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サキドリ研究校とは——全国332校で始まっている、次期学習指導要領の「先行実践」

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ICT教育・GIGA
教育DX・データ活用
「サキドリ研究校とは」「全国332校で始まる先行実践」。校舎から全国へ点が広がっていく様子を描いたバナー

次期学習指導要領の大きな柱の1つが、各教科の標準授業時数の一部を学校の裁量に振り向けられる 「調整授業時数」 の仕組みです。以前のコラムでは「授業時数を最大15%削減できる方向」という検討の第一報をお伝えしましたが、実はこの仕組み、答申を待たずに 全国の学校がすでに「先取り」で実践を始めています。その担い手が、文部科学省の指定する 「サキドリ研究校」 です。2026年10月5日の中央教育審議会 教育課程部会「次期学習指導要領等に向けた審議まとめ」と、令和8年7月現在の指定校一覧をもとに、この取り組みの実像を整理します。

この記事の要点

  • 次期学習指導要領の柱の1つが、各教科の標準授業時数の一部を学校の裁量に振り向けられる「調整授業時数」の仕組み
  • 答申を待たず、文部科学省が指定する「サキドリ研究校」がすでに先取りで実践を始めている(令和8年7月現在で全国316校、2026年10月5日の審議まとめでは332校)
  • 2026年10月5日の審議まとめは令和9年度に実施校を大幅に増やす方向を示しており、指定校の取り組みは「これからの教材の使われ方」を映す先行事例

サキドリ研究校とは——次期改訂を「先取り」する指定校

サキドリ研究校316校(令和8年7月時点)の実践・知見を全国の学校へ広げる位置づけ

制度に先立って実践事例をつくる学校

サキドリ研究校は、次期学習指導要領で創設が検討されている調整授業時数制度を見据えて、現行の学習指導要領のもとで先行的に柔軟な教育課程を実践し、事例と知見をつくっていく指定校です。審議まとめでは、文部科学省が先行研究開発学校やサキドリ研究校を通じて「参照可能な実践事例を幅広く創出し、各教育委員会等に情報提供」する役割が明記されています。制度が始まってから慌てて手探りするのではなく、始まる前に全国で実践を積み上げておく——そのための仕組みです。

指定規模は7月時点で316校、審議まとめでは332校

公表された一覧によると、サキドリ研究校の指定は令和8年7月現在で 計316校。内訳は公立303校・国立の附属学校13校で、北海道から九州まで全国の小学校・中学校・義務教育学校に広がっています。その後の2026年10月5日の審議まとめでは「現在全国332校で取り組まれている」と記されています。内訳や活用方法の分布は7月時点の一覧に基づきます。審議まとめは、以前からある先行研究開発学校(令和8年4月時点で9都道府県68校)と合わせて「400校もの指定を既に行っており、現行の標準授業時数・教科書の下でも実践したいとのニーズが高まっている」と述べています。

なぜ答申前から動いているのか

次期学習指導要領の全面実施は、小学校が2030年度(令和12年度)、中学校が2031年度(令和13年度)からの見込みです。それでも今から実践が始まっているのは、調整授業時数制度の適切な運用には「徐々に効果的な取組や知見の蓄積を行っていくこと」が必要だからです。1人1台端末などデジタル学習基盤の活用で授業の効率化がしやすくなり、現行制度のままでも時間を生み出す工夫が現実的になったことも、背景として挙げられています。

令和9年度に実施校を大幅に増やす方向

審議まとめは、サキドリ研究校について今年度中に追加募集を行い、令和9年度(2027年度)に実施校を大幅に増やして「各市町村レベルでのモデル創出・知見蓄積を加速する」としています。また、全面実施を待たず、令和10年度(2028年度)からの先行実施期間に調整授業時数制度を活用できるようにする方向です。高等学校についても、義務教育段階のサキドリ研究校の枠組みを参考に、令和10年度から「高校版サキドリ研究校」を指定すべきとされました。

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指定校は何をしている?——4つの活用方法

授業時数の4つの活用方法。裁量的な時間(学習枠)、研究・研修等枠、教科への上乗せ、教科の新設

令和8年7月現在の指定校一覧には、各校が「調整授業時数をどう活用するか」が4つの分類で示されています。

活用方法は大きく4分類

1つ目と2つ目は 「裁量的な時間」 です。児童生徒の実態に応じた学習支援などを行う「学習枠」と、授業や指導の改善に直結する組織的な研究・研修を行う「研究・研修等枠」に分かれます。3つ目は 既存の各教科等への上乗せ(特定の教科の時数を厚くする)、4つ目は 教科の新設(学校独自の新しい教科をつくる)です。一覧を見ると、多くの学校が学習枠と研究・研修等枠を軸に取り組み、教科の新設まで踏み込む学校は一部という分布が見て取れます。

実態調査が示す「本気度」

審議まとめには、サキドリ研究校の実態に関するデータも引用されています。研究・研修等枠と学習枠の 双方に取り組む学校は全体の72%を超え、そのうち 55%の学校が週1回以上 学習枠の取り組みを実施しています。また、裁量的な時間と教科等の上乗せ・新教科の創設の両方に取り組む学校も59%にのぼります。「お試し」ではなく、教育課程の編成に本格的に組み込んで運用している学校が多数派だと分かります。

学習枠では何ができるのか

審議まとめが示す学習枠の類型は、マイ探究の課題の深掘りや自己調整学習、個々のニーズに応じた個別指導、下学年の内容を学び直すプログラムといった「個に応じた学習過程の充実」、体験活動や言語能力・情報活用能力の重点育成といった「学習の素地を高める取組」、ソーシャルスキル育成など「関係性の質を高め、学習の一層の円滑化に特に資する取組」、地域の多様な大人と探究的に関わる活動といった「その他地域等の特色を生かした取組」の4つです。いずれも、一斉授業の枠では取り組みにくかった学びに時間を充てるイメージです。

制度の中身はどこまで固まったか

調整授業時数の枠組み。対象教科の15%程度(案)、裁量的な時間は週2コマまで(案)

サキドリ研究校の実践と並行して、制度設計の議論も具体化しています。2026年10月5日の審議まとめの要点を押さえておきます(いずれも答申前の整理で、具体の数字は今後の精査を経て決まります)。

調整幅は「対象教科の15%程度」を想定

標準を下回ってよい上限は、最大限大きくとった場合で対象教科の15%程度(小学校で年間138コマ程度、中学校で128コマ程度、週4コマ程度)を想定しつつ、今後も先行実践の蓄積を踏まえて精査を続け、適切なタイミングで具体の数字を決定するとされています。実際、先行研究開発学校68校の調整授業時数は平均で小学校124コマ(14%相当)・中学校126コマ(15%相当)と、この水準に近い実践がすでに行われています。

裁量的な時間は「週2コマ・最大70コマ」程度が上限

裁量的な時間については、全体として週当たり2コマ(最大70コマ)程度を上限とし、そのうち研究・研修等枠は週1コマ(最大35コマ)程度を上限とすることが適当とされました。既存教科等への上乗せと教科新設には個別の上限を設けず、生み出した調整授業時数のうち裁量的な時間に使う分を除いた時数が上限となる方向です。また、学習の継続性の観点から、標準授業時数が35コマ以下(週1コマ相当以下)の教科等は減らせない、調整後の時数が35コマ未満になるような削減もできない、という歯止めも引き続き設けられる方向です。

質を担保する仕組みもセットで設計

自由化一辺倒ではなく、学習枠には、各教科等の内容に該当しないか、いずれか一つの教科等に当てはめるのが困難な学習活動であること、年間指導計画等に基づく組織的な取組であることなど6つの要件が設定される方向です。各学校が活用状況をウェブサイトで公表し、国は実践事例の把握・公表と改善を続けるという、透明性を軸にした質確保の仕組みも描かれています。

現行の授業時数特例校制度と教育課程特例校制度は調整授業時数制度に統合し、国への申請を不要として各学校の判断で実施できるようにする方向です。単なる受験対策への傾倒などを防ぐ仕組みも設けるとしています。

教材制作の現場への示唆

教材への示唆。週1コマで使える教材と、1つの教材が子どもごとに分岐する個に応じた学び

「週1コマの帯」で使える教材への需要

研究・研修等枠と学習枠の双方に取り組むサキドリ研究校のうち55%が、学習枠を週1回以上実施しているという実態は、年間を通じた「週1コマの帯」で運用できる教育プログラムの需要を示しています。1回完結で積み上げられるモジュール型の教材、学び直しやフォローアップに使える段階別のドリル、個人探究を支えるワークシートなど、従来の「教科書準拠・単元順」とは違う設計の教材が求められる場面が増えていきます。

「個に応じた学習」を支える教材設計

学習枠の類型で最初に挙げられているのは、個別指導・学び直し・自己調整学習といった「個に応じた学習過程の充実」です。一人ひとりの進度や到達度に応じて使い分けられる教材、児童生徒が自分で選んで進められる構成、学習データと組み合わせて次の一手につなげられるデジタル教材——このコラムでも繰り返し取り上げてきた「個別最適な学び」に応える教材づくりが、調整授業時数の文脈でも軸になります。

審議まとめは教科書についても、調整後の時数で十分に指導可能なものとなるよう、分量、デジタル教材との役割分担、教師用指導書での指導計画の示し方を整合させて対応する必要があるとしています。

地域の指定校の実践は「次の標準」の先行例

令和8年7月現在の316校の指定校一覧は、都道府県・管理機関(教育委員会)・学校名まで公表されています。自社の教材が流通している地域にサキドリ研究校があれば、その実践は数年後に全国の学校へ広がる取り組みの先行例です。教育委員会や学校と仕事をする立場であれば、地域の指定校がどの活用方法(裁量的な時間・上乗せ・新設)を選んでいるかを見ておくことは、これからの教材ニーズを読む確かな手がかりになります。

まとめ——「先に始まっている未来」を見る

次期学習指導要領はまだ審議の途中です。2026年10月5日の審議まとめは2026年11月5日までパブリック・コメント(意見公募)にかけられ、2026年度冬頃の答申、2026年度末の小・中学校の改訂告示へと進む予定です。しかし、サキドリ研究校という形で、その方向性を先取りした実践は、令和8年7月時点で全国316校、審議まとめの記述では332校ですでに動いています。制度を待つのではなく、先に始まっている実践から学ぶ——教材制作に関わる私たちにとっても、指定校の取り組みは「これからの教材の使われ方」を映す先行スクリーンです。エデュコンでも、個別最適な学びやモジュール型の教材設計など、新しい教育課程を見据えた教材づくりのご相談をお受けしています。

改訂告示から校種別の全面実施・教科書改訂までの全体像は「次期学習指導要領・教科書改訂スケジュール」で一覧にまとめています。先行実践に合わせた教材の準備は、教材の企画・立案から原稿執筆・作問の代行まで工程単位でご相談いただけます。

なお、本コラムの内容は、中央教育審議会 教育課程部会「次期学習指導要領等に向けた審議まとめ」(令和8年10月5日)に基づいています。指定校の校数316校とその内訳、活用方法の分布は、同 総則・評価特別部会(第11回・令和8年7月22日・配付資料)の参考資料3「サキドリ研究校指定一覧(令和8年7月現在)」による令和8年7月時点のものです。332校は令和8年10月5日の審議まとめの記述です。本記事は2026年10月31日に、令和8年10月5日の審議まとめに合わせて内容を更新しました。

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