歌唱や器楽で、様々な歌い方や楽器に適応できる技能として身体の使い方を重視する
- 音楽づくり/創作について、小・中・高の系統性を明確にする
- 小学校では、具体性の高い記述(ハ長調・イ短調など)について、内容の取扱いへの移行を検討する

図画工作・美術・工芸

- 〔共通事項〕に造形の働きや美術の働き、美術文化、工芸の伝統と文化に関する事項を示す
- 表現では、材料や用具の特徴を生かして使うことや、表現方法を追求することを示す
- 鑑賞では、美術作品などから特徴を見付けだしたり情報を読み取ったりする鑑賞に関する技能を示す
- デジタル学習基盤を効果的に活用して発想や構想をしたり技能を働かせたりすることについて整理する
- 高等学校(芸術科美術、専門教科美術)では、多様なメディアと関わらせて発想や構想をすることや、メディア機器などの特性を生かす技能を示す

書道

- 書の表現性を重視し、自らの感興や表現の意図に基づいて、効果的、創造的に表現することを示す。書の表現性とは、「線質」「字形」「構成」などの複合的な働きにより生じる「変化」「律動」「性情」などを指します
- 鑑賞では、作品や書などから読み取った情報を精査するなどの鑑賞に関する技能を示す
- 〔共通事項〕で書を構成する要素などの働きを示す

図画工作・美術・工芸と書道のいずれにも「鑑賞に関する技能」を示す記述があることから、鑑賞を感想にとどめず、技能として育てる方向が読み取れます。

高等学校芸術科は「芸術そのもの」を学ぶ機会を設ける方向

高等学校芸術科の見直し。音楽・美術・工芸・書道から科目を選んで学ぶ中で、Ⅰを付した科目の導入段階で芸術の全体像を捉え、まとめの段階で芸術分野に関わる探究的な学習を行い、生活や社会の中の芸術と生涯にわたり関わる

科目の専門に閉じがちという課題

高等学校芸術科は、音楽、美術、工芸、書道の中から科目を選択して履修します。審議まとめは、その学習内容が科目の専門に関する内容となっており、教科目標として目指す芸術との関わりが意識されにくいと指摘しました。卒業後に社会との関わりが一層大きくなる高等学校段階でこそ、身近にある芸術、最新の技術と芸術の関係、芸術と社会の関係、個人と芸術の関係など、芸術との関連を意識した学びが重要だとしています。

導入段階とまとめの段階に、芸術についての学びを

そこで、各科目の学びと芸術についての学びとを関連付け、生涯にわたり生活や社会の中の芸術や芸術文化と豊かに関わっていけるよう、次の改善を図るとしています。

- Ⅰを付した科目(選択必履修科目)の導入段階で、小・中学校での学びを踏まえ、芸術の全体像を捉えたり、学ぶことの意味や価値などについて考えたりする機会を設定する
- 科目のまとめの段階などで、芸術分野に関わる探究的な学習を設定するなど、各科目で身に付けた資質・能力をもとに芸術の意味や価値を追求する

芸術の意味や価値を追求する際には、自分や社会にとって芸術がどのような関わりをもつのかを重視するとしています。

現行単位が前提なら、必履修の芸術科目は減単不可

審議まとめの総論では、高等学校の単位の計算を細分化し、50分×17コマを1「新単位」とする方向が示されています。必履修科目の単位数を標準より減らす「減単」を一定の限度で認める一方、各必履修教科の科目の合計が3新単位以下となる減単は不可とし、現行の単位数を前提にすれば、芸術(音楽Ⅰ・美術Ⅰ・工芸Ⅰ・書道Ⅰのいずれか)は公共、情報Ⅰ、家庭基礎と並んで減単できない科目に当たると整理されています。

伝統と文化、メディア芸術や舞台芸術などの多様な芸術の学び

伝統と文化の意義を実感できるように

我が国や郷土の伝統や文化に対する児童生徒の興味・関心には一定の成果が見られる一方、否定的な回答の割合も3割程度あるとされました。改善の方向として、伝統や文化がもつ意味や価値の追求を通して「深い学び」を実現すること、見方・考え方で「文化」という視点や「意味や価値を見いだすこと」を明確化すること、我が国の文化の理解を多様な文化の理解や多様性の尊重につなげること、小学校中学年までは生活と一体化し、高学年以降は徐々に客観的に捉えられるようになる発達の段階を踏まえることが示されています。地域社会や文化施設、専門的な人材などとの連携・協働の充実も挙げられました。

マンガ、ゲーム、演劇、舞踊なども学びの入口に

多様な芸術や文化とは、文化芸術基本法第8条から第12条までに示される、芸術、メディア芸術(映画、漫画、アニメーション及びコンピュータ等を利用した芸術)、伝統芸能、芸能などを含むものです。マンガ、ゲーム、演劇、舞踊などは児童生徒にとって身近で興味・関心をもちやすく、生活や社会の中の芸術との関わりを考える契機にしやすいものだとしています。芸術系教科・科目に例示された視点は次のとおりです。

- 音楽:表した音楽などの学習の成果を、舞台芸術や多様なメディアと組み合わせたり、デジタル学習基盤を活用して発表・発信したりする機会の充実
- 図画工作・美術・工芸:漫画、アニメーション、映像などの多様なメディアによる創造的な表現や鑑賞の学習を発達の段階に応じて充実させ、発表や展示の機会を拡充
- 書道:表現の過程における時間性や運動性などの特質を、異なる表現形式の芸術などと組み合わせた総合的な表現の中で生かしたり、多様なメディアの機能を生かして表現・発表・展示したりする機会の充実

メディア芸術に関わる学習では、特別なソフトウェアを利用しなくても、撮影・記録、描画・加工などの基本機能を用いて端末を有効活用した実践が進められることが望まれる、とも書かれています。

内容の精選と、教科書に期待される工夫

芸術系教科の内容の精選。音楽は小学校で歌唱・器楽に統合、図画工作・美術・工芸は題材間の技能を関連付けて重点化、書道は書を構成する要素の働きを共通事項で示し、授業のねらいや実態に応じた柔軟な指導につなげる

既習の内容を全て扱うのではなく

芸術系教科・科目は、題材や単元に取り組むことを繰り返しながら資質・能力の定着を図ることに特性があるとされています。指導計画の作成では、既習の内容を全て扱うのではなく、目標の達成に支障のない範囲で精選するなど、題材や単元の構成を工夫できることを考慮しつつ、内容を精査する必要があるとしました。第1部でも、芸術は複数の区分の統合や指導内容の重点化、具体性の高い記述の精査などにより学習内容を見直し・精選するとまとめられています。

教科ごとの精選

- 音楽:小学校では「歌唱」と「器楽」を「歌唱・器楽」の区分として統合し、事項を精査する。中学校・高等学校の「鑑賞」では、内容の取扱いと重複している記載を整理する。具体性の高い記述は精査し、内容の取扱いに移行するなどする
- 図画工作・美術・工芸:育成する技能を、各区分に共通する材料や用具、表現方法や、鑑賞の仕方などを考慮して示し、題材間の技能を相互に関連付けて指導内容を重点化できるようにする。中学校では、具体性の高い記述を内容の取扱いに移行するなどする
- 書道:表現の各分野(漢字仮名交じりの書、漢字の書、仮名の書)と鑑賞の事項で字形、全体の構成などを具体的に示していたものを、〔共通事項〕で書を構成する要素などの働き・関係として精査する

いずれも、授業のねらいや実態に応じた柔軟で効果的な指導ができるようにするための改善とされています。

教科書は「教師が読み取りやすい構成」に

教科書には、掲載されている教材などの中から教師が適切に選択したり参考にしたりして指導できる、読み取りやすい構成が期待されています。例示された工夫は、音楽では小学校で一つの教材を歌唱または器楽、さらには合唱奏で扱うなど様々な学習活動ができるようにすること、図画工作・美術・工芸・書道では造形的な特徴や書を構成する要素などを手掛かりに能動的に鑑賞し、表現と鑑賞の往還を促すこと、高等学校芸術科のⅠを付した科目では芸術そのものについて考えることと各科目の学びとを関連させられるようにすることです。

地域・他教科との連携、デジタル学習基盤、評価──授業づくりの方向

地域・文化施設や他教科との連携

美術館などでの鑑賞活動や外部人材との連携を通して本物に触れることは、豊かな感性や想像力の育成に資するとされています。ところが、外部の人の協力や学校外の施設を活用した授業は、芸術系教科・科目の調査で小・中・高等学校を通して教師の肯定的な回答が半数に満たない実施状況でした。学校から地域への一方的な依存となっている連携も見受けられ、学校が自律性をもち、資質・能力の育成と適切に関連付けることが課題とされています。

他教科等との連携は、想像力や試行錯誤する力などを育てる場面となり得るとされ、STEAM教育の考え方にも通じると位置付けられました。育成を目指す資質・能力について関係教科等の教師間で共通理解を図ることが求められています。

生成AIは「表現する過程を安易に委ねない」

1人1台端末の整備で芸術系教科・科目でもデジタル学習基盤を活用した取組が行われていますが、身体などを用いた表現活動との調和を図りながら深い学びにつなげることに課題が見られるとされました。改善の方向は次のとおりです。

- デジタル学習基盤の活用には生成AIを含むが、表現する過程などを安易に生成AIに委ねることは適切ではない。人間ならではの感性や身体性を基盤とする創造的な表現を重視し、ツールとして適切に用いることが重要
- 鑑賞での作品の比較、意見共有、遠隔での交流や、表現の過程での試行錯誤や記録・保存など、デジタル学習基盤の特性を生かした活用が望まれる
- 芸術に関する様々なコンテンツに接する機会が多いことを踏まえ、発達の段階に応じて知的財産の保護と活用などに関する指導を充実する

各教科とAIの関係は全教科の学習指導要領に「AI」が入るでも整理しています。

学習評価は「過程の中で」「まとめて」も可能に

学習評価では、短時間の題材や単元で3つの柱全てを評価しようとして記録に残す総括的評価が優先される実態や、制作の過程での評価が難しく完成作品だけから評価している現状などが課題とされました。改善の方向として、複数の題材や単元、区分でまとめて総括的評価を行うことも可能であることを促すこと、形成的評価を重視すること、「思考・判断・表現」は歌唱や演奏、作品づくりなどの学習の過程の中で児童生徒の姿を捉えること、他者との比較ではなく肯定的に評価できるようにすることが示されています。

審議まとめ全体では、「主体的に学習に取り組む態度」を教科ごとにABCで評価する仕組みを改め、総合所見欄での個人内評価と、思考・判断・表現の評価への「◯」の付記を組み合わせる方向が示されています。

教材づくりへの影響

「完成作品」より「過程」を支える教材へ

表現するプロセス全体を「思考力、判断力、表現力等」として示し、その過程の中で評価する方向です。完成した作品や演奏の出来だけを扱う教材より、思いや意図、発想や構想、試行錯誤を記録しながら表現を深めていく流れを支えるワークシートや題材集の比重が高まっていくと考えられます。

鑑賞の「技能」を育てる教材

図画工作・美術・工芸と書道で、鑑賞に関する技能を示す方向が打ち出されています。作品から特徴を見付けだしたり情報を読み取ったりし、根拠をもって考えを伝え合う手順を示した鑑賞教材や、表現と鑑賞を往還させる題材の設計がこれまで以上に問われるでしょう。

柔軟に組み替えられる構成と、高校芸術Ⅰの導入・まとめ

一つの教材を様々な学習活動で扱えるようにすることや、具体性の高い記述を内容の取扱いに移すことは、教材にも授業のねらいや実態に応じて選び、組み替えられる構成を求めるものだと考えられます。高等学校芸術科のⅠを付した科目では、芸術と社会や技術との関係を扱う導入教材や、探究的な学習の手引きの需要が考えられます。多様なメディアを扱う題材では、知的財産の保護と活用の観点を組み込むことや、端末の基本機能で取り組める設計が審議まとめの趣旨に沿うでしょう。

改訂までのスケジュール

審議まとめは2026年11月5日までパブリック・コメント(意見公募)にかけられ、2026年度冬頃の答申、2026年度末の小・中学校の改訂告示へと進む予定です。全面実施は小学校が2030年度、中学校が2031年度から、高等学校は2032年度入学生からの見込みです。改訂全体の日程は次期学習指導要領・教科書改訂スケジュールにまとめています。

よくある質問(FAQ)

小学校の音楽で「歌唱」と「器楽」はどうなりますか?

表現領域を「歌唱・器楽」及び「音楽づくり」により整理する方向です。歌唱と器楽で同じ曲を扱う場合に学習のねらいを焦点化した指導や評価が行われにくいという課題を踏まえ、歌唱と器楽に共通する資質・能力を統合して示し、柔軟で効果的な指導ができるようにするとしています。

図画工作や美術の授業で生成AIは使えるのですか?

審議まとめは、デジタル学習基盤の活用には生成AIを含むとしたうえで、表現する過程などを安易に生成AIに委ねることは適切ではないとし、人間ならではの感性や身体性を基盤とする創造的な表現を重視しながら、ツールとして適切に用いることが重要だとしています。

高校の芸術科では何が変わりますか?

音楽、美術、工芸、書道から科目を選択する仕組みのもとで、Ⅰを付した科目の導入段階に芸術の全体像や学ぶことの意味・価値を考える機会を、まとめの段階などに芸術分野に関わる探究的な学習を設けるなど、芸術そのものについて学ぶ機会を設ける方向です。

芸術系教科の評価はどう変わりますか?

複数の題材や単元、区分でまとめて総括的評価を行うことも可能だと促し、「思考・判断・表現」は学習の過程の中で児童生徒の姿を捉える方向です。審議まとめ全体では、「主体的に学習に取り組む態度」のABC評価を改め、総合所見欄での個人内評価と、思考・判断・表現の評価への「◯」の付記を組み合わせる方向が示されています。

いつから変わりますか?

次期学習指導要領の全面実施にあわせ、小学校は2030年度、中学校は2031年度から、高等学校は2032年度入学生からの見込みです。現在は審議まとめの段階で、答申は2026年度冬頃、小・中学校の改訂告示は2026年度末の予定です。

まとめ

次期学習指導要領の芸術系教科で示されたのは、思いや考えをもつことと、身体を使って表現することを切り離さずに捉える方向です。音楽、図画工作・美術・工芸、書道のそれぞれで表現するプロセス全体を「思考力、判断力、表現力等」として示し、見方・考え方は系統ごとに小・中・高で文言を統一する。内容は「表現」「鑑賞」の2領域と区分で整理し、高等学校芸術科には芸術そのものについて学ぶ機会を設ける。そのうえで区分の統合や記述の精査で内容を精選し、デジタルや生成AIは身体性を前提にツールとして使う──審議まとめが描いているのは、芸術を学ぶ意義を実感しながら、生活や社会の中の芸術と生涯にわたり関わっていける学びです。

過程や鑑賞の技能が重視されるほど、教材には「どの過程で、何を手掛かりに考えるのか」を明確にした設計が求められます。エデュコンは、教材・テキスト制作で題材構成から執筆・編集までを、模擬試験・テスト制作で鑑賞や思考の過程を問う問題づくりを承っています。小学校向け教材制作・中学校向け教材制作・高校向け教材制作のご相談も含め、次期学習指導要領に向けた音楽・図画工作・美術・書道などの教材の見直しについて、お気軽にご相談ください。

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