令和8年度 共通テスト「問題評価・分析委員会報告書」とは──入試問題は誰が、どう評価しているのか
カテゴリ

大学入試センターが、令和8年度(2026年1月実施)の大学入学共通テストについて「問題評価・分析委員会報告書」を公開しました。共通テストは「実施して終わり」ではなく、出題された問題そのものを毎年、専門家が評価・分析して公表しています。あまり知られていませんが、出題のねらいや今後の方向性を読み解ける、受験生・保護者・指導者にとっても有益な資料です。本コラムでは、この報告書とは何かを整理し、教科別評価のダイジェストと、教科を横断して見える共通の方向性・課題までを概観します(各教科の詳しい評価は、教科別のコラムで取り上げます)。
「問題評価・分析委員会報告書」とは何か

共通テストは、問題を作って実施するだけでなく、その問題自体が事後に評価・分析され、結果が公表される仕組みになっています。その記録が「問題評価・分析委員会報告書」です。
試験を「作る側」と「評価する側」
共通テストの問題は、専門の作成部会が時間をかけて作問します。一方で、出題された問題が適切だったかを検討するのが問題評価・分析委員会です。作問した側の自己点検に加え、評価する立場からの視点が入ることで、問題の妥当性が多面的に確かめられます。
高校教員・教育団体・作成部会の「三者」で評価する
この仕組みの特徴は、外部の声が反映される点です。各科目について、(1) 高等学校で各教科を担当する教員からの評価、(2) 関係する教育研究団体からの評価、(3) それらを踏まえた問題作成部会自身の自己評価、という三段階で検討されます。評価は8項目の観点に沿って総合的に行われ、実際に教える現場の実感が出題の検証に生かされます。
本試験・追再試験・試験情報データの3点
令和8年度分として公開されているのは、「本試験の報告書」「追・再試験の報告書」、そして「試験情報データ」です。報告書が出題の評価を扱うのに対し、試験情報データには設問別の正答率や科目別の成績分布、得点の累積分布といった客観的な数値が含まれ、あわせて読むことで試験の全体像がつかめます。
令和8年度(新課程2年目)の位置づけ
令和8年度の共通テストは、新しい学習指導要領(いわゆる新課程)に対応した試験の2年目にあたります。この「2年目」という点が、今回の報告書を読むうえでの大切な背景です。
新課程入試の「定着」段階
新課程に対応した共通テストは、令和7年度(2025年1月)に始まりました。令和8年度はその2年目で、初年度の経験を踏まえて出題が落ち着いていく段階といえます。報告書は、新しい試験が想定どおりに機能しているかを検証する記録としての意味も持ちます。
追・再試験まで含めて検証する
評価・分析は本試験だけでなく、追・再試験についても行われます。体調不良などで本試験を受けられなかった受験生のための試験まで含めて検証されることで、試験全体の公平性と妥当性が確かめられます。
教科別の評価ダイジェスト

報告書は全教科・科目を対象としています。ここでは主要科目の評価を一言で要約します。各教科の詳しい所見・出題の特徴・対策は、教科別のコラムで個別に掘り下げます。
情報Ⅰ・数学・国語
- 情報Ⅰ:導入2年目。平均点は前年から下がったものの、難易度設定は適切で「良問」と評価。前年に偏っていた出題分野のバランスも改善されました。
- 数学:全範囲から偏りなく出題され、適切と評価。計算して処理する力だけでなく、問題を見いだし、解決過程を振り返り、発展的に考える力までバランスよく問われました。
- 国語:新課程で重視される「書くこと」に対応した、複数の資料を読み比べる大問が特徴。一方で、試験時間に対する分量がやや多く、前年より難度が上がったとの受け止めも示されました。
英語・歴史総合
- 英語(リーディング):平均点は前年より上昇。チラシやメッセージのやり取りなど多様なテキストを、目的に応じて読み解く力が問われました。「書くこと」を意識した出題も見られます。
- 歴史総合・日本史探究:新課程の新科目。初めて見る資料を知識と結びつけて考える出題や、探究的な学習の場面を想定した設問が中心です。
教科を横断して見えること(共通の方向性と課題)
教科別の評価を並べると、科目を越えて共通する方向性と、共通する課題が浮かび上がります。これこそ、報告書をまとめて読む価値です。
初見の資料・データを「その場で読み解く」力へ
どの教科でも、暗記した知識をそのまま答える問題から、初めて見る資料やデータを読み取り、知識と結びつけて考える問題へと比重が移っています。歴史総合では初見の史料(多くは現代語訳)を、数学や情報Ⅰではデータの分析を、国語や英語では複数のテキストの読み比べを通して、その場で考える力が問われました。
「実生活・探究」の場面で問う
出題の多くが、生活や社会の具体的な場面に置かれています。情報Ⅰの住民票の情報システム、英語のチラシやメッセージ、歴史総合の探究活動(仮説を立てる学習)など、学んだことを現実の文脈で使えるかを試す設計です。新課程が掲げる「主体的・対話的で深い学び」が、出題にも反映されています。
共通の課題は「分量と時間のバランス」
一方で、複数の教科で共通して指摘されたのが分量の問題です。国語では試験時間に対して分量がやや多いこと、歴史総合でも文字量の増加が解答時間の負担になりうることが挙げられました。良い方向性であるほど、限られた時間内に力を発揮できるかが次の論点になります。資料の情報量や配点を精査してほしいという声は、翌年以降の作問への申し送りでもあります。
なぜ受験生・保護者・先生に関係するのか
出題の質が検証され、公開されること自体が、受験する側にとっての安心材料であり、学びのヒントにもなります。細部まで読み込む必要はありませんが、視点を知っておくと役に立ちます。
出題の「ねらい」を知る手がかり
報告書には、各科目で何を測ろうとしたのか、どんな力を重視したのかという考え方が示されます。出題の意図を知ることは、やみくもな対策ではなく、方向性を見極めた学習につながります。
「良問」とは何かを考える材料
評価の視点に触れると、問題を「難しい・易しい」だけで捉えるのではなく、「思考力や判断力を適切に問えているか」という観点で見られるようになります。情報Ⅰのように、平均点が下がっても「良問」と評価される例もあります。
来年度以降への見通し
評価で示された受け止めや指摘は、翌年以降の出題の改善に生かされていきます。分量や新科目の出題分野のバランスといった論点は、次の作問への申し送りでもあります。単年の結果に一喜一憂せず、試験の連続性や方向性を読むことが大切です。
教材制作・問題制作の視点から

出題を「評価する」という営みは、私たち教材・問題制作の現場にとっても、多くの示唆を含んでいます。
良い問題は「作って終わり」にしない
良問は、作成した時点で完成するわけではありません。第三者の評価や検証を経て、はじめて妥当性が確かめられます。共通テストが、作成部会の自己評価に加えて高校教員・教育団体の外部評価まで重ねているのは、その当たり前を社会に対して丁寧に実践している例だといえます。
客観的なレビューの価値
作問者が意図した「測りたい力」と、実際に解いた受験生や現場の受け止めとの間には、ズレが生じることがあります。今回の国語の「分量がやや多い」という指摘のように、外部からの評価や、校正・校閲といった客観的なレビューは、こうしたズレを早期に見つけ、問題の公平性と妥当性を支えます。
信頼を支える地道な検証
測りたい力を、誤解なく、公平に問えているか。その検証を一問一問積み重ねることが、受験者から信頼される問題づくりにつながります。共通テストの報告書は、その積み重ねを社会に開いて見せているものでもあります。
家庭・指導の現場でできる活用
過去問とあわせて「ねらい」を読む
過去問を解くときに、正解・不正解だけでなく「この問題は何を試そうとしているのか」を意識すると、出題の意図が見えてきます。報告書の考え方は、その読み解きのヒントになります。
数字に一喜一憂しすぎない
平均点や得点分布は大切な情報ですが、それだけで試験の良し悪しは決まりません。評価では、数値の背景にある出題のねらいまで含めて検討されます。点数の上下に振り回されすぎない視点が役立ちます。
学びの本質に立ち返る
評価が重視するのは、暗記の量よりも、考え、判断し、表現する力です。日々の学習でも、「なぜそうなるのか」を大切にすることが、結果的に共通テストで問われる力につながります。
よくある質問(FAQ)
問題評価・分析委員会報告書はどこで見られますか?
大学入試センターの公式ウェブサイトで公開されています。令和8年度分は、本試験・追再試験それぞれの報告書と、試験情報データが教科・科目別に掲載されています。
令和8年度の共通テストはいつ実施されましたか?
2026年1月に実施されました。新しい学習指導要領(新課程)に対応した共通テストとしては、2年目にあたります。
平均点が下がった科目は「悪い問題」だったということですか?
そうとは限りません。たとえば情報Ⅰは前年より平均点が下がりましたが、難易度設定は適切で「良問」と評価されています。報告書は、点数だけでなく出題のねらいや内容まで含めて多面的に評価しています。
各教科の詳しい評価はどこで読めますか?
本コラムは全体の概要です。国語・数学・英語・歴史総合など、教科ごとの詳しい所見と対策は、教科別のコラムで個別に取り上げます。
まとめ
共通テストは、毎年その問題自体が評価・分析され、結果が公表される「開かれた試験」です。令和8年度の報告書からは、初見の資料を読み解く力、実生活・探究の場面で問う姿勢、そして分量と時間のバランスという共通の課題が見えてきます。出題の質を問い続けるこの営みは、受験生の学びにも、私たち教材・問題制作の現場にも、深くつながっています。エデュコンは、測りたい力を公平に・的確に問う問題づくりに、これからも一問ずつ丁寧に取り組んでいきます。
この記事を書いた人 / 監修
エデュコン教材制作チーム
創業以来、500社以上の教育機関様の教材制作を支援。
教育・IT・編集のプロフェッショナルが集まる専門チームが記事を監修しています。





















