文部科学省「諸外国の教育情報」2026年版を読む──6か国の学級編制・私立学校・留学生データと、教材で使うときの注意
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文部科学省は2026年10月30日、「諸外国の教育情報」令和8(2026)年版を公開しました。アメリカ合衆国、イギリス、フランス、ドイツ、中国、韓国の6か国について、学校の仕組みや学校数、学級編制の基準、大学の授業料、留学生などを、各国政府の公表データでまとめた資料です。長く公開されてきた「諸外国の教育統計」の後継にあたります。
この記事では、文部科学省のページと6か国分のExcelファイルを読み、初等中等教育に関わる項目を中心に、各国の違いが見えるデータを紹介します。あわせて、この資料ならではの注意点と、教材や入試問題で海外の教育データを扱うときの確認ポイントを整理しました。社会科や英語、総合的な探究の時間の教材づくり、国際比較を扱う問題づくりの参考になれば幸いです。
この記事の要点
- 文部科学省は2026年10月30日、「諸外国の教育統計」の後継として「諸外国の教育情報」2026年版を公開した。対象は米英仏独中韓の6か国、掲載は9項目
- 学級の上限人数を全国一律で定めている国は少なく、アメリカ合衆国とドイツは州、フランスと韓国は地域や学校が決める仕組みで、日本は中学校の35人学級化を2026年度に始めた
- 私立学校の割合は学校段階で大きく変わり、韓国では初等学校1.6%に対して高等学校は40.2%。イギリスの大学は定義上すべて私立に分類される
- 各国のデータは標準化されておらず、国際比較には「図表でみる教育」を参照するよう注意書きがある。教材やテストで使うときは年度・定義・範囲の確認が欠かせない
「諸外国の教育情報」とはどんな資料か

「諸外国の教育情報」は、文部科学省の総合教育政策局参事官(調査企画担当)付がまとめている資料です。各国政府が公表しているデータを集め、国ごとに1つのExcelファイルで公開しています。
掲載項目は次の9つです。
1. 学校系統図
2. 学校統計
3. 私立学校の割合
4. 学級編制基準
5. 大学の学生納付金
6. 政府機関奨学金制度
7. 大学の収入の構成
8. 高等教育教職員の構成
9. 国・地域別留学者数(上位10か国)
2025年版からの主な変更点
文部科学省は、「諸外国の教育統計」2025年版からの主な変更点として次の3つを挙げています。
- 国別に1つのファイルにまとめた:利便性の向上のためとしています
- 一部の項目を削除した:「高等教育在学者の専門分野別構成」と「学位取得者の専攻分野別構成」は、OECDの「図表でみる教育(Education at a Glance)」で取得できるため削除しました
- 留学生のデータを追加した:各国の公表資料に基づく「留学生の国別/地域別内訳」を加えました
名称が「統計」から「情報」に変わり、OECDの国際比較統計と重なる部分を外して、各国の制度やデータをそのまま示す資料という性格がはっきりしたといえます。
義務教育の年数は国によって大きく違う

学校系統図のシートには、各国の学校の仕組みが文章で説明されています。義務教育の年数だけを並べても、6か国の違いは小さくありません。
- アメリカ合衆国:就学義務の規定は州によって異なり、義務教育年限は9〜12年(12年とする州が最も多い)。初等・中等教育は合計12年で、現在は5-3-4年制が一般的ですが、8-4年制、6-6年制、4-4-4年制など形態は多様です
- イギリス:イングランドの義務教育は5〜16歳の11年。16〜18歳は、教育や見習い訓練などに従事することが義務付けられています
- フランス:義務教育は3〜16歳の13年。開始年齢は2019年度から6歳から3歳に引き下げられました。前期中等教育のコレージュでの観察・進路指導の結果に基づいて後期中等教育に進み、いわゆる高校入試はないとされています
- ドイツ:義務教育は9年(一部の州は10年)。初等教育の基礎学校は4年間(一部の州は6年間)で、その後は能力・適性に応じてハウプトシューレ、実科学校、ギムナジウムなどに分かれます
- 中国:9年制義務教育を定めた義務教育法が1986年に成立しました。小学校は一般に6年制です
- 韓国:義務教育は6〜15歳の9年。初等学校6年、中学校3年、高等学校3年です
日本の義務教育は小学校6年と中学校3年の9年です。同じ「中学生」「高校生」という言葉でも、国によって年齢や学校の分かれ方が違うことは、国際比較のデータを読む前提になります。
学級の上限人数を「全国一律」で決める国は少ない

学級編制基準のシートは、各国の違いが最もはっきり出る項目の一つです。1学級の人数の上限を国全体で一律に定めている国は、6か国の中では限られます。
- アメリカ合衆国:州によって定める内容が異なります。資料はテキサス州(就学前教育〜第4学年は22人)、モンタナ州、ケンタッキー州の例を挙げています
- イギリス:1998年の法律で、初等学校の第1〜2学年のみ上限30人が導入されました。それ以外の学年は従来通り基準はありません
- フランス:全国的な編制基準は設けられていません。幼稚園と小学校は大学区国民教育事務局長(県レベルの国民教育省の出先機関)が毎年決め、中等教育は各学校の権限とされています。幼稚園年長〜小学校第2学年までは1クラス24人までが推奨されています
- ドイツ:州が定めます。資料はノルトライン・ヴェストファーレン州の例として、基礎学校は児童数に応じて学級数を決め、1学級29人以下となる仕組みや、中等教育の学校種ごとの標準人数(ハウプトシューレ24人、実科学校・ギムナジウム27人など)を示しています
- 中国:2002年の教育部の通知で、小学校は都市部40〜45人(農村部は適宜設定)、中等学校(初級中学・高級中学)は45〜50人を標準として示し、これを参考に省・自治区・直轄市が定めます
- 韓国:全国的な基準はなく、広域市・道の教育監が決めるとされています
日本は中学校の35人学級化が始まった
日本の公立小・中学校では、国が「学級編制の標準」を法律で定めています。小学校は2025年度に35人学級が完成しました。中学校は、2026年3月31日に公布された改正法により、学級編制の標準を40人から35人に引き下げることになり、2026年度は第1学年、2027年度は第2学年、2028年度は第3学年と段階的に35人とする計画です。
ここで気を付けたいのは、各国の「基準」の意味が同じではないことです。上限人数、標準人数、推奨人数、学級数の決め方と、資料の中でも書き方が国ごとに異なります。「日本は35人、中国は45人」と単純に並べると、制度の性格の違いを見落とすことになります。
私立学校の割合は、学校段階で大きく変わる

私立学校の割合のシートでは、児童・生徒・学生数と機関数の両方で、私立の割合が示されています。初等中等教育の児童生徒数で見ると、次のようになります。
- アメリカ合衆国(2022年度。私立は2021年の数値):初等・中等段階で9.9%
- イギリス(2023年度):保育学校・初等中等学校で5.7%
- フランス(2023年度):小学校からリセ・職業リセまでで18.6%。小学校14.7%、コレージュ21.8%、リセ・職業リセ20.8%
- ドイツ(2023年度):基礎学校・中等教育機関で8.4%。基礎学校4.8%、中等教育機関10.0%
- 中国(2023年度):小学校・初級中学・高級中学で10.3%。小学校7.6%、初級中学10.1%、高級中学19.5%
- 韓国(2024年度):初等学校から高等学校までで15.1%
韓国は高校で4割、イギリスの大学は「すべて私立」
段階ごとの差が大きいのが韓国です。私立の割合は初等学校で1.6%、中学校で15.8%、普通・職業高等学校では40.2%に上ります。幼稚園・保育所は69.2%、大学・教育大学・大学院・専門大学では79.2%です。中国も、幼稚園は43.8%と初等中等教育より高い割合です。
一方、イギリスの大学・大学院は在学者の100%が「私」に分類されています。これは、イギリスの大学が独立の法人であり、政府からの拠出が財源の50%以上などの場合は「公営私立」とする定義によるもので、資料の注にその旨が書かれています。「私立」という言葉が指すものが国によって違うことを示す、分かりやすい例です。
留学生はどこから来ているか

今回の版で新しく加わったのが、国・地域別の留学者数です。各国が受け入れている留学生の出身国・地域の上位が示されています。
- アメリカ合衆国(2022年の数値として掲載):総数105万7,188人。中国28万9,526人、インド26万8,923人が上位で、日本は8位の1万6,054人です
- イギリス(2023年):総数73万3,930人。インド16万5,445人、中国14万9,670人が上位です
- フランス(2023年):高等教育機関の外国人学生は41万9,694人。モロッコ4万3,354人、アルジェリア3万4,269人、中国2万7,123人の順です
- ドイツ(2023年):総数37万9,939人。中国3万8,262人、トルコ1万8,084人、オーストリア1万5,379人の順です
- 中国(2023年):正規の高等教育課程の留学者は19万4,327人。国別ではなく地域別で、アジアが68.1%、アフリカが21.1%を占めます
- 韓国(2024年):総数20万8,962人。中国7万2,020人、ベトナム5万6,003人が上位で、日本は7位の5,250人です
フランスは北アフリカの国々、ドイツは隣国のオーストリア、韓国はベトナムやモンゴル、ウズベキスタンなどのアジア諸国が上位に入るなど、受け入れ国ごとの特徴が見えます。留学生の数え方も国によって異なり、フランスは外国籍の学生、ドイツは国外で大学入学資格を得た外国籍の学生などと、注で定義が示されています。
データを読むときの注意──「標準化されていない」

この資料を使ううえで最も大切なのが、冒頭の注意書きです。文部科学省は、各国政府が公表しているデータを標準化せずに掲載しているとしたうえで、次の点に留意するよう求めています。
- 国ごとに統計の範囲・手法が異なること
- 国ごとに教育システムが異なり、学校教育段階や、修業年限・年齢、就学形態(フルタイム/パートタイム)などに違いがあること
そして、国際比較においてはOECDの「図表でみる教育(Education at a Glance)」を参照するよう案内しています。この記事で紹介した数字も、年度がそろっていません。アメリカ合衆国の私立学校の数値は2021年、韓国は2024年度というように、国によって基準年が異なります。
記号の意味も確認する
資料では、計数が不明なものを「m」、表章単位に満たないものを「0」あるいは「0.0」、制度が存在しないものを「a」と表しています。空欄や記号を「0」と読み違えないことも、データを正しく扱う基本です。
教材やテストで海外の教育データを使うときのチェックポイント

教材や入試問題で各国の教育制度や統計を取り上げる場面は少なくありません。社会科で国際理解を扱う単元、英語で海外の学校生活を題材にする本文、総合的な探究の時間で教育問題を調べる活動、資料を読み取る入試問題などです。この資料を使うときに確認したい点を、編集の立場から整理します。
出典と基準年度を明記する
同じ資料の中でも、項目や国によって基準年度が異なります。図表に数字を載せるときは、出典の資料名と公開日に加えて、その数値が何年度のものかを添えるのが基本です。毎年更新される資料なので、教材の改訂時には最新版との差を確認する必要があります。
定義をそろえずに比べない
私立学校の割合のように、定義が国ごとに違うデータを1つのグラフに並べると、読み手は同じ基準の比較だと受け取ります。比較そのものが目的なら、OECDの「図表でみる教育」のように基準をそろえた統計を使うのが、文部科学省の注意書きにも沿った方法です。この資料は、各国の制度や状況をそのまま伝える素材として使うほうが向いていると考えられます。
問題文と設問で「何を読み取らせるか」を決める
資料を読み取る問題では、数字の大小だけを問うと、定義の違いによる誤った結論を導きかねません。たとえば学級編制基準なら、「どの国が少人数か」より「誰が基準を決めているか」を読み取らせるほうが、資料の性格に合った問いになります。次期学習指導要領の審議まとめでも、社会科で資料の信頼性や情報の真偽を確かめる活動が重視されています(詳しくは社会科のコラムで解説しています)。出典や定義に目を向けさせる設問は、その趣旨にも沿うものです。
国際的な学力調査の結果を扱う場合は、調査ごとの対象や方法の違いにも注意が必要です(参考:PISA2025を読む)。
よくある質問(FAQ)
「諸外国の教育情報」と「諸外国の教育統計」は何が違いますか?
「諸外国の教育情報」は「諸外国の教育統計」の後継資料です。2026年版では、国別に1つのファイルにまとめ、OECDの「図表でみる教育」で取得できる高等教育の専門分野別構成などを削除し、留学生の国別・地域別内訳を追加しました。過去の版は文部科学省のページから参照できます。
日本のデータは載っていますか?
掲載されているのはアメリカ合衆国、イギリス、フランス、ドイツ、中国、韓国の6か国で、日本のデータは含まれていません。日本の学校数や在学者数は学校基本調査などで確認する必要があります。
この資料で国どうしを比較してもよいですか?
文部科学省は、データを標準化せずに掲載しているため、統計の範囲・手法や教育システムの違いに留意するよう求めています。国際比較には「図表でみる教育(Education at a Glance)」を参照するよう案内しているため、比較を目的にする場合はそちらを使うのが適切です。
学級の人数は日本が多いのですか?
単純には比べられません。中国は都市部の小学校で40〜45人を標準とし、イギリスは初等学校の第1〜2学年のみ上限30人です。一方で、アメリカ合衆国やドイツは州が定め、フランスや韓国は全国的な基準を設けていません。日本は小学校が35人、中学校が2026年度から段階的に35人です。基準の性格が国ごとに違うため、数字だけを並べた比較には注意が必要です。
ファイルはどこで入手できますか?
文部科学省のウェブサイトの「諸外国の教育情報」のページで、6か国分のExcelファイルが公開されています。各ファイルには「利用に当たって・出典」のシートがあり、数値の出典と記号の意味が説明されています。
まとめ
「諸外国の教育情報」2026年版は、6か国の教育制度と統計を、各国政府のデータのまま示した資料です。学級編制基準を全国一律で定める国が少ないこと、私立学校の割合が学校段階で大きく変わること、留学生の出身国に受け入れ国ごとの特徴があることなど、制度の違いが具体的に見えてきます。
一方で、データは標準化されておらず、年度も定義もそろっていません。この資料は「比べるための統計」ではなく、「各国の仕組みを知るための情報」として読むのが、文部科学省の注意書きにも沿った使い方です。教材やテストで扱うときは、出典・年度・定義を添え、何を読み取らせるのかを設計することが、正確で深い学びにつながります。
エデュコンは、教材・テキスト制作で社会科や英語、探究学習の教材の企画・編集・執筆を、模擬試験・テスト制作で資料を読み取る問題の作成を承っています。統計資料の扱いや出典表記の確認も含めて、お気軽にご相談ください。
本記事は、文部科学省「諸外国の教育情報」令和8(2026)年版(2026年10月30日公開)の各国データ(Excelファイル)と、日本の学級編制の標準については文部科学省「公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律の一部を改正する法律等の施行について(通知)」(令和8年4月1日)をもとに、エデュコン編集部がまとめたものです。
この記事を書いた人 / 監修
エデュコン教材制作チーム
創業以来、500社以上の教育機関様の教材制作を支援。
教育・IT・編集のプロフェッショナルが集まる専門チームが記事を監修しています。
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