数学A・B・Cは1科目に、国語は「Ⅱ」科目を新設──次期学習指導要領で高校の科目と単位はこう変わる
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2026年9月25日、中央教育審議会の教育課程企画特別部会に、次期学習指導要領に向けた「審議まとめ(案)」が示されました。報道ではAIや情報教育が大きく取り上げられていますが、高校については、それとは別に大きな変更がいくつも並んでいます。数学A・B・Cを1つの選択科目にまとめる。国語の選択科目を組み直す。英語の科目名を変える。そして「1単位」の数え方そのものを変える。案の第1部には、現行と次期の高校の科目・標準単位数を左右に並べた対照表が載っています。本コラムでは、その表と本文を一次資料どおりにたどり、教科書や参考書・問題集への影響を整理します。
いつから、どの段階の話か
高校の改訂は令和9年度末、実施は令和14年度入学生から
案によれば、高等学校学習指導要領の改訂は令和9年度末の予定です。資料編のロードマップでは、高等学校は令和14年度(2032年度)の入学生から年次進行で実施されます。小学校(令和12年度)・中学校(令和13年度)より後になります。
以下で扱う科目構成と単位数は、8月31日に示された「素案」から変わっていません。対照表の数字も素案と同じです。ただし「案」の段階であり、新しい科目名の多くには「(仮称)」が付いています。
素案から変わったのは、単位制の柔軟化を始める時期
素案との違いがはっきり出たのは、後で述べる単位制の柔軟化をいつから先行実施するかです。素案は「今後、適切な時期に先行実施することを検討すべき」としていましたが、案は「令和11年度あるいは12年度には先行実施することとし」、具体的な年度は都道府県教育委員会などの検討状況や「高校版サキドリ研究校」の取組の進展を踏まえて最終的に決めるべきだとしています。全面実施より数年早く、新しい単位の仕組みを試せる学校が出てくることになります。
名前が変わるのは国語・数学・外国語
案は、科目の再編や名称の変更を伴うのは外国語科・国語科・数学科の3教科で、「それ以外の科目については、科目名・単位数ともに現行と同様」と整理しています。このうち必履修科目の単位数まで変わるのは数学科だけです。このほか理科では「科学と人間生活」の履修の仕方に選択肢が加わり、保健体育では「体育理論」の領域名を「スポーツ理論」に改める方向が示されています。
「1単位」が35コマから17コマに

卒業に必要な単位は74から148へ、ただし学習量はほぼ同じ
いまの高校は、50分の授業35コマで1単位と数え、卒業には74単位が必要です。案は、この1単位を細分化し、50分×17コマで1単位(新単位)とすることを標準にすべきだとしています。半期の学習で1単位を認定できるようにする狙いで、卒業に必要な単位数は74単位から148新単位になります。
35の半分は17.5です。案は17コマにするか18コマにするかを検討したうえで、18コマにすると単位の認定に必要な授業が実質1コマ増えることを問題にしました。高校は入試への対応などで授業日数が義務教育よりやや少なく、行事や祝日で実施できなかった授業を振り替えて年間35コマを確保するのも難しいことが多い。その実態と離れてしまうとして、17コマを選んでいます。その結果、現在1年間35単位時間で指導している内容を34単位時間で指導することになり、教科書の分量も精選を図る必要がある、と書かれています。
必履修科目の合計は、総合的な探究の時間を含めて、現行の38単位から最大78新単位になります。数学Ⅰを増やした分、単位数では2新単位増えますが、授業時間で比べると現行の1,330コマ(38×35)に対して1,326コマ(78×17)となり、わずかに減る計算です。
減らせる幅が広がり、組み替えもできるようになる
単位の数え方を細かくするのは、科目の学習量を学校ごとに調整しやすくするためです。案は、必履修科目の単位数を標準より減らす「減単」について、いまの「原則不可」という考え方を改めるべきだとしています。現在は標準2単位の必履修科目は減単できませんが、次期は4新単位の科目なら1新単位の範囲内で(3新単位まで)、8新単位の科目なら3新単位の範囲で(5新単位まで)減らせるようにする。ただし、大学入試に課されない教科が削られてバランスが崩れないよう、各必履修「教科」の合計が3新単位以下になる減単は認めないとしています。すべて最大まで減らした場合の必履修単位数は64新単位です。
あわせて、必履修科目を含む科目の内容を、一定の要件の下で他の科目へ移したり統合したりできる「組替え後科目」の仕組みも示されました。例として、物理基礎・化学基礎・生物基礎・地学基礎を組み合わせた「理科基礎」、数学Ⅰに義務教育段階の学び直しを加えた「数学基礎」などが挙がっています。週30コマという週当たり授業時数の標準は示さないこととし、普通科で卒業単位に含められる学校設定教科・科目の上限は、現行の20単位から28単位(56新単位)に引き上げるべきだとしています。
英語と数学は、外部試験で必履修科目を免除できるように
新しい仕組みとして、社会的信頼性が確立している外部試験の合格などを条件に、必履修科目の履修を免除し、上位の科目などに振り替えることを可能にする案も示されました。まずは外国語と数学から始めるとされ、英語は現行の必履修科目がおおむねCEFRのA2〜B1相当を念頭に置いていることから、それを大きく上回るB2相当以上を目安とする考え方です。数学は、数学Ⅰ相当より上の級(数学Ⅱ・B相当など)の習得を証明する外部試験が対象とされています。免除した分と同じ単位数を、上位科目などで修得する必要があります。
数学:A・B・Cを1つの選択科目に

数学Ⅰを拡充し、数学Ⅱを減らす
必履修科目の数学Ⅰは、現行の3単位から最大8新単位程度(現行の単位に換算して4単位)に増えます。増えるのは2つの学習内容です。1つは、数学の学びの全体像や数学と社会・職業との関係を学ぶ「数学ガイダンス」。もう1つは、数列・行列・統計・確率などのエッセンスや数理モデルの考え方を、実社会の場面をもとに学ぶ「社会を読み解く数学」です。後者は、数学Ⅰだけを学んで高校を卒業し社会に出る生徒にとっても重要な内容だから、という理由で新設されます。
そのぶん、大多数の生徒の学習量が増えないよう、数学科の中で唯一4単位の数学Ⅱは6新単位(3単位)に減らすとされています。数学Ⅰ→数学Ⅱ→数学Ⅲの履修順序は維持されます。
数学A・B・Cは1つの新選択科目へ
選択科目の数学A・B・Cは、1つの新科目に統合されます。案は理由として、数理・データサイエンス・AI教育につながる重要な内容が3科目に散らばり、私大文系志望者に十分履修されていないこと、社会生活や人生設計の合理的な判断に必要な内容を全員が学んでいないことを挙げています。
新科目の学習内容は「場合の数と確率」「統計的な推測」「行列」「数列」「幾何ベクトル」「複素数と複素数平面」の6つに整理され、標準単位数は2〜12新単位と幅があります。生徒が興味・関心や進路に合わせて必要な内容を選ぶ設計です。単独の学校で開設が難しい場合は、同じ県内の複数校が分担し、遠隔授業で相互に履修できるようにする工夫も挙げられています。名称は未定で、「数学E」「数学S」、あるいは「数理活用」などが考えられるとされ、対照表では「数理活用(仮称)」と記されています。
国語:必履修は維持、選択は「Ⅱ」科目と発展4科目に

選択科目の偏りを正す
国語の必履修科目は、現行の「現代の国語」「言語文化」の枠組みを維持し、名称を「現代の国語Ⅰ」「言語文化Ⅰ」(仮称)とします。単位数も現行と同じです。
見直しの中心は選択科目です。現行の選択科目は「論理国語」「文学国語」「国語表現」「古典探究」の4科目で、すべて4単位です。案は、実社会でのコミュニケーション能力を育てる国語表現が、大学入試につながらないなどの理由で進学希望者の多い高校では選択されにくいこと、国公立理系では「論理国語」と「古典探究」のみ、私立理系では「論理国語」のみの履修にとどまる例が多く、バランスが悪いことを課題に挙げています。
大多数が学ぶ「Ⅱ」科目と、発展4科目
そこで、現行の選択科目から標準的な内容を抽出して組み合わせた8新単位の科目を2つ新設します。3領域を偏りなく学び、実社会で必要な論理的思考力やコミュニケーション能力を育てる「現代の国語Ⅱ」と、古典と近代以降の文章を言語文化として学び、多様な他者の感性や情緒を理解する力を育てる「言語文化Ⅱ」で、いずれも大多数の生徒が履修することを想定した選択科目です。
そのうえで、より発展的に内容を焦点化して学ぶ4新単位の選択科目として、「論説と批評」「対話と表現」「文学と創作」「古典と文化」(いずれも仮称)を新設します。
教材の扱いにも方針が示されました。論理的思考力の育成に重きを置く科目でも、科目の趣旨に合う使い方であれば文学作品を扱うことができ、感性・情緒に重きを置く科目でも論説文や批評文を扱うことができる。実用文については、報道文や広告、それらに関する論説文や批評文などを中心に扱うことを明記する方向です。
英語・理科・その他の教科
英語は「総合」と「発信」に名前を改める
外国語では、5領域を総合的に扱う「英語コミュニケーション」を「英語コミュニケーション(総合)」に、話すことや書くことを中心に扱う「論理・表現」を「英語コミュニケーション(発信)」に改めます。どちらもⅠ〜Ⅲの構成で、単位数は現行と同じです。英語によるコミュニケーションを中核とする趣旨を名前で示し、発信力を一層強化するための変更とされています。
理科は「科学ガイダンス」と、科学と人間生活の新しい選択肢
理科では、数学と同じように、科学とは何か、理科の全体像、研究倫理などを学ぶ「科学ガイダンス」を中学校・高校で新設します。「科学と人間生活」は、物理・化学・生物・地学の学習事項をそれぞれ2つのうち1つ選んで履修する現行の形から、両方を履修できるようにし、その場合の単位数を現行の単位で4単位程度(8新単位)とする方向です。理科の必履修の満たし方は、現行の「科学と人間生活+基礎科目1つ」「基礎科目3つ」に、「科学と人間生活(8新単位)」が加わります。
情報・保健体育・総合的な探究の時間
情報科は情報Ⅰ・情報Ⅱの構成を維持しつつ、情報Ⅱで単位数を柔軟に配当できるようにします(共通テスト「情報Ⅰ」の現状は共通テスト「情報I」2年目の評価で扱っています)。保健体育は、体育の中の「体育理論」を「スポーツ理論」に、専門学科の「体育」を「スポーツ」に改める方向です。総合的な探究の時間は6〜12新単位(現行3〜6単位)で、減単できる幅が示されています。地理歴史・公民の各科目は、科目名は現行のままで、標準単位数が新単位に換算されます。ただし、必履修の地理総合・歴史総合は、新たに1新単位の減単ができるようになります。
教材制作の現場から見た論点

教科書は「34コマ分」で組み直される
1単位が17コマになることで、これまで35単位時間で扱ってきた内容を34単位時間で扱うことになります。案は、それを踏まえた教科書の分量となるよう精選を図るとしています。数学については、教科書の個別の内容が「必ず取り扱うべき内容」なのか「必要に応じて扱うべき内容」なのかが分かるよう、教師用指導書での工夫を教科書会社に要請することも検討すべきだとしました。教科書に準拠する問題集や指導書にも、同じ考え方で内容の軽重を示すことが求められそうです。
選択科目は「学校ごとに中身が違う」前提になる
数学の新選択科目は2〜12新単位と幅があり、6つの学習内容のどれをどれだけ選ぶかは学校と生徒によって変わります。国語の発展4科目も、選び方は学校ごとに異なるでしょう。参考書や問題集は、科目単位で1冊にまとめるより、学習内容ごとに組み合わせられる構成のほうが使われやすくなると考えられます。普通科の学校設定教科・科目の上限が引き上げられることを合わせると、検定教科書のない科目で使う教材の需要も増えるでしょう。複数の科目をまとめた「組替え後科目」では、既存の教科書を横断して使う場面も出てきそうです。この流れは、高校教育改革促進基金の採択結果で見た、学科改編で教科書のない科目が生まれる動きとも重なります。
大学入試との関係は、これから
科目が変われば、大学入試の出題科目や範囲も問題になります。案は数学について、高校での学びの成果が大学入学者選抜で適切に評価されるよう高大の関係者と丁寧な対話を進める必要があるとし、共通テストや個別試験のほか、出願時に高校での数学の科目の履修・修得を確認する方法なども考えられるとしています。入試の側の扱いが見えてくるまで、受験参考書の構成は新旧の科目の対応を意識して設計する必要があります。
よくある質問(FAQ)
数学A・B・Cはなくなるのですか?
案では、数学A・B・Cを1つの新しい選択科目に統合します。学習内容は「場合の数と確率」「統計的な推測」「行列」「数列」「幾何ベクトル」「複素数と複素数平面」に整理され、名称は「数学E」「数学S」「数理活用」などの案が検討されています。
卒業に必要な単位が倍になるのですか?
1単位の数え方を35コマから17コマに変えるためで、学習量が倍になるわけではありません。卒業に必要な単位数は74単位から148新単位になりますが、必履修科目の授業時間は現行の1,330コマに対して1,326コマと、ほぼ同じです。
「論理国語」「文学国語」はどうなりますか?
案では、現行の選択科目4科目を再編し、大多数の生徒が履修することを想定した「現代の国語Ⅱ」「言語文化Ⅱ」と、発展的な「論説と批評」「対話と表現」「文学と創作」「古典と文化」の構成にします(いずれも仮称)。
いつから変わりますか?
高等学校学習指導要領の改訂は令和9年度末の予定で、令和14年度(2032年度)の入学生から年次進行で実施されます。単位制の柔軟化については、令和11年度か12年度に先行実施する方向で、具体的な年度は今後決めるとされています。
これは決定事項ですか?
いいえ。「審議まとめ(案)」の段階で、今後の審議を経て答申、学習指導要領の改訂へと進みます。新しい科目名の多くは仮称です。
まとめ
次期学習指導要領の高校は、科目の名前と中身に加えて、単位の数え方そのものが変わります。数学は数学Ⅰを拡充して数学Ⅱを減らし、数学A・B・Cを1つの選択科目にまとめる。国語は必履修を維持しつつ、選択科目を「Ⅱ」科目2つと発展4科目に組み直す。英語は科目名を「総合」と「発信」に改める。そして1単位を17コマとし、減単や科目の組み替え、外部試験による履修免除で、学校ごとの教育課程の違いを大きく認める方向です。
教材の側から見れば、教科書は34コマ分に精選され、選択科目は学校ごとに中身が違う前提になり、学校設定科目のような検定教科書のない科目の教材も求められるようになるでしょう。科目単位の1冊から、学習内容ごとに組み合わせられる教材へ。その設計の転換が求められることになりそうです。
エデュコンは、高校生向け教材・大学受験問題の制作、テキスト教材・問題集・参考書の制作、高校「情報」の教材・問題制作を、企画から一貫して承っています。次期学習指導要領を見据えた教材の設計・改訂について、お気軽にご相談ください。
この記事を書いた人 / 監修
エデュコン教材制作チーム
創業以来、500社以上の教育機関様の教材制作を支援。
教育・IT・編集のプロフェッショナルが集まる専門チームが記事を監修しています。





















